Episode-44 『あなたを想って・超清純派女優の場合』
あ~、楽しみだな~、紗凪ちゃんとお花見。
まだ時計は午前五時をまわる前だが、私は独りで台所で腕を振るっていた。
もちろんその理由は単純明快、お花見のお弁当作りのためである。
ここはまさに嫁力の見せ所。
なにも用意してない――ように見せかけての不意打ちお弁当大作戦。
ぐへへ~、紗凪ちゃん喜んでくれるかな~。
今は紗凪ちゃんの眼が無いため、気持ち悪い笑顔が自然と出てしまう。
さらに紗凪ちゃんが起きる心配もない。
今このメインルームに紗凪ちゃんはいないからだ。
何故かと言うと前日の、
「ねぇ、紗凪ちゃん。今日は久しぶりにプライベートルームでお互い眠らない。このお布団、一度洗濯したいんだ」
「あっ、はい。別にええですよ。つーか、あっこにもベットあるの半分忘れてましたわ」
「フフッ、ずっとここで眠ってたからね」
「ですね~、たまぁに使う休憩所みたいな扱いですもんね」
というやりとりを経て、メインルームのお布団は洗濯済み。紗凪ちゃんは今は自身のプライベートルームでぐっすりという寸法だ。
ちなみに洗濯等の施設はお風呂場の中に併設されており、お布団も洗えるような業務用乾燥機付き洗濯機もある。何回目になるかわからないがこの空間は何でもありなのだ。
私は紗凪ちゃんと同じく自身のプライベートルームで眠りについたが、いつもよりかなり早めに起きた。そして、今現在に至るという訳である。
まぁ、ここ数日睡眠は十分足りていたし、これくらいどうってことない。
「ふわぁ~」
といってもモチロン眠気はあるけどね。私どっちかって言うと結構寝るタイプだし。
だがこの程度の眠気など私の恋の前には何の障害にもならない。
寝不足と言っても一日だけ。身体に表れるのも、少し疲れやすくなったりお酒に酔いやすくなるくらいだろう。そして、今日は疲れる予定もお酒に酔う予定もないからモーマンタイなのだ。
「さてと、作業を続けますかっと」
この一週間で紗凪ちゃんの好きな食べ物の傾向は掴めつつあった。
まず、お肉とお魚で言えばお肉の方が好き。そのためこの特製お弁当にもお肉多めだ。
今も側にあるコンロには鍋が熱せられており、その中でチャーシューをネギやらニンニクやらと一緒に絶賛煮込み中だ。寝かせたりせずの簡単レシピだがこれでも十分美味しいと思う。だってそもそもの素材が良いしね!
「この間にデザートの仕込みもしとこ~」
そして、紗凪ちゃんは結構意外かもしれないが甘いものも大好きなのだ。甘いものを食べているときの幸せそうな紗凪ちゃんの笑顔は凄まじく可愛い。
そのため、このデザートのチョイスも中々に重要だ。
はて、どうするべきか?
う~ん、ベタにクレープでもつくろっかな~。お店みたいにあの三角の形だと保存しづらそうだから、春巻きみたいな形でクレープ生地で具材を飛び出さない様に包んでみるのもありか。それなら上から更にラップで包んで冷蔵庫にしまって置けるし、食べるとき冷えてて美味しいかも。
それにシンプルだからこそ、万が一にも失敗はありえない。
「うん、これでいこう。そうと決まればまずクレープ生地を作らねば。そんで中身はフルーツ色々と生クリーム、あとチョコチップと――」
そしてそう口に出してプランを描いて次にとる行動を決めると、私は再び調理に戻った。
全ては紗凪ちゃんの笑顔のために! 紗凪ちゃんに喜んでもらうために!
こうして私はお花見当日の早朝一人キッチンでお弁当作りのために邁進していたのだった。




