Episode-150 『しりとり・超清純派女優の場合②』
「???」
余りにサラッととんでもないことが発表されたせいで、耳に届いた言葉を脳が解釈するのが少しばかり遅れる。
………オタガイノヨイトコロスキナトコロ?
………おたがいのよいところすきなところ?
………お互いの良いところ好きなところ!!
そして三つの変換を経て、ようやく私は紗凪ちゃんがボックスから取り出したボールに書かれていたテーマを理解した。
なっ、ななななななななななななっ!?
だが今度は理解してしまったばかりに混乱が私を襲う。
ミニゲームって言ったじゃないですかぁ…! 何でちょっとこう、そんな緊張するようなテーマを入れるんですかぁ…! ヨーロッパ人にいそうな名前とかでいいじゃないですかぁ…!
そのまま心の中で百合神様に恨み言を呟くが、それに答える声は当然ない。
そしてここでもう一つ予想外の事態が起こる。
「へぇ~、意外な感じのテーマですねぇ。結構おもろそうやな。あ~でも、これお互いってことは夜さんのことを言えるうちの方が圧倒的有利やと思うなぁ」
紗凪ちゃんは動揺していない。
それどころか結構乗り気な気がする。
くっ、やはり根が明るい良い子。略して根明良子の紗凪ちゃんだ。
私の様に根が暗いダメな子。略して根暗ダメ子とはやはり有する陽のエネルギーが違う。
一対一で相手の事を褒めるという行為に照れたり恥ずかしがったりといった抵抗が全く無いなんて…!?
しかも私の場合、その相手が大好きな子というオマケつき。正直すでに始まった後の事を想像して、その緊張で吐きそうな勢いだ。
「…っと、別によーいど…があるわけや…よな。しりとりやか…初は『り』」
えーっと、冷静になれ私。
まずは落ち着かなきゃ始まらない。不測の事態でこそクレバーに大人の女性らしくだ。
……――よし、冷静になった。
後は準備対策を高速で練るしかない。良いところ・好きなところの二つの選択肢。正直、紗凪ちゃんの良いところも好きなところも私にとっては無限にあるといっても差し支えはないが、明確な好意を表に出さないものに限定すれば――、
「夜さん?」
「――! ん、どうしたの?」
「あっ、いやボーっとしてはったんで。あと先行うちでええかなって」
「ごめんちょっと考え事してた。ん、全然いいよ」
「ハハッ、夜さん急に考え事しだして声届かなくなることたまにありますよね」
そう可笑しそうに笑う紗凪ちゃん。とても可愛い。
…って、ん? なんかなぁなぁで返事しちゃったけど…今、紗凪ちゃんなんて言った?
えっと、せんこう? 先行――!?
「じゃあさっそく始めましょうか。『り』、料理上手♪」
「えええええっ!?」
まさかの即開戦!
って、やばっ! 思わず驚きが声に出ちゃ――、
「いやいや、そんな驚かんでも。むしろ夜さんが料理上手やなかったら世の料理自慢達が浮かばれませんわ」
「あっ、あー…。そうだね、うん♪ ありがとう」
どうやら紗凪ちゃんは私の驚きの反応を『料理上手が良いところ!?』的な意味に解釈したらしい。
よし、セーフ。いや、セーフ? 違うな首の皮一枚繋がった的な表現の方が正しい。
何故なら、
「どういたしまして♪ ささっ、次は夜さんの番ですよ」
無策のままに今度は私のターンになってしまったのだから。
料理上手――つまり『ず』。
「ずっと好きでした!!」………うん、違うね。まだそれは早すぎる。
「ずっと一緒にいたい!!」……うん、違うね。まだまだそれは早すぎる。
というか、良いところでも好きなところでもないし。それじゃただの愛の告白だし。
「えっと、少しシンキングタイムを頂いても?」
「どうぞどうぞ」
「ありがと」
紗凪ちゃんに断りを入れてに考えに集中する。
だが、これは諸刃の剣だ。何故なら、考える時間が長ければ長い程に、私は紗凪ちゃんの『良いところ好きなところ』を中々見つけることができない=紗凪ちゃんは魅力が無いと誤解を与えかねないのだから。
だから一瞬で深く思考を走らせなければならない。
『ず』、『す』じゃだめかなぁ~。だめだよなぁ~。
全然関係ない話だけれど、しりとりの濁点取り外しルールってもう一律で正規ルールとしてありかなしかのどっちかを定めた方がいいんじゃない? 国とかで。
いやいや、さっき時間をあまりかけられないって決めたばかりでしょ! 馬鹿か私は、全然関係ない話に思考を割くな!
はいじゃあ本題。
『ず』で始まる人の美点。一番に思い浮かぶのは『頭脳明晰』だ。…が、残念なことにこれは紗凪ちゃんとはいまいち噛み合わない。紗凪ちゃんが悪いとかではまったくない、ただ噛み合わない。
では次に思い浮かぶのは何か?
一つ思い当たるものがあった。
ちょっと反則じみた答え方。だが考える時間と答えの精度、その二つを掛け合わせてこの答えが今は最適なはずだ。
そう、それは――。




