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Episode-143 『知ってる人達と知らない人達・リアリスト社会人の場合』


 何個かあるレジの中の一つにパパッと選んだ食材を入れたカゴを持って並ぶ。

 そしてそんな私の前にはテレビで見ない日はないあの・・国民的女優が並んでいた。しかも、


「見た目はそっくりですけど、性格は全然違う――というか正反対と言ってもいいくらいですよね。いや~、今思い出してもお姉さんの強い個性は印象に残ってますよ」 


 彼女は私にまるで友人の如く気の置けない口調で話しかけてきているのだ。


 何故こんな流れになったのか、自分でもわからない。

 だからここであえて、今日の朝からの流れをおさらいしてみようと思う。

 いつも通りの何の変哲もない私たちの生活の一部始終を――。


 ***――――


 朝起きていつも通り一人でご飯を食べた。

 それから数時間後、憩は相変わらず十時半過ぎ辺りに起きてきたと思う。


「おざまー…す。七生さん」


「おはよ。毎回言ってるけど、ちゃんと早く起きて三食食べた方がいいわよ、社会復帰のための第一歩」


「社会復帰の予定が今のところないんですよねぇ~」


「そんなこと言ってたらすぐに三十歳四十歳になっちゃうわよ」


「うーむっ、中々に辛辣。ですがぁ、私は明日の事さえ明日の自分に任せる主義なので、そう言われてもあんまりピンとこないんですよねぇ」


 こんな会話も慣れてしまったものだ。

 まったく、最初にちょっと複雑な事情を持ってる女子中学生として扱ってお風呂で頭を洗ってあげたのが遠い昔のよう…。

 当たり前であるがあれ以降は自分で頭を洗わせている。ちなみにあれ以降しっかりと毎日お風呂にも入れている。最初こそ嫌がる憩を無理やり引きずってお風呂に連れて行ったものだが、最近は観念したのか自分からお風呂に入るようになった。

 …というか最初から自分で入らないのがおかしいんだけどね。お風呂を嫌がるとか、犬か何かか?


 が、そんな生活を一か月以上続けた結果、もうこの荒宿憩という私とは姉とは違った意味で正反対の同年代女子の生態は大幅把握できた。 

 ――簡潔に言えば、ダメ人間。

 基本的には普通の人間が普通にやっていること、例を挙げるならばお風呂や食事なども率先してやろうとしない。耐えられる限界が来たらやる、そんな感じだ。

 そしてもう一つの特筆すべき性質。それは、


「――はい」


「どうも~」


 『人にやってもらう体質』とでも言うべきだろうか。

 もう甘やかされて育ったことが丸わかりな程に何事にも受け身。であると同時に、何故か私はその世話を自然と焼いてしまうのだ。

 

 事実、今の私は彼女が自室から出てきた瞬間にソファから立ち上がり、彼女の分の朝ごはんをテーブルまで運んでいた。ちなみにもう毎朝の起きてくる時間は把握済みなのでお味噌汁も数分前に火にかけ直してちょうど温まったところだった。

 これは元の私の性格も少なからずあるかもしれないが…それにしても我ながら自然にこの子(二十四歳)の世話を焼いてしまっている。だって、給仕掃除洗濯等の家事は実際私がこの空間では全て担当しているわけだからね。

 至れり尽くせりでしょ、いったい何様なんだこいつは…!


「う~ん、お味噌汁が寝起きの身体に沁みる。本当に七生さんのつくるご飯は美味しいですね、いつもありがとうございます」


「…はいはい」


 が、彼女はこうして定期的に何一つ恥ずかしがることなく素直な感謝の言葉を伝えてくる。

 彼女自身も私にお世話されている自覚があるのだろう。これでは怒るに怒れない。そして次も同じように世話を焼く。

 こんな風にして私たちの生活は謎のバランスがとれている。

 とは言っても、やっぱり甘いのかな私、


 そんなことを思いながら、しゃけの塩焼きに箸を伸ばしている憩の対面に座る。

 

「~~~♪」


「――――ふっ」


 ホント美味しそうに食べるな、こいつ。

 …って、今はそんなことどうでもいい、別に話す内容があるんだから。


「それ食べて少し食休みしたら、お風呂入るかせめてシャワー浴びちゃいなさいよ」


「? 七生さん、何を言ってるんですか? 今は朝ですよ」


「朝ではない、もうどっちかと言えば昼だ。それに年頃の女子が朝にシャワーを浴びることに疑問符をつけるな」


「いや、だって今までそんなことしなかったじゃないですか」


「今日はあれの開放日でしょ」


 言いながら、白い壁を指差す。

 そう――今日は『ショッピングルーム』とやらが開放されるのだ。たぶん百合神の話からして、デパートの様なものだろう。

 せっかくだし今日の午後は二人でそこに行くことを前日に話して決めていたのだ…が、

 

「まぁ現実世界とは違って他の誰かの視線があるとかではないけど、せめて一応の身だしなみぐらいは隣を歩く者としては整えて頂きたいわね。具体的にはその寝起き丸出しのボサボサ頭とかね」


「なるほど…。でもシャワーとかめんどくさいんで、水ちょっとつけて寝癖跳ねてるとこだけ修正する感じじゃダメですか?」


「たぶん今時、男子中学生でも朝の身だしなみにはもっと気を使うわよ」


 「はぁ~」、と同居人のものぐさっぷりにため息を吐きながら私たちの朝兼昼は過ぎていった。

 

 ちなみに、その後に無理やりシャワーは浴びせましたけどね!


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