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Episode-37 『テレビを見よう・関西弁JKの場合』


 あー、びっくりしたー!

 

 なんで急にあないなこと言うんやろか。

 ごっつ綺麗な笑顔と優しそーな声で一緒に暮らすんがうちでよかったとか言われたら、そら誰でも照れるやろ。性別とか関係なしに!

 なんとか表情を取り繕って、動揺を顔に出さん様にしたけどあかん! あんままやったら百合神の思うつぼになるとこやで、まったく! 危ないとこや!


「――そですか、ほならよかったです」


 とりあえず、そう当たり障りのない答えを返す。

 

 …いや、ちょっと待て。

 確かに百合神の思い通りに動くんは癪や。でも、それを意識して夜さんに対する態度を変えんのもまたちゃうんやないか。

 

 夜さんは一緒に暮らすんがうちでよかったって言うてくれた。

 なら、うちは?

 こんな突飛な状況やけど、ツラいとか苦しいって思うたことは昨日から一度もない。そしてこれから先の一年間、そう思うこともない気がする。

 不思議な話や。一年って長いけど、夜さんとなら普通に楽しぃ暮らせそうな気がする。

 

 なんや、結論出とるやん。


「あっ、あの!」


「ん?」


「うちも一緒に暮らすんが夜さんでよかったと思ってますよ」


 ちょいとばかり照れくさい。

 でも、それは夜さんも同じやったみたいでちょいと恥ずかしそうに微笑みながら、


「――――そっか、よかった」


 とそう言ってくれる。


「―――――」


「―――――」


 そして、謎の沈黙が数秒続く。

 やばいな、これ…。なんや二人して話すタイミングを逸した感がある。それにさっきの今で恥ずかしさも残っとる。

 いや、ここはうちみたいなタイプが先に話し出さなあかんやろ!

 なんかないか、なんかないか、なんかな――あった!


「夜さん、これテレビつけてみません?」


 そう言ってずっと気になっとった目の前のテレビを指差す。

 うん、まさにおあつらえ向きや。うちの疑問も解消できるし、この沈黙も解消できる。


「あっ、うん。そうだね、実は私もひっそりと気になってたんだ」

 

 そしてうちのその意見はすんなりと通った。

 

「やっぱ夜さんも気になっとりました?」


「うん、だってホントに何が映るのか想像つかないもんね」


「ですよね。テレビ局とかそもそもここでどんな扱いなんかもよーわかりませんしね」


 ま、物は試し。実際にやってみるのが早いやろ。


「リモコンは…っと。あったあった」


 テレビの横に置いてあったリモコンを立ち上がって取ってくる。

 しかし、


「なんやこれ?」


「どうしたの?」


「いや、これなんですけど」


 夜さんにとったリモコンを見せると、夜さんも不思議そうに「あれ?」と首を傾げはる。

 何を隠そうこのリモコン、ボタンが一つしかないのだ。

 どゆことや? 普通に考えたら電源ってことやろけど。


「とりあえず押してみますね」


「うん」


 夜さんから了解を取り、リモコンをテレビに向けて恐る恐ると言った風にボタンを押す。

 するとどうやらうちの予想は正しかったようでパッとテレビが光ると画面に映像が映し出される。

 

 そして、そこに映し出されたのはまさかまさかの仮面をかぶった怪しい人影。

 つまり、百合神だった


「って、またお前かい!!」


 思わず思いっきりツッコミを入れてまう。

 なんやねんこいつ、なんでテレビに普通に映っとんねん。

 なんや片手にワイングラスみたいの持っとるし。ようわからんけど腹立つわー。


「…相変わらず鬱陶しいツッコミだ。一応言っておくが私だって好きでこうしているわけではない。というか、少し前に話したばかりのお前と再び話さなくてはいけない私の身にもなって欲しいものだ。はぁ…」


「なんで溜め息やねん! こっちが吐きたいわ、アホ!」


「あー、うるさい。もういい、今回はやることさっさとやって帰るから静かに聞く様に」


 何故か聞き分けのない子どもに言い聞かせるような百合神の口調。

 こいっつ、ほんまに一々こっちの神経逆なでして来よるな…。


「おっ、虹白夜もいるのか。まあ二人いた方が手間が省けるしちょうどいい。これからお前らにこの百合神特製テレビ――通称ワンハンドレッドチャンネルについて説明してやろう」


 何となくやが声が高ぶっとる気がする。

 むっ、さてはこのテレビこいつの自信作やな。


 てゆうか、何でうちはちょいとこの百合神の生態に詳しなっとんねん…。

 我ながら呆れるわー。


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