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Episode-60 『お酒を飲んだら呑まれたよ・超清純派女優の場合』


「ん…んんっ。んー」


 あれ? 私何やってたんだっけ? というかいつ寝たんだっけ?

 おぼろげに意識が覚醒して、何となく記憶を思い出そうとするが思い出せない。


「いたっ…!?」


 が、そこで不意に頭に痛みを覚えたことでパッと目が覚めた。

 いっつ~、なにこれ…? 内部と外部の両方が痛いんだけど。

 外側はどっかに頭をぶつけたみたいな感じ。そして、内側は例えるならば二日酔いのような…。


「…………………………」


 その可能性に思い当たった瞬間に、思考に空白が走る。

 そして、一瞬遅れてドロッと背中に嫌な汗が流れたような気がした。

 

 そうだ、私は紗凪ちゃんと楽しくお花見をしていた。

 ………で、今私は何で寝てるの?


 …よし、こういう時こそクールになれ私。

 まずは状況を理解せねば。

 ちなみに先程までは眠気により瞼を開かないでいたが、今は恐怖で瞼を開けない。今の私には現状を受け入れる胆力が無い気がするからだ。

 ならばまずは視覚を封じたままで気持ちを整えながら、自分の今いる状況を推測してみよう。


 まず前と後ろに柔らかな感触。

 これは布団と見て間違いないだろう。それは私が今の今まで寝ていたことからも容易に想像がつく。

 問題はそれがどこの布団であるかだ。

 メインルーム、もしくは私のプライベートルームなら問題ない。…いや、よく考えれば記憶がおぼろげな時点で問題ありだがもう一つのパターンと比べれば問題ないで全然いいだろう。

 

「ふぅー」

 

 大きく一つ深呼吸をする。

 このまま目をつぶったまま考えていても仕方ない。目を開けば答えはすぐそこにあるのだから。

 大丈夫、そんなはずはない。大丈夫、そんなはずはない。

 そう自分に言い聞かせながらゆっくりを瞼を開く。


 そしてそこで私の瞳に映ったのは、


「…知らない天井だ」


 とりあえずベタにふざけてみた。

 だが、私は知っている。こういうふざけた反応が考えるよりも先に出るときは私自身に余裕が無い時なのだ。もうどうしよもなくて笑うしかない的な感じの時と同じだと思う。

 

 そう目に映ったのは文字通りの知らない天井だった。知らないのだ。そして、この空間で知らない天井の部屋は一つしかない。

 つまりこの部屋は―――、


「すぅー…、すぅー…」


「!?」


 とそこで視界が開放されたことで、他の五感も完璧に目覚めたのか隣からそんな規則正しい寝息が聞こえてきた。

 正直、もうほぼほぼ確定している。確定しているが、それをすんなり受け入れられるほど私の脳は処理能力に長けてはいない。

 が、目を開けた時と同様に静止していても何も進まないのは同じだ。

 故に私は年季の入ったおもちゃの様にガチガチとノロマな動作で首を横へと傾けた。


「――――――――」


 まあ、わかっていたさ。

 わかっていたことだけど、何がどうしてこうなった?


 そこには気持ちよさそうな顔で眠る紗凪ちゃんの姿があった。


 そのまま何となく視線を動かすと電子時計が目についた。

 時刻は午前六時四分。昨日の花見から半日以上が経っていた。

 そして、その電子時計を始めとしたその部屋の内装にも見覚えはない。当然だ、ここは私の部屋じゃないんだから。


「…いや、確かに紗凪ちゃんのプライベートルーム見たいって思ってたけど。こんなパターンは想像してなかったよ」


 そう私が目覚めたその部屋は、紗凪ちゃんのプライベートルームだった。


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