表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/178

Episode-5 『室内散策・超清純派女優の場合』


 いや~、紗凪ちゃん可愛いな~。

 ホント可愛い。

 気遣いもできるし、たぶん私を心配して元気づけようともしてくれた。


 このたった数分間の会話でも更に私の中での好感度はぐんぐん上昇中。

 もーどれだけ、私を好きにさせるつもりなの~。

 と、そんな風に内心では大盛り上がりながらも表では冷静な感じを装っているのが今の私である。


 でも、一回間違って紗凪ちゃんって呼びそうになっちゃったけど、何とか誤魔化すことができた。

 これは反省せねば。

 名前呼びはまだ早い気がする。紗凪ちゃんも虹白さんって呼んでるし。

 

 そんな呑気に構えていた私だったが不意に投げかけられた質問により、一気に重要な選択を迫られることになってしまった。


「あいつ『女の子同士の恋を司る神』とか言うてたじゃないですか? それが何で百合神になるんですか? 百合って花やないですか」


 ぐうぅ…、まさかそんな無垢な問いをされてしまうとは。

 その問いに答えるのは簡単だ。


『女の子同士のキュンキュンする尊い恋模様の総称を百合っていうんだよ』


 私だったら、百合とはなにかと説明しろと聞かれたらこう答える。

 しかし、それはあくまでも私の中の定義。

 それを馬鹿正直に答えるわけにはいかない。


 何故なら、それは私が百合好きであることを公言することと同義だからだ。

 今それを紗凪ちゃんに公にするのは避けねばならない。

 万に一つも紗凪ちゃんにドン引きされるわけにはいかない!


 ならばどうするべきか?

 そもそも私の中では百合は唯一絶対の存在だったが、一般世界では百合というジャンルの認知度はどうなのだろうか。

 実際に紗凪ちゃんは百合と言う概念を知らなかった。

 これにより二パターンの仮説が得られる。


 それは紗凪ちゃんがピュアピュアピュアガールであるために百合を知らなかったパターン。

 そして一般の女子高生には百合と言う概念がほとんど浸透していないというパターン。


 個人的には前者がいい。そっちの方が萌えポイントが高い。

 だけどそれを判別する手立てはない。

 ならば、ここは無難な手を打つのが最善だ。


 脳内で高速で思考を纏めると、私はその結論に達した。


「えっとね、私もあんまり詳しくはないんだけど…、たぶんその『女の子同士の恋愛』のことを百合って言うんだと思う。お花の百合とはまた違うんだよ」


「? そうなんですか?」


「うん、駆け出しの時にエキストラでそんな題材の作品に出たことあったんだ。私もその時知ったの」


 またもや真実の中に嘘を混ぜ込む作戦。

 そしてこれなら矛盾もない。その上、エキストラという役どころとドラマか映画かはたまたその二つ以外か漠然としている作品と言う言葉のコンボで万に一つもその嘘が特定される可能性は無い。

 やはり今日の私は冴えている。これぞ恋の力!


「はぇ~、初めて知りましたわ。それに虹白さんもエキストラとかやっとったことあるんですね」


「本当に駆け出しのとき、ほぼ素人の頃だけどね」


 紗凪ちゃんも私の言葉を何の疑いもなく信じる。

 だが、ここまで邪気もない顔で嘘を受け入れられると少し、いやかなり心苦しい…。

 我ながらめんどくさい心理である。

 ごめんね、紗凪ちゃん。あとで――具体的にはもし私の恋が成就することがあればそのときには全部打ち明けるからね。


「なるほど、つまりあれやろか? あの百合神はうちらにここで一年暮らさせてその百合…の関係にさせたいってことなんでしょか?」


 顔をほんの少しだけ赤らめながらそう半分疑問調で私に問いかけてくる紗凪ちゃん。

 今までのギャップもあってか可愛すぎる。

 やばっ…、鼻血でそっ。

 

「いっ、いやー、さすがにそこまでは無いんじゃないかなと思うよ。それに恋愛関係じゃなくても親しい友愛やスキンシップを含んだ友情も百合として扱うこともあるって聞いたことあるし!」


 私は何とかその鼻血を気力で抑え込み、そうそつない答えを返す。

 

 日和ってしまった…。

 うん、まぁ、でもしょうがないよね!

 だってここで更に踏み込む力は、恋愛経験値マイナスの私にはないもん!


「ふーん、やっぱ虹白さんは物知りですね~」


「いや~、そんなことないよ」


「いやいや、うちみたいなアホからしたら尊敬もんですよ」

 

 うんうん、と感心した様に紗凪ちゃんが頷く。

 どうやら再び尊敬の念を頂けたようだ。

 なんやかんやで、結果オーライ。

 でもこれ以上続けてボロが出てもいけないので、そろそろ話題を変えようかな。


「じゃあ、音木さんの疑問も解消されたところで次はどうしよっか?」


「うーんそうですね、とりあえず疑問が解消されてちょいと新たに聞きたいこともできたんでまたあのアホをいっぺん呼んでええですか?」


「あのアホってもしかして?」


「そりゃ、もちろん」


 ニヤリと笑うと、紗凪ちゃんがポケットから何故か野球ボールを取り出した。

 さっき、部屋に行ったときに持ってきたのかな?

 でも、何のために?


 と疑問に思っていたが、その疑問は数秒後に解消された。


「ちょいと煩い音が鳴るかもしれないんで、あれやったら耳塞いどいてください」


「え?」


 と私に軽く注意喚起をすると紗凪ちゃんが大きく振りかぶる。

 そして、


「百合神ー! 聞きたいことできたからちょいと出て来いっっっやあぁ!!」


 と思いっきり硬球と思しきボールを最初に百合神様がモニター越しに現れた壁へと投げつけた。

 えええええええっ!!

 そして、壁に硬球がぶつかると結構大きめの激突音が部屋に響いた。


「うっし!」


「……………」


 思った通りの軌道にボールが飛んだのかガッツポーズをする紗凪ちゃん。

 その衝撃の行動に呆気にとられる私。

 そして、わずか数秒後。


『呼ぶだけなら普通に呼べよッッ!!』


 と百合神様の焦りまくったような声と共に再びモニターがブワッと壁に投影された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ