Episode-40 『テレビを見よう・関西弁JKの場合②』
「はー、もう深く原理とか考えるだけ損やな。これはもうこういうものとして受け入れたろやないかい」
百合神によって明かされたテレビの性能を見て、うちは独りでにそう納得した。
だってもうツッコむだけ無駄やしな。
すっごい高性能なテレビとして利用するだけ利用したろやないかい。
「ハッハッハッ! 中々の驚きようだったぞ!」
「嬉しそやなー」
「嬉しい、というより満足と言った方が正しいな。こちらも手をかけた甲斐があるというものだ」
「そーかい、そりゃえかったな。こっちも精々メッチャ使わせてもらうわ」
「うむ、楽しむがいい!」
なんや、こいつ…。やけに素直やな。よっぽどこのテレビに力入れとったんやろな。ほんで、その性能をうちらに驚かれて満足ってことなんやろ。
ホンマわかりやすいな。子どもみたいなやつやで。
「んで、これで説明は終わりかいな」
「そうだな。――いや、もう一つあった」
そこで百合神が意味深なタメをつくりながらそう言う。
なんやねん、勿体ぶりよるなぁ。
「このワンハンドレッドチャンネル、何故チャンネル数が百なのだと思う」
「ん? 理由なんてあるんかいな」
「勿論あるとも! 単純にして真理な理由がな! それは――」
「もしかして、百合だからじゃないんですか?」
が、百合神が勿体ぶってタメたそれを言う前に、サラリと夜さんがそんなことを言う。
ゆりだから?
「どういう意味ですか?」
「ん? えーっとゆりって漢字で書くと百に合わせるって書くの。だから単純にそこから百をとったのかな~って」
「おー、なるほど。夜さんはやっぱ物知りですねぇ」
「いやぁ、そんなことないよ」
「でも、そない単純な話なんでしょか。正直あんな意味深にタメ込んだにしてはシンプルすぎる気も―――」
とそこでチラリとテレビへと視線を向ける。
すでにさっき夜さんがリクエストした動物番組は消え、当初の椅子に座る百合神へと画面は戻っとる。けど、肝心の百合神本体はまるで時間が止まったかのように停止したまま。
「……図星かい」
そんな百合神に恐る恐る言葉をかける。
「――――――」
そして、返ってきたのは沈黙。
なるほどなるほど。沈黙は肯定を表すって言葉はこういう時に使うんやろな。例題としてピッタリやでこの状況は。
ほんで、ホンマに最後がしまらんやつやな~。
「えっ、えっと百合神様! 私はすっごいいいネーミングだと思いますよ! この部屋にぴったりですし!」
そんな百合神に対しても、夜さんがすかさずにフォローを入れる。
うん、この人はこの人でホンマにええ人やな~。
つーか、どっちが神かわからんで。いや、わからんゆうか外見のスペックだけ見たら百人おったら百人が夜さんの方が神や思うやろな。女神的な。
「夜さん、あんま甘やかすもんやないですよ。これは完全にこいつの落ち度や思います。あんだけ意味深にしといてそんな単純な理由て。むしろ夜さんに言ってもらえて感謝すべきや思いますわ。あのままこいつが答え言うてたらごっつ微妙な空気になってた思いますしね」
「というか、お前は逆に厳しすぎだ! もう少し私に優しくしてもいいだろうが!」
「いや、逆切れやないかい…」
「ああ、そうだ! 逆切れだ! まったく今回はせっかくすんなり終われるパターンだと思っていたのに! もぉー、この部屋と通話すると毎回最後はこんな感じではないか!」
「知らんがな。それと、もぉーって何やねん。なにかわい子ぶっとんねん」
「かわい子ぶってなどいないわ、馬鹿者! はいっ、もう終わり! これにて説明タイムは終了だ!」
「あっ、おい!」
「ではな!!」
そして、ぷつんとテレビの電源が切れたみたいに百合神の姿がテレビ画面から消え去る。
思いっきり逃げおったな。
「というか、あいつと話すと毎回同じ様な通信の切れ方しとる気がしますよね。ワンパターンやわぁ~」
そう呆れた口調で夜さんに向けて話しかける。
しかし、
「――」
夜さんから返事はない。
不思議に思うて、隣を見ると何やら難しい顔で顎に手を当てて何かを考えてるようやった。
「夜さん?」
「―――この部屋…?」
「よーるさん!」
「はっ、はい!? あっ、ごめん紗凪ちゃん」
「いや、ええですけど。どないしました?」
「ううん、なんでもないよ。純粋に改めてこの部屋のテクノロジーの凄まじさについて考えてただけ」
そう言って夜さんがニコリと笑う。
まー、確かに改めて考えんでもこの部屋ヤバいよなぁ。そこかしこに手が込みまくっとるし、この分やとまだ入れへんイベントルームもごっついことになってそうやで。
「ですね。…ほんで、夜さん」
「どうしたの?」
「あのこれちょいと色々試してみてもええですか。百合神にはああ言うたけど、やっぱ気になるもんは気になりますしね」
「もちろん♪」
うちの提案に夜さんは快く頷いてくれた。
そして、うちはもっかいリモコンを手に持ち、先程百合神が言っとったテレビの横にある冊子とやらをとるために腰をあげた。




