Episode-64 『彼女の知らない花見の続き・関西弁JKの場合③』
なーんや、相変わらず含みある様な言い方やなぁ。
やっぱこいつなんかけっこーなこと隠しとるくさい匂いがプンプンしよるわ。
…まっ、そのへんは前にうちらには悪影響があらへん類の秘密やってこいつも自分の口で言うとったし、夜さんもそこまで気にしてへん感じやったから今はそっとしておいといたるけど。それに今の目的は別のことやしな。
「ほんで、そろそろ本題に入ってええか?」
少し曲がりかかっていた話の方向性を元に戻す。
ただこいつと世間話するために呼んだんとちゃうねん。
「おお、構わんぞ。といっても、私程の神ともなれば要件は何となく察せれるがな」
「ほう、ほなら言うてみいや」
「ズバリ貴様の横で寝ている虹白夜が理由であろう」
うん、なんやドヤ顔で言うてるところ申し訳ないけど別に神やなくとも普通にそれはわかるやろ。まあ、お面しとるから実際にドヤ顔かどうかはわからへんけど…。でもドヤ声ではあったからきっとお面の下はドヤ顔やろ。
そうは言うても、ここでそこツッコんでも別にええことない気がしたんで、
「ま、そんなところやな」
と、頷くことにした。
時間短縮やな。メッチャ賢いでぇ~、うち。
「見ての通り、夜さんは爆睡や。起きる気配はあんまないし、ここで寝かしとくんも申し訳ないやろ。風邪とかひいたらあかんしな」
「ふむ」
「せやから、うちらとここにあるもんをそのままあのメインルームに移動さしてくれや。お前ならそんくらい簡単にできるやろ」
そう説明を終えると、百合神は「なるほどな」と納得した様に顎に手を当てる。
しかし、
「まあ神にかかればそれくらいはお安い御用―――………いや、ちょっとまて…!」
と続く言葉を途中で止めると何かを思いついた様にポンと手を叩く。
…うーん、嫌な予感やな。何思いついたんやコイツ…?
「それは少々味気ないのではないか?」
「は?」
「お前たちは二人でその桜並木を歩いてそこに辿り着き、この桜並木の下で一緒に食事をした。ならば帰りも二人で桜並木を歩き帰るべきなのではないか? それでこそ今回の花見を心から満喫したと言えるのではないか?」
まるで学校の先生みたいに諭すような柔らかい口調で話す百合神。
だが、
「―――本音はどないやねん?」
「その方が百合度が高いからだ」
そう確信を付いてみると本音がノータイムで帰ってきた。
こいっつホンマにブレないやっちゃな。一周回ってちょいとおもろいわ。
「…ったく、しゃーないやっちゃな。ほんで、そうする場合に夜さんはどないすんねん?」
「ふむ、協力的ではないか。そして、お前が協力的ならばこちらも手を差し伸べるのは当然やぶさかではい」
またよーわからんことを言いながら百合神がパチンと指を鳴らす。
その意味がわからず首を傾げると、
「前回――ちょうど一週間前の風呂場の時と同じの肉体強化だ。それならば人一人を運ぶのも容易なはずだ」
そう追加で説明がされた。
「なるほどな」
「そして、そこにある荷物については希望通りに私が後でメインルームに送ってやるから安心して何も持たずに帰るがいい」
「それと一緒にうちらも送ってくれるだけですむんやけど…、まあしゃーないか。花見を楽しませてもろたんもホンマのことやし、ここはお前の話にのったるわ」
「――聞き分けがいいではないか褒めてつかわす。それではそのグースカ寝ているお前の相棒の運搬は頼んだぞ」
百合神がそう言うとパチッと通信が切れる。
そして、それと同時にお弁当箱や空のビンが元からなかったように消え去りおった。
「忙しないやっちゃで」
そして、うちは「はぁー」とため息を吐きながら夜さんの方へと向き直る。
もうここに残されたのはうちと夜さんと下に敷いてあるシートだけ。これも一緒に移動させてもうたら、ちょっとうちらの服が汚れてまうからその気遣いやろな。…まったく変なところで気の回るやつや。
思わずフッと笑い、そして未だにうちの肩に頭を預けて寝ている夜さんの身体をゆっくりと起こしながら立ち上がり、
「さてと、ほならうちらも帰りましょか」
そうできる限り夜さんが起きない様に優しく体を背中でおぶる様に持ち上げて、桜並木の帰り道へと踏み出した。




