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Episode-63 『彼女の知らない花見の続き・百合神の場合』


 ふむふむっ、やはり何事も上手く事が進むほどに容易ではないか。

 いくら私が神といえどもな。


「はぁーっ、これは少々まいったな…」


 目の前の分割されたモニターを見て、熱いお茶を啜りながら小さくため息を吐く。

 本日は、ここでの最初のイベント解放である。

 

 イベント名――桜並木で貸切花見。その名の通り、花見を主題に置いたイベントである。そして、前述した様に初のイベントルームを使っての試みだったため、結構製作には力を入れたのだ。

 そして、神が結構力を入れたら、それはそれは素晴らしいものができるのは自然の摂理と言ってもいいだろう。実際に今回の花見コースは中々の自信作だった。

 

 …のだが、そのイベントのコンビでの出席率があまり芳しくはないのだ。

 全50組中で二人一緒にこの花見イベントに参加したペアは36組。割合にして72パーセントということになる。

 これを低いととるか高いととるかで感じ方は変わるだろうが、私は低いと判断した。

 

 まさか八割を割るとはな…。うーん、頑張って作ったんだけどなぁ…。


 それにその37組の中には、その光景をチラッとだけ見てすぐにメインルームに引き返した者達もいれば、入った瞬間に個別行動をとり始めた者たちもいる。

 そのため、実際に二人で満喫というペアはもっとずっと少なくなるのだ。


 うーむ、どうしたものか?

 いや、でもまだ同居を開始してほんの一週間。まだお互いに完全に打ち解けあうことも難しく、そんな状況では仲良く花見に臨むのは難しいのかもしれない。そういう見方によってはこの結果も上々なのかもしれない。


 それにプラスの点も少なからずある。相性のいいと見えるペアは現時点でもかなり仲良くなっていると言えるだろう。

 ふむ、そうだな。プラスに考えよう。まだ始まって一週間。そして、期間は約52週間。まだ1/52しか消化していないのだ。

 後半に予定しているのイベントのクリスマスやバレンタインなどでは、これの比ではないくらいにノリノリになり、そしてその52週が終わる頃に全員が良好な関係を気付けていればいいのだ。

 

「おーい!」


 と、私が自分の悩みに自分なりに結論を出したところでそんな声が前方のモニターのどこかから聞こえて来る。


「おーい、聞こえとんのかー!? 百合神!」


 また聞き慣れた関西弁の声だよ、まったく…。

 いや、でもまあ最初は完全に問題の組だと思っていたこいつらは、今はトップクラスの仲の良さを発揮しているのだからわからんもんだ。

 今日だってお互いに色々と準備して仲良く花見を満喫しているわけだしな。

 うん、そう考えると不思議とおおらかな気持ちになってきたぞ。


 ポチッとボタンを操作して、ルーム50のイベントルームと相互通話を繋げる。

 はてさて、今回は何の要件なのやら?


「聞こえている。それに大声で呼ばんでも伝わると言ったばかりだろうに…」


「ん? ああ、せやったな。かんっぜんに忘れとったわ、…つーかホンマにこんな広いとこでただ呼ぶわけで伝わるんかいな」


「だーかーら、伝わるって言ってんだろうが! 自分のミスを棚に上げてなにちょっと私を疑ってるんだ!? まったく…、で今回は何用だ?」


 相変わらず無礼な小娘だが、いちいちつっかるのも神らしくないし、さっきも言ったように今の私は通常より更におおらかなため、ササッと話題を切り替え本題に入ってやる。

 そして、同時に前方のモニターを操作し通信場所の光景を拡大して映し出す。そこに移っていたのは、


「というか、これはどういう状況だ?」


 手前の弁当箱を片す関西弁娘と何故か幸せそうな表情の赤に染まった顔でそこにしなだれかかる女優の姿だった。

 いや、二人でお弁当を食べ始める辺りまでは見たのだが、そっからどうなってこうなったんだ!?


「これはやな~…、ん? つーかお前見てたんとちゃうんかいな? イベントルームって確かなんやお前が言うとったよーわからんルールに接触せえへんから普通に見れるんとちゃうの?」


「むっ…、それはだな…」


 その小娘らしいからぬ鋭い指摘に少し詰まってしまう。

 私が管轄しなければならないのは50の部屋。そして、それら全てを一人で同時に観察管理するのはさすがに神でも不可能だ。更に言うと、各部屋のメインルーム、イベントルーム、運動場の私が監視できるエリアの映像は全て記録・保存されている。故に何かがあっても見逃す心配はないのだ。


 が、当然それを知っているのは私だけ。

 つまり私がその問いに対してとりうる手段は、誤魔化すという一択しかないのだ。


「神も暇ではないからな、四六時中見ていられるわけではないのだ」


「…ふーん、まあええわ」


 私の答えに関西弁娘は微妙に納得できていなさそうな声であったが、一先ずは了承する。

 今は他に優先すべき事柄があるからだろう。


「ほんでこの状況を簡単に言うとやな、夜さん酔っぱらって寝てしもてん」


「ほう、結構飲んだのだな」


 何となくモニターに視線を移すと、空き瓶が4つ程転がっているのが見て取れた。

 ん? というかこいつ、一晩であれ全部取ったということか? 

 …信じられんな、凄まじい身体能力だ。あとで昨日の夜のルーム50の運動場の様子も軽く見てみるか。


「せやな、でも満足してくれたみたいでうちも満足や」


「――そうか」


 うん、やはりこの部屋は中々に優秀だな。

 お互いがお互いのことを想い合っているのがわかる。今でも十分にいいコンビだ。

 簡潔に言うと中々に百合度が高い。

 

 それにこれなら、今計画中のあの臨時プランに参加してもらうことがほぼ決定と言ってもいいかもしれんな。

 ――『百合の箱庭計画』の百合度底上げのため臨時プランに。


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