Episode-35 『学校生活について・関西弁JKの場合』
ふーん、これ人気なんやなぁ。
確かによう考えれば、聞いたことあるような気がするなぁ。
おー、なんや段々思い出してきたわ。
「そういや、これうちのダチが前に読んでた気ぃしますわ。そんときはスルーしたんすけど、せっかくやし読ませてもらいましょかね」
一巻を手に取って、呟く。
しかし、
「――――」
夜さんから返事が無い。
不思議に思って横を見ると、夜さんが何故かボケーッとしとる。
なんで?
「夜さん」
「――――――」
「夜さーん!」
「――へっ!? あっ、ごめん!」
「いや、別に謝りはることでもないですけど…大丈夫ですか? やっぱ疲れとるんとちゃいます?」
時間にしてはあんまり長いこと部屋におらんかったしなぁ。その上、慣れない環境で慣れない運動とかさせてもうたし…。
あれ? これもしかしてうちのせいやないの?
「いや疲れては無いよ! というか、さっきの今でもう体力全回復!!」
しかし、当の夜さんの方は拳を突き上げそう宣言する。
うーん、ほんまやろか?
というか体力全回復っていうより、なんやハイになっとるように見えるんやけど…。
「ほんまですか? 無理とかは――」
「全然してないよ。ホントに私今凄い肉体も精神も元気だから! 元気になったから!!」
食い気味に言われてもうた。
まー、でも確かに顔色悪いとかは無いし心なしか血色よさそうに見える。どうやら、ホンマに元気みたいやな。
よっぽど、プライベートルームで休めたんやろか?
まあ本人がそう言うてるんやから、うちがすべきは信じることやな。
「ほならよかったです。夜さんはこれ読みはったんですか?」
「うん、出演作の原作だからね。主役じゃないとはいえ、一応一通りは目を通したよ」
「はぇー、流石ですね。プロ意識高いですね」
うちの言葉に「そんなことないよぉ~」と謙遜するように夜さんが頭をかく。
こんな一動作をとっても絵になるんやから凄い人やで。
パラリと表紙をめくり、漫画に目を通す。
うーん、絵は綺麗やけどやっぱ少女漫画チックやなぁ。いや別に嫌なわけやないねんけど、普段読まへんからちょいと違和感あるわ。
「これ、おもろかったですか?」
パラパラとページをめくりながら問いかける。
「うーん、どうだろ? 人気が出そうってのは何となくわかったけど、私としてはまぁまぁだったかな。でも好きな人はすごく好きだと思うよ」
「へぇ~」
うちの問いかけに夜さんは真剣な表情でそう答えてくれる。
ふむ、その口ぶりからして濁しとるけどあんま夜さんにはハマらへんかったみたいやな。
「紗凪ちゃんはどんな高校に通ってるの?」
そこで不意に夜さんがそんなことを聞いてくる。
チラリと見ると夜さんも五巻を手に取り、軽く流し読みをしていた。たぶん、軽い世間話のつもりなのだろう。
だからうちも視線は漫画に落としたまま、
「どんな高校ですか? とりあえず、頭はあんまよーないですね。あとは、そやな――女子高です」
「女子高!」
「ええっ!? どないしました?」
何の気なしのうちの言葉に結構大きめのリアクションをとりはる夜さん。
「あっ、いや、ごめん。私も女子高だったから少し驚いちゃって」
「あー、せやったんですか」
「うん、偶然だね」
そりゃほんまに偶然。
まあ、夜さんの通っとた高校とうちの高校は同じ女子高言うてもたぶん全然タイプちゃうやろけどな~。
「もしかしてあれですか? 夜さん通っとったのって漫画みたいなお嬢様学校的なとこだったりするんですか?」
「うーん…、かも?」
「うわっ、やっぱそうなんや! すごっ、ああいうのってほんまに現実にもあるんですね! 『ですわ』口調の人とかいてはるんですか?」
「さすがにそんな人はほとんどいないけど…、何人かはいたかも」
「はぇ~、ほんまにそんな学校あるんすね~。世界は広いわ~」
いつの間にかに漫画よりも夜さんの話の方に興味を割かれてもうてる。そのせいもあってあんま漫画の内容も頭に入ってけぇーへんなこれ。
そして、見ると夜さんもいつの間にか手の取っていた五巻をソファの上に置いていた。
「紗凪ちゃんはなんで今の高校選んだの?」
「家からいっちゃん近かったからですね」
「おお、シンプルな理由」
夜さんがクスリと笑みをこぼす。
確かに高校を選ぶ理由にしてはシンプルすぎるほどにシンプルやしな。自分で言うのもなんやけど、改めて考えるとテキトーな進学理由やで。
「部活とかはやってたりするの?」
続いてまたしても夜さんからそんな質問。
心なしか、機嫌が良さげやな。なんでやろ?
それにしても部活かー、やっとるけどそんまま言うのはちょい恥ずいな。いや、今さら恥ずかしがってもしゃーないか。ここまで来たら夜さんには隠し事無しでええやろ。一年一緒に暮らすんやし。
「紗凪ちゃん?」
珍しく頭の中での思考が長くなり、夜さんが若干心配そうにうちの名前を呼ぶ。
おっと、いかんいかん。
「あっ、すんません。ちょいと特殊というかオンリーワンの部活でして」
「特殊?」
「はい、うちが所属しとるんは『放課後全力スポーツ部』ってんですよ。ちなみにうちが部長です」




