Episode-51 『桜の下の散歩道・関西弁JKの場合』
しっかし見れば見るほど現実の世界にしか見えへんな~。
というか、現実でええやろもう。
遠目やけど川は綺麗に流れとるし、桜も満開。そよ風も吹いとるし、その風に乗って桜の花見らがヒラヒラと落ちてくる。
なんの違和感も感じひん。ふっつーの桜の名所って感じやな。
そして、そんな光景がどこまでも―――。
「ん?」
が、そこで一つ疑問が浮かぶ。
「そういやこの桜並木ってどこまで続いとるんでしょね?」
一歩後ろを付いてきてくれとる夜さんを振り返りながら、そう聞いてみる。
「ふぅー…。う~ん、どうなんだろうね。まだ歩き始めて少しだけど行き止まりになる気配はないしね。そればっかりは聞いてみないことには何とも言えないかな」
そう言いながら夜さんが苦笑する。
というか、夜さん地味におでこに汗かいてはるな。
「まっ、そりゃそうかもですね」
「どうする? 確かここは普通に通信通じるよね」
「そですね。風呂トイレと自室以外は見れる言うてましたし」
まあ、知らんままは気になるしなぁ。
うん、ここはこの後しっかりと花見を満喫するために聞いとこか。
「じゃあ、呼び出しますね」
「うん、賛成♪」
心なしか夜さんの声が少し嬉しそう。
なんでやろか? 百合神と話したい?
――いや、それはないな。
頭に浮かんだ疑問を即座に否定する。だって、理由があらへんしな。
花見でテンションが上がっとるって感じやろ。夜さんがメチャクチャきれかっても、そこは人の子やしなぁ。
そんな答えを勝手に出して、うちは空を見上げて大きく息を吸い込むと、
「百合神ー!」
そうあいつの名前を呼ぶ。
すると、数秒後。
「――前から言おうと思っていたのだがな、別にそんな大声で呼ばなくても聞こえている」
百合神の声だけが校内放送みたいに上から流れてきよった。
というか、さりげにけっこう大事なことをサラリと言いよったでコイツ。
「せやったん? なら何で言わへんねん。うち、ごっつアホみたいやん」
「事実アホだろ」
「よしわかった。お前マジで一辺この部屋に降りてこいや、面と向かって話さな気が済みそうにないわ」
「神が人と同じ場所に下りるわけなかろうが」
「あっ、お前最後フッて笑いよったな! 見えへんけど馬鹿にされたんわかったで」
ホンマ腹立つやつやなぁー。
が、そこで百合神が話の流れを切るみたいに咳払いを一つだけしよる。
そして、
「さて、お前との言い合いノルマも達成したことだし本題に移ろうか。聞きたいことがあるのだろう? 何度も何度も言うようだが、私でもあまり貴様らと接し過ぎると――」
「百合純度言うんが下がるんやろ聞き飽きたわ」
うちの言葉に「わかっているではないか」と満足げに百合神が息を吐く。
まあ、こっちとしても無駄話は別の機会でええし聞きたいことだけ聞くとしよか。
「この桜の道あるやん。これってどこまで続いとるん?」
「百キロ先までだ」
「…マジで?」
軽く聞いたら予想外の答えが返ってきよった。
ちゅーか、こいつホンマ百好きやな…。
それは夜さんも思ったようで「また百だ~」と感心した様に呟く。
「いや、流石にそんな先までいくわけないやん」
「そんなことはわかっている。これはこだわりの話だ。神である私からすれば桜並木を一キロ作るのも百キロ作るのも千キロ作るのも労力に大差はない。ならば、自身のこだわりに従うさ」
「はえ~、まあようわからんこだわりやけど。お前が満足しとるんやったらええわ」
「ようわからんのかよ!? まったくそんなだからアホと呼ばれるのだ」
「いや、お前からしか呼ばれてへんわ」
まったく失礼なやっちゃで。
「でだ、質問は以上か?」
「あっ、私からも一つ」
そこで今度は夜さんが手を上げる。
「なんだ?」
「このイベントルームの開放時間は定まってます。もし仮にその時間を過ぎてもここにいた場合はどうなるんですか?」
「ほぉ…」
夜さんの質問に百合神が感心した様な声を上げる。
…別に気にしとるわけやないねんけど、うちのときとリアクション全然ちゅうんやけど。
「確かにイベントルームの開放時間は定まっている。そして、それを過ぎるとその空間は自然消滅する段取りだ。もし、その時間になってもイベントルーム内にいた場合は二人とも時空の狭間に放り出される」
「はぁ!?」
「――などということはなく、強制的にメインルームに戻されるという仕組みだ。フッ、ひっかかったな」
「こいつ、ほんまっ…!」
うん、マジでこれから先の一年間で一回はこいつどついたらなあかんなぁ~。
そのとき、苛立ちを必死に抑えながらうちはそんな決意を密かに決めたんやった。




