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Episode-55 『花見本番・超清純派女優の場合』


「おっ、この辺ええんやないですか? 360度桜満開ですよ」


「うん、たしかにいい場所だね。ここにしよっか」


「よっしゃ、そうと決まればシート引いてまいましょか」


 二人で楽しい桜並木の散歩を終えて、お腹もいい感じに空いてきた私と紗凪ちゃんは本命のお花見に入ることにした。

 はい? 水切り? 知らない遊びですね?

 散歩から直でお花見の流れですが何か?


 とまあ、そんな風に現実逃避しながら二人で私の持ってきたブルーシートを地面に引く作業に移る。

 うん、もうテンション下がることを考えるだけ損だしね。楽しいことだけ考えていこう。

 紗凪ちゃんも意図的に先程の川遊びの件は触れないようにしてくれてるし、そのご厚意に甘えるとしましょう。

 

「よいしょ、っと」


「うん、ええ感じですね」


 シートを敷き終えて、二人で靴を脱いでその上に腰を下ろす。


「わ~」

「お~」


 すると、私たちを取り囲むように咲く桜の木がより一層綺麗に見えた。やはり周囲に咲き誇る桜というものは、豪華絢爛で見ごたえがある。時折散る花びらも趣があるものだ。

 う~ん、あんまりこういうのに造詣が無い私でも綺麗って心から思うレベルだね。多分現実世界にここがあったらお花見客でごった返してるでしょ。


「綺麗ですね~、ええ景色やわぁ」


「そうだね」


 横で私と同じように紗凪ちゃんも桜に見惚れているようだった。

 ちなみに「綺麗ですね~」でちょいとドキッとしたのは内緒だ。


 そして、私たち二人は少しの間ただ純粋にお花見を楽しんだ。



 さあ、お待ちかね。

 紗凪ちゃんへのアピールタイムのお時間です!


 その情緒あふれる桜に見入る時間が過ぎ去りようやくこのときがやってきた。

 昨晩から今朝にかけての集大成。寝不足になろうがお構いなしに作り上げたお弁当の出番だ。

 

 まあ、ぶっちゃけお花見にこんな箱を持参している時点で普通に私がお弁当を作ってきたということは紗凪ちゃんにバレバレな気もするがそんなことは関係ない。

 慎み深い紗凪ちゃんは「それお弁当ですか?」と実際に聞いてくることはなかったし、「実はお弁当作ってきたんだ」といえば「ほんまですか!」と新鮮なリアクションしてくれるはずだ。

 何もかも紗凪ちゃんのリアクション任せというのは忍びないけど…。


「ふぅ。…あっ、そうだ。紗凪ちゃんそろそろお腹減らない?」


 決意を固めると、頃合いを見てそう問いかける。

 こういう時に棒演技にならないのは、ホントに役者業をやっていてよかったと思う。


「ん? そーですね。朝から何も食ってへんし、結構減ってますね」


「よかった~。それじゃ、ご飯にしよっか」


 そう言って、私は重い包みを「よいしょ」っと紗凪ちゃんとの間ら辺に置く。

 そして、


「お弁当つくってきました~」


 と若干得意げに言うと、


「おっ、ほんまですか!? やったー!」


 と紗凪ちゃんも嬉しそうにパチパチと拍手をしながらお弁当箱を出迎えてくれる。

 ああ、流石紗凪ちゃん…! 期待を裏切らないどころか期待を飛び越えてきてくれる! 

 あー、もう! そういうところがホント好き!!


「ここ一週間でなんとなく把握した紗凪ちゃんの好きなもので作ってきたんだ。お口に合えばいいけど」


「おー、そりゃテンション上がりますね。それに前も言うた様な気がしますけど、夜さんの料理がお口に合わないなんてことはありえへんってこの一週間で知ってますよ」


「ふふっ、ありがと」


 紗凪ちゃんの温かい言葉を聞きながら包みを取り外して、四段になっているお弁当箱を一段一段取り外す。

 もちろん、取り皿やお箸も持ってきてるからそれも紗凪ちゃんへと手渡す。

 フッフッフッ、ことお弁当に関しては私にぬかりはないのだ。

 名誉挽回、汚名返上の機会がやってきた。


「よし、じゃあ食べよっか」


「はい、いただきます」


 さあ、紗凪ちゃん。

 私の気合入りまくりのお花見弁当をご賞味あれ♪


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