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Episode-41 『秘密の考察・超清純派女優の場合』


 私の横では紗凪ちゃんがジャンルの書かれた冊子と睨めっこしながら、テレビを色々と試している。

 そして、私はそんな好奇心旺盛な紗凪ちゃんを微笑ましく見守りながらも頭の中ではとある仮説を構築していた。

 

 ここで名探偵――虹白夜の推理のお時間です!!


 まず先程、何気なく百合神様の発した一言。

 それが私の脳裏に張り付くように残っていたのだ。


『ああ、そうだ! 逆切れだ! まったく今回はせっかくすんなり終われるパターンだと思っていたのに! もぉー、この部屋と通話すると毎回最後はこんな感じではないか!』


 一見、毎回お馴染みになりつつある紗凪ちゃんとの言い合い。

 しかし、この中の『この部屋』と言う部分に私は引っ掛かりを覚えた。

 これは聞き方によっては、まるで私たちが暮らしているここ以外にも存在するような言い方にも聞こえる。


 いや、そう考えた方が色んな事の辻褄が合う。


 百合神様の目的は、簡単に言うと私と紗凪ちゃんを一年間ここに住まわせてあたかも百合マンガの如き展開を起こさせることなのだろう。なんのためにそうするのかは不明だが、ひとまずそこはいい。

 そのため、嫌な言い方になるが見方を変えれば私たちは実験サンプルのようなものとも言えるだろう。

 

 そして、改めて考えるとそんな実験サンプルを一つしか用意しないというのは不自然だ。

 つまり私たちが今暮らしている部屋の他に同様の部屋がいくつかあり、私たちと同様の状況にいる女の子がいても何ら不思議はない。


 うん、考えれば考えるほどそうとしか思えなくなってきた。

 

 そして、ここからは更に推測の推測だ。

 私たちと同様の状況にいる人数はいかほどなのか?


 先程、ワンハンドレッドチャンネルは百合という漢字からとったと言っていた。そして、百合神と言う名称からして完全に日本を意識しているともとれる。

 そのため、恐らく対象は日本人または日本語を話せる人間の可能性が高い。

 

 今現在の日本の人口は一億二千万人台。そして男女比にそこまでの偏りは無かったと思う。

 そのため考えられる最大値はおおよそ六千万人台。だが、それはあくまで単純な最大値だ。

 そう言えば百合神様と電話した時に『決まった年齢帯でその他にいくつかの条件を整えた』とも言っていた。これはこの六千万人の中から対象を選定するための条件だろう。

 ん? 今にして思えばあのときも百合神様は『この部屋』と言っていたかもしれない。百合談義に夢中で気づかなかったよ。

 

 まぁ、なんにしても絞り込みは行われたということだ。

 『決まった年齢帯』は十~三十代くらい? 三十代は微妙だけど最近は社会人百合なんかもあるし、別にあっても不思議ではないだろう。

 『他にいくつかの条件』は恐らく容姿や性格、知力体力などが起因しているのだろうがこればかりは百合神様に聞かないとわからない。

 

 そしてここから先は情報が少なすぎるために予想だが、ここでも恐らく百合神様は百と言う数字に着目したのではないか。

 つまり、人数または部屋数のどちらかに百と言う数字が入っていると予想できる。

 その縛りを付け加えると考えられるのは『二百万人百万組』、『百万人五十万組』、『二百人百組』、『百人五十組』。

 この四パターン。

 

 さらにここからこれまでの約一日間の生活で得た情報を掛け合わせる。

 紗凪ちゃんが呼んだとき、私が自室の電話をかけたとき、私がお風呂で倒れて紗凪ちゃんが緊急ボタンを押したとき、そして先程テレビをつけたとき。

 ほとんどタイムラグなく百合神様本人が応対した。つまり、百合神様の手はそこまで塞がってはいない。これから考えるに万単位の人間の観察を行っているというのはまずありえない。そもそも選定条件の時点で二百万人及び百万人を割っている可能性もかなり高い。

 これでさらに絞られ『二百人百組』、『百人五十組』の二択になる訳だ。


 そして、最後。

 この二つのどちらかを当てる鍵は初日の私たちが起こされた時間。

 百合神様が言うには夕方の六時くらい。何故こんなハンパな時間なのか。それは私たちにしたような説明を他の全員にしていたからだろう。

 恐らく現実世界の時間が止まっていることと初日の起きた時刻が初期設定にされたことも考えると全ての部屋間に時間の流れのズレは存在しない。


 最初の組への説明は単純に考えて学生及び社会人の一般的な起床時間――おそらく午前六~七時の間くらいだ。

 そこから私たちの説明まで十二時間程度。分に直すと七百二十分。これを更に仮定部屋数の百で割ると七分十二秒、五十で割ると十四分二十四秒となる。

 大小差があれど恐らく、七分程度で突然目覚めた若い女性にこの状況を説明するのは不可能だろう。現に私たちに説明を行ったときは七分を優に超えていた筈だ。だから恐らく一組当たりの説明時間の目安はだいたい十四、五分前後。


 ――つまり正解は私たちと同じ状況にいる女の子は私たちを含め合計『百人五十組』ということになる。


「ふぅー」


 頭の中で長々と推論に推論を重ねて結論を出したところで大きく息を吐く。

 まっ、即興の粗を探せば山ほど出てきそうなガバガバ推理だけど我ながら筋は通ってるし、矛盾点は無いと思う。

 うん、何となくだけどたぶん当たってるねこれ。


 なるほどね~、紗凪ちゃんが怪しんでた百合神様の隠し事ってこれだったんだ。

 というか紗凪ちゃんの勘が凄い! まさに直感!

 頭でごちゃごちゃ考えてる私とはやっぱ違うね~。

 凄いよ~、紗凪ちゃん好き~。


 とまあ、相も変わらず私の頭は全ての事象が紗凪ちゃん上げの対象になるほどおめでたいことになってるわけだが、はてさて私が気づいたこの事実(仮)どうするべきかな?


 私たち以外にも同じ状況の人が四十九組存在している。

 これは結構重大なニュースだろう。


 う~~~~ん。

 う~~~~ん。


 ――――――――ま、どうでもいっか♪


 少し悩み、そうお気軽な結論を出す。


 だって、それが分かったところでなにも変化があるわけじゃないしね。

 百合神様が私たちにこれだけ丁重な扱いをしてくれているのだから、当然ながら他の四十九組も私たち同様に優雅な暮らしをしていることだろう。

 私は百合神様のそういうルールや常識を守ってくれるところは信頼しているのだ。なんやかんやで人の感情の機微に対する配慮も凄いしね。


 それに私にとって重要なのは紗凪ちゃんとのささやかな日常だ。

 その日常にこの事実は一切の必要性を感じない情報。だからこれは実際に必要な時が来るまでは私の胸にしまっておこう。

 

 それにそもそもが現状私の勝手な考察であって、確証のある事実ではないわけだしね。


「夜さん、見てくださいよこれ! まだアニメ化してない漫画が何故かアニメになってます!!」


「あっ、ホントだ!」


「もうホンマになんでもあり過ぎてメチャクチャですわ」


 そして私は長々とした脳内の一人会話から紗凪ちゃんとの二人の日常へと戻ったのだった。


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