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Episode-4 『室内散策・関西弁JKの場合』


「ふぅー、ホンマにうちの部屋そのものやな」


 虹白さんといったん別れてうちのプライベートルームとやらに来たわけやけど、虹白さんの言うとおり全く昨日まで暮らしてた部屋と変わらへん。

 隣の部屋同様に一点を除いては。


「何やねん、この電話ボックス。邪魔やわー、ほんで絶対ここにいるときとかこれ浮きすぎて気になってしゃーないはずや」


 苛立ちを込めて、軽く電話ボックスを蹴飛ばす。

 しかし、そんなことをしても足がちょっと痛いだけで何の解決にもならへん。わかっとるわ。


「はぁー、とりあえず虹白さんと合流せなあかんな」


 部屋に特に異常があらへんことを確認し終えると、さっさと部屋を出ていく。

 しかし、部屋から出たところにはまだ虹白さんの姿はあらへんかった。

 すいぶんじっくりと調べてはるんやな~。

 

「まあ、急かすのもあれやし待っとるか」


 扉に寄りかかり、改めて恐らくリビング扱いの最初に目覚めた白い壁と床の部屋を見渡す。

 まあこれがリビングやったらとんだ大金持ちやけど。

 キッチンと思しき場所と二人掛けのテーブル、それにソファとテレビ。確かに普通に生活するだけやったら不便に思うことは無いはずや。

 てか、テレビなに映るんやろか? 野球やっとるかな?


「あっ、待たせちゃった?」


 と、そんなことを考えとったらそこで虹白さんが部屋から出てきはった。

 心なしかその表情は落ち着きがないようにも見える。

 まあ、しゃーないか。うちは図太い自覚あるしあんまりこの現状に気が滅入っとるってことはないけど、女優さんとかなんやセンチメンタルそうやもんな。特に虹白さんはそんな感じの見た目してはるし。


 しんどいんやろな…。

 よし、ここはいっちょ元気付けたるか。


「いえいえ全然です。そういやちょっと気が早いけど飯なんにしますか? 粉もんと揚げもんなら、うち得意ですよ」


「へぇ~、音木さんは料理もできるんだ」


「実家が飲食店やっとりますんで」


「本場の味だ~」


 心なしかちょいと虹白さんの声が弾んだ気がする。

 ふっふ~ん、どうや。

 やっぱ落ち込んだらなんか食わなあかんよな。やっぱベタに楽しく食えるたこ焼き辺りがええやろか。

 

「でも、まずは他の扉だけ何か見てみよっか」


「あー、確かにそりゃそうですね」


 さっそく今すぐにキッチンに向かってたこ焼き器があるんか確認しようと思っとったが、虹白さんの言葉に我に返る。

 虹白さんの言うとおり、そっちの方が優先やな。

 さすがに大人の女性だけあって考えは落ち着いてはるわ。これは、もしかしたらさっき少し表情が落ち着いてない様に見えたのはうちの勘違いかもしれんな。


「残る扉は四つ。順番に開けてこうか」


「そっすね。普通に考えたらトイレと風呂場ですかね」


 そう言って二人で壁際に添いながら歩き出す。

 そして最初の扉に辿り着く。


「トイレだね」


「ですねぇ」


 その扉にはご丁寧に『トイレ(用を足すところ)』と日本語で書いてある。

 いや、()は言わんでもわかるわ。

 他にどんなトイレがあんねん。


「で、こっちがお風呂だね」


「…そうですね」


 そして、そのすぐ隣の扉にも『お風呂(体を洗ったり入浴するところ)』と書いてあった。

 …うん。

 まぁ、普通に考えたらこれを書いたのも百合神なんやろ。

 つまり、


「もしかしてあいつ、うちらのことメッチャ馬鹿だと思ってるんとちゃいますかね」


「あはは…、神様だから人間の世界のことがよくわかってないだけなのかも。多分、少しいきすぎた配慮なんだよ」


 と虹白さんが困った様に笑いはる。

 ええ人やな、この人。

 うちなんか、完全に煽られてるとしか思われへんねんけど。あの神なんかこういうねちっこい嫌がらせとかしてきそうやしな。なんや子どもっぽいし。


 まぁ、ええわ。

 あとは扉は二つ。

 でも、その内容は本命のトイレと風呂場が消えたことで後二つは見当がつかへん。


「他の二つの扉はなんの部屋やと思いますか?」


「うーん、なんだろうね」


「ま、見ればわかりますか」


 そう言って少しだけ歩き三つ目の扉の前に立つ。

 そこには『運動場(体を動かすための場所)』と書いてある。

 ちなみにもう()にはツッコまへん。あのアホの思い通りになるのもシャクやしな。

 

 でも、それにしても運動場か。

 さっきはああ言ったけどなんやあの神、意外と気が利くやないか。


「運動場か~」


「虹白さんはスポーツとかしはるんですか?」


「いや、正直そこまで得意分野じゃないかな。さ――音木さんは?」


「? うちはどっちかと言うと体動かすのは嫌いじゃないっすね」


 何故かうちの名前を呼ぶときちょっと間があった気がするけど気のせいやろか。

 まあ、気のせいやろ。


「…そっか、じゃあ今度時間あったらなんかやってみよっか? あっ、もちろんスポーツをだよ!」


「いや、そりゃそうやろけど…。まーでも、それには同意見ですね、運動は気分転換になりますし」


 なんや、やっぱちょっと惚けたところあるけど話しやすいな虹白さん。

 ちょっと意外っちゃ意外やけど。


「で、次が最後ですね。想像つかんなぁ、図書館とかやろか?」


「うーん、でも入り用なものがあれば言えって言ってたし欲しい本とかあれば送ってくれそうではあるよね」


「あー、確かにそんなこと言うてましたね」


 そんなこんなで最後の扉の前に行き着くうちら。

 そして、そこには『イベントルーム(楽しみに待っているように♪)』と書いてあった。

 ついに()で話しかけてきよったな。ほんで何でちょっと楽しそうやねん。今までとは別パターンや。

 そんな()に思わず脳内でツッコみを入れてしもうたところで、


「あれ?」


 うちがその説明文に首を傾げていると、横で虹白さんも疑問の声を漏らす。


「どないしました?」


「なんか鍵がかかってるみたい」


「あら、ほんまや」


 回そうとして明らかに何らかのロックがかかっている感じがして開かへん。

 

「待ってるように、って書いてあるしあとで何かあるのかもね」


「かもしれませんね。なんでちょっとサプライズチックなのかはわからへんけど」


 そう言って手を離す。

 これで一応散策が終わってしまった。

 そして、気づく。――やることが無い!


「えーっと、どうします?」


「…どうしよっか?」


「特にやることもあらへんわけですもんね。ったく、もう一度あのアホ神呼び出しましょか。そもそもなんなんやろあいつ。百合神って言う名前自体も意味不明ですわ」


「? どういうこと?」


「え? だってなんやったけ、…そや! あいつ『女の子同士の恋を司る神』とか言うてたじゃないですか? それが何で百合神になるんですか? 百合って花やないですか」


 話の流れでずっと気になっていた疑問を口にする。

 その瞬間、虹白さんの頬が少し痙攣しはった様に見えた気がした。


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