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Episode-47 『花見前・関西弁JKの場合』


 ――ジリリリリリリリ! 


「…むぅー、う~ん」


 ――ジリリリリリリリ!!


「うっさいわ、ボケェ…!」


 やかましい目覚まし時計の音で何とか目が覚める。

 …あかん、眠い。昨日思いのほか、時間かかってもうたからなぁ…。

 とりあえずアラーム音を止め、そのまま布団の中でもぞもぞと眠気と戦うこと数分。ようやっと、うちは決心して気力でベットから立ち上がった。


「うげっ…もうすぐ八時やんけ。夜さん起きとるわな、これ」


 チラリと視線を時計に移し呟く。

 どうやらいつもより寝過ごしてもうたみたいやな。

 まぁ、念には念を入れてタイマーを何重にもセットしといてえかったわ。これが無かったら、まだ絶対夢の中やったやろな~。

 そんなことを完全に起ききってない頭で考えながら、何とかドアに向かい進む。


「?」


 が、ドアを開けた先のメインルームには夜さんの姿はあらへんかった。

 あら? 夜さんも寝坊やろか? 

 まぁ、それならそれでええか。マジでさっさと顔洗ってこの眠気吹き飛ばさなな…。

 

 そのまま壁沿いに進んで風呂場を目指し歩きだす。

 そして、今度は風呂場のドアを開けると、


 ん?

 

 そこには今度こそ夜さんの姿があった。

 あー、そりゃそうやな。普通、メインルームにおらんかったらここやろ。あかん、ホンマに頭まわってないわ。


「ふわぁ~~。あっ、夜さんも歯磨きですか。おはようさんですぅ~」


 欠伸交じりにそう挨拶をする。

 すると、夜さんは一瞬いきなり現れたうちに一瞬驚いたかのように表情を硬直させたが、すぐに「おはよう!!」とめっちゃ大きな声でそう返してくれる。

 朝っから、いつも以上に元気やなぁ~。凄い人やで。

 そんな夜さんに感心しながら、うちも洗面台へと向かう。


「すんません、ちょいといつもより寝てまいました」


「ううん、気にすることないよ。やっぱり自分のベットならぐっすり眠れたでしょ」


「あー、そうなんやろか? 個人的にはあんま変わらへんかもです。これは昨日、ちょいと夜更かししてもうた影響だと思いますんで…」


「夜更かし…?」


「あっ、あー…、ちょいと眠れへんかったんですよ」


「…へぇ~」


 おっと、あぶなー。

 つい余計な事を言うてまうところやった。せっかくのサプライズやし、黙っといた方がええやろ。

 それでも、これ以上寝ぼけまなこのままで喋ると、また要らんことを言うてまうかもしれへんし、はよ眼ぇ覚まさな。

 

 蛇口を捻り、水道代に喧嘩を売る勢いで水をじょぼじょぼ出すとそのまま豪快に顔を洗う。

 あー、ええわぁ…。意識が覚醒していくのがわかる。


「ぷはぁ…!」


「はい、どうぞ」


「あっ、おおきにです」


 そして、洗い終えると待っていたとばかりに夜さんがタオルを差し出してくれる。

 

「ふぅ~、さっぱり!」

 

 それをありがたく受け取り、顔を拭き終えるとさっぱりと眠気が飛んでいた。

 我ながら単純な身体でありがたい限りやで。


「夜さん、タオルは?」


「うん? 私は自分のあるから大丈夫だよ」


 そう夜さんがもう一つ自分用のタオルを洗面台の上に乗せながら、同じく顔を洗う。

 うちとは違い少しだけの水で優しく自分の顔を濡らす様に洗うその仕草は思わず感心してまう程や。わかりきってたことやけど動作一つとってもちゃうなぁ。


 ――む?

 そこで唐突に一つの疑問がうちの頭に浮かぶ。

 

 そういや、ここにきてから夜さんがお化粧とかしとる姿を見とらん。

 大人は、何でもない日でも多少はお化粧するもんやと漠然と思うとったんやけどちゃうんやろか? つーか、思い返しても夜さんの顔は風呂入る前も後も違いがある様には思えへん。


 そういや、昔に親戚の佳奈子ねぇちゃんが言うとったなぁ。

 すっぴんが通用するんは、学生までやって。大人が化粧でカバーしとるんを、うちらは十代の若さでカバーしとるとかなんとか。どんなに綺麗な人もお化粧は必須なんや、って力説しとったよなぁ。

 まぁ、冗談抜きにねぇちゃんは風呂出た後はビー玉みたいな目しとったからなぁ…。肌の張りもちょいとあれやったし…。


 ちゅうことは、夜さんもうちに見えへんところで色々しとるんやろか?


「あの、夜さん?」


「うん?」


「これ聞いてええことかわからんのですけど…一個質問ええですか?」


「? いいよ、特に答えにくいこともないと思うけど」


「そですか。あの…夜さんってお化粧とかせぇへんのですか?」


 気になったんで思い切ってそう尋ねてみた。

 が、夜さんは何も抵抗無さそうに「ああ」とだけ言うと、


「私、お化粧関係は普段全くと言っていい程しないんだよねぇ。収録の時はメイクさんに全部任せてるけど、あんまりいじると逆に違和感でるみたいで、軽くファンデーション塗るくらい…かなぁ? あー、でもその前に化粧水とかはつけてるんだっけ? ごめん、ホントにお化粧のことはあんまり知らないんだよね」


 そう一時間かけてお化粧をマックスに施した佳奈子ねぇちゃんの百倍くらい綺麗な顔で少し恥ずかしそうに笑った。


 …うん、神って平等やないなぁ。

 残念やったな佳奈子ねぇちゃん。ホンマのマジガチに綺麗な人ってのはこんな感じの人のことを言うんやで。

 十代の若さも化粧も必要あらへんねん!


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