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Episode-62 『彼女の知らない花見の続き・関西弁JKの場合②』


「ふふふ~っ、紗凪ちゃ~ん。お~、ほっぺプニプニだ~♪」


 はてさて、どうしたもんやろか?

 その後結局、夜さんはうちの持ってきたクーラーボックス内のお酒を全部飲み干してもうたわけやけど、幸いなことに別に倒れたり気持ち悪くなったりはせぇへんかったので一安心。でも、その代わりにテンション及び酔いっぷりは更に上昇してしまった。

 そんなわけで最初に対面で座っとた夜さんが今は何故かうちの隣に来てて、尚且つ更に何故かうちのほっぺを指でつついて感触を楽しんではるってのが今の状況なわけや。


「夜さ~ん、ほんまに大丈夫ですかぁ?」


 ほんで、そんな上機嫌な夜さんを無下にするわけにもいかんし、うちはその体勢のままちょびちょび残っているお弁当を食べながら夜さんと話している。まぁ、そもそもお酒飲ましたんはうちなわけやしな。こんぐらいの付き合いはするのが当然やろ。


「大丈夫らよ~。それどころかなんか凄いぜっこおちょー! 今なら水切りもいけちゃうよー。あっ、実際にいってみよっか?」


「いやぁ~、止めといたほうがええと思いますね」


「そっか~、紗凪ちゃんが言うならそうしよ~」


 メッチャ聞き分けがいい子どもみたいな反応やな。

 むっ、なんやそう考えたら年上の女性にこう言っちゃ失礼かもしれへんけど夜さんがかわい見えてきたわ。

 そんで川に行くのを断念した夜さんは、再びうちのほっぺを楽しそうにつつき始めた。

 うん、今さらやけどキャラ崩壊感がハンパやないな。これファンの人が見たら目ん玉飛び出るやろ。


「素朴な疑問なんですけど、それ楽しいんですか?」


「楽しいよぉ~♪ 紗凪ちゃんもやってみる?」


「はい?」


 そう言って夜さんが自分のほっぺをうちに向けてくる。

 触ってええってことなんやろけど、ええっ…どないしよ? …まあこんな機会は後にも先にもないやろしお言葉に甘えよかな。


「じょあ失礼して…わっ、プニプニですね」


 意を決して夜さんのほっぺを言われるがままに触ってみたら、凄い柔らかい。まさにプニプニって感じや。というか改めて見るとやっぱ凄い綺麗な肌やな。


「さすが、女優さんですね。ごっつ弾力あって柔らかいですわ」


「やった~、紗凪ちゃんに褒められちゃった~♪ そして私ももういっか~い♪」


 うちの言葉にすっごい嬉しそうな笑顔を浮かべて、夜さんが再びうちのほっぺに手を伸ばす。

 いや何故に…!?

 そして、私たちは横並びになりながら互いのほっぺを触り合うという謎の状況になってもうた。ホンマに謎やな。いや、でも見方によっちゃあ仲良い友達同士がちょけあっとるみたいな感じにも見えるんやろかな~。


 ――そういやうちと夜さんって今は一緒に暮らしながら日々仲よくやっとるけど、もし仮に同い年で学校とかで出会っとたら仲良ーなれたんやろか?


 不意に何となくそんなセンチメンタルなことを思ってみる。

 …あれ? センチメンタルってこれ使い方おーてるのかな? なんか感情的になる的な意味やと認識しとるんやけど――


「ん?」


 そんなどうでもいいことが不意に頭に浮かんだところで、突然私のほっぺに触れていた夜さんの指の感触が消える。

 そしてそれとほぼ同時に夜さんの身体がうちの方へと寄りかかるみたいに倒れてきた。 

 ええっ…!?


「ちょ、夜さん!? どないしま――」


 その突然の変化に最初は驚いたけど、


「すぅー、すぅー」


 と受け止めた夜さんからそんな規則正しい寝息が聞こえてきたことでホッと胸を撫で下ろす。

 ふぅー、寝てしまいはったんか。メッチャ唐突やなぁ、まあでも――


「しゃーないか」


 目の前に広がるお弁当箱をチラッと見て、そんな風に少し笑う。

 夜さんはちょっと早起きしただけって言うとったけど、これがちょっとやそっとの時間ですぐできると思うほどうちもアホやない。

 きっとメッチャ早起きして仕込みして作ってくれたんやろ。それこそ、うちが寝た時間と同じくらいに起きて。

 

「よいしょ」


 そのまま夜さんの身体が倒れへん様にうちの肩にしっかりと寄りかからせた状態をキープして、箸を手にとると、お弁当箱の中に最後に一つ残ったチャーシューを口に運んだ。

 うん、美味しい♪ やっぱ夜さんの料理は最高やな~。

 

 そして、お弁当を全て綺麗に平らげたうちは両手を合わせて、


「ごちそうさまでした」


 食材と料理を作ってくれた夜さんにそう感謝を告げた。

 

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