表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/178

Episode-68 『お酒を飲んだら呑まれたよ・超清純派女優の場合②』


 さて、まずは一端冷静になろう。

 バクバクバクッと心臓の音は冷静とは対極の鼓動を打っているが、それでも冷静になろう。そして頭を動かそう。

 

 何故私が寝ているのか?

 その答えは恐らくわかる。何故なら昨日のお酒を飲み始めて少し経ってから記憶がないからだ。つまるところ、私はあれだけ余裕ぶっていたにもかかわらず普通にお酒に呑まれきもーちよく眠ってしまったというわけだ。

 …うん、お父さんとお母さんがあんな制約を課すのもわかるね。私が悪い。


 まぁ、でもその反省は後回しだ。

 それよりも遥かに大事なことがある。

 私が寝ていた場所が紗凪ちゃんの部屋の紗凪ちゃんのベットだったという事実だ。おまけに横には紗凪ちゃんが寝ている。


 …これはどういうことだろうか?

 ……もしや、もしや私は酔った勢いで眠るには飽き足らずに何かをやらやらかしてしまったのではなかろうか?


 客観的に見ると、起きたら横に女の子が寝ているというこの状況――俗に言う朝チュン的シュチュエーションだ。まあ、ここにはスズメなんていないけど。

 

「…いやいやいやいやいやっ」


 が、その想像が頭の中で浮かんだ瞬間に口が自然と否定の言葉を述べた。

 それはない! さすがにない!! ないないない!!

 未成年――それも自分が本気で恋をしている高校二年生の女の子に対し、酔っぱらいながら手を出す。私はまあ大人としてしっかりした立派な人間とは言えないかもしれない、でもさすがにそこまでの常識知らずで倫理観無しのクズカスバカアホ人間ではないと思う。…と思うのだが。

 いかんせん記憶が無いため100%無いとは言いきれないのがツラい。

 

「…いたっ、もうなにこれ!?」


 として、なんか難しいことを考えると頭が痛い。

 それも先程言ったように内と外のどっちもが痛い。なにこれ。酔った勢いでどっかにぶつけたとか?

 そんな気がする。うん、やっぱりしっかりした立派な大人ではないな。


 ――と、まあそんな風に自虐をするが実は安心材料がない訳でもないのだ。


 何故なら、私は服をちゃんと着ている。そして、かけ布団からチラッと除く紗凪ちゃんの身体もちゃんと服を着ているのだ。

 これは大きい。二人とも裸オア下着、またはどっちかが裸オア下着とかならぶっちゃけ冷や汗で体中がダラダラだっただろう。なぜならそれだけで何かいやらしい感じが激増するから。

 しかし、私たちは二人ともキチッと衣服を身に着けている上に寝方も何と言うかしっかり並んで規則正しい感じがする。

 

 うん、これはアレでしょ。何らかの事情があって紗凪ちゃんの部屋に行くことになり、その結果なんやかんやで一番近くにあった紗凪ちゃんのベットで寝ることになったってことでしょ。

 なんやかんやが何かって? それはなんやかんやはなんやかんやでしょ。それ以上でもそれ以下でもない。


 …ヤバいな、心の中でこの状況を正当化するための想像を働かせても心臓の鼓動が緩やかにならない。当然だ、結局のところそれら全ては私の想像の域を出ない。

 知っているのは、今寝ている紗凪ちゃん自身しかいないのだから。

 そして、この心臓のお祭り騒ぎを止めるためには紗凪ちゃんに直接昨日の出来事を聞くしかない。


「ふぅー」


 とりあえず少しでも呼吸を整えるために大きく深呼吸してみる。

 大丈夫、大丈夫だ。私は色々なことを深く考えすぎる傾向にある。そして蓋を開けてみれば心配したようなことにはなっていないのがいつものパターン。今回もきっとそうなはずだ。

 

 もしそうじゃなかったら、そのときは…うん、謝罪と反省を示すために切腹でもすればいい。…いや、待て。それは責任から逃げるということじゃない? 本当に謝罪と反省を示すには責任を取って紗凪ちゃんと生涯を共にするしかないんじゃない! …いや、待て待て待て。なにその最高の展開、それじゃあ私にとって百利あって一害なしじゃない!?


「すぅー、すぅー…ん? んんっ…あれ?」


「わわっ!?」


 が、そんな馬鹿なことを考えながら一人で心の中で盛り上がっていたところで先手を打たれてしまった。

 なんと、紗凪ちゃんが独りでに起きてしまったのだ。

 そして、一瞬二度寝する素振りを見せた紗凪ちゃんだったが薄く開いた瞳で私の姿を捉えたのだろう。ゆっくりと大きくその瞳を開けた。


 可愛いなぁ~。

 その刹那、今の状況が思考から消えてもう何回思ったかわからない思いが湧きあがる。

 そう言えば紗凪ちゃんが起きる瞬間を見たのは初めてかもしれない。レア紗凪ちゃんだ。

 そのまま紗凪ちゃんは私同様に上半身だけを起き上がると、「ふわぁ~っ」と口元を抑えて大きなあくびをすると、

 

「おはようございますです、夜さん」


「おっ、おはよう」


 その朝の挨拶にふと冷静に戻った私は、なんとかそう普通に挨拶を返す。

 そうだ、紗凪ちゃんの可愛さに見惚れている場合ではない。私には知らなけれないけないことがあるんだから。

 そう思い直し聞くチャンスを伺おうとした私だったが、


「ふぅ~、ねむっ。…あっ、そうや。昨日はホンマに楽しかったですね。いやぁ~、ええ日やった」


 とまたしても紗凪ちゃんに先手を打たれてしまった。


 …紗凪ちゃんの言い方、これは結局私は『やらかしたのか』はたまた『やらかしていないのか』どっちなんだ!?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ