Episode-65 『彼女の知らない花見の続き・関西弁JKの場合④』
「ふぅー、しっかしホンマにこの身体やと全く疲れんなぁ。神の力なんやから当然か~」
百合神に強化?してもらった身体で夜さんをおぶって進みながら、そんな感想を漏らす。
うん、ほんで話し相手いないとごっつ暇やなぁ~。なんや一人でブツブツ言っとるのも悲しいし。
つーか、
「ここに来るまで結構歩いたもんやな」
歩き出したそこそこ時間が経ったけど、未だにメインルームには着かない。
さすがに百合神が距離を操作しとるということはないやろし、…ん、でもあいつならやりかねんなぁ。いや、でもまあそれはさすがに無いか。
結構長いこと散歩しとったし、たぶん普通にこんくらい歩いてたんやろ。
「すぅー…、すぅー…」
「すんませんね、お弁当準備してくれて疲れとんのにノリノリで歩き回ったりしてもうて。でも、その分キッチリ夜さんを部屋まで運ばせてもらいますね」
少しズレそうになった背中の夜さんの位置を軽く微調整して、「よっと」とおぶり直す。
ガッツリ夜さんの胸が背中に当たっとるけど、それを気にしたらあのアホの思惑通りで負けの気がしたので意識しない様にする。
ふっふ~ん、残念やったな百合神。女の子同士で胸があたっとるだけでドギマギすると思ったら大間違いやねん。まあ、完全に全く意識しないってことはないけどな!
「独り言も虚しいけど、心ん中で一人ツッコミも虚しいわな…っと、うだうだ言うとるうちに着きましたね、夜さん」
そこでようやく桜並木の終わりが見えてきた。
ふぅ~、帰ってきたでぇ。
なんだが、少し外に出ていただけであの殺風景な部屋が懐かしく感じるわ。うん、もうここの暮らしに慣れてもうてる証拠やな。
ヒョイっと最後の一歩は軽くジャンプをするようにイベントルームとメインルームの境界を飛び越える。
そして、あとはこの扉を閉めるだけ。…なんやけど、
「終わってみるとちょいと名残惜しいな」
扉から微かに見える桜を見ながらそう呟く。
あっ、そや!
「よ~るさん、メインルームに戻ってきましたよ」
「んんっ…」
「ほら、これで見納めですし最後に桜見ときましょ」
ちょっとかわいそうかな~とも思ったけど、起きたらいつもの部屋ってのもちょいと味気ない気がしたので背中の夜さんを軽く揺すってみる。
すると「うぅ~、んっ~…」と少し唸りながら夜さんの瞳がゆっくりと開いた。
「…紗凪ちゃん?」
「きもちよー寝てるのにすんません。でも、最後にもう一回だけ二人で見るのもええかなぁ~と思いまして。これで今年の桜も見納めですしね」
「そっかぁ~」
まだ酔いは冷めていないのかのほほ~んとした口調で夜さんが相槌を打つ。
そして、
「来年も一緒にお花見したいねぇ~」
とうちの耳元でそう言って笑った。
「――ふふっ」
ここを出た先の未来でもうちと当たり前に一緒にいる様なことを言う夜さんの言葉に思わず口元に笑みが浮かぶ。
嬉しいが恥ずかしい。まさに嬉し恥ずかしいみたいな気分やな。
「――はい、そですね。来年も一緒に花見できたらええですね」
そして、その夜さんの言葉に頷きながら答え、うちはゆっくりとイベントルームへと繋がる扉を閉めた。
さっきまであった名残惜しいという気持ちは何故だか綺麗さっぱりと消えていた。
「さてと、これで今日の行事は終了ですね。布団までもう少しですよ~」
「ん~、お布団~? …あっ、そうだ! 紗凪ちゃんにいっこお願いがあるんだ~」
「お願いですか? なんでしょか?」
「お布団といえば~、私紗凪ちゃんのいつも寝てたところを一回見てみたかったんだ~」
「うちのプライベートルームってことですか?」
「うん♪」




