Episode-139 『交差する世界・関西弁JKの場合②』
「ふっふふっふふ~ん♪」
先程のコーディネート合戦が終わってから十数分後。
うちは一人、『ショッピングルーム』内を軽くスキップしながら歩いていた。
うへへ~、夜さんに褒めてもらったで~。
始まる前は緊張やら不安やらが結構あったんやけど、終わってみれば夜さんには喜んでもらえたし、褒めたもらえたし、ええ感じの服も選んでもらえた。ええこと尽くめやで。
そんな訳で今のうちはメチャクチャ上機嫌なわけや。
ちなみに一人でいるのは、夜さんと話し合ってちょっと個別にこの『ショッピングルーム』全体を見て回ろうってことになったからや。
そんな感じで、夜さんは冷蔵庫にない様な食材を求めに一階にある食品コーナーへ向かい、うちは何となくその反対の上の階へとやってきたって訳や。
その後はそのまま何も考えずにホントにプラプラするって言葉通りに何となくで店内を見て回っているのが今の状況やな。
そんな中で一個気付いた…というより改めて感じたことがある。
「それにしても、ほんまに普通の人にしか見えへんよなぁ」
店内にいるエキストラ、それは階を移動しても当然の様にそこら中におる。
そして、商品を選んでいる姿やお会計をしている姿とかも現実の世界の人らとなんら変わらへん。マジで普通のデパートみたいや。
ホントに百合丘が言っていたように違いがあるとすれば、
「あっ、すんません。ちょい聞きたいことあるんやけど」
「! はい、なんでしょう?」
「この階のトイレってどこにあるかわかります?」
「ああ、それでしたらここをまっすぐ行って突き当りを右に曲ったところですよ」
「おおきに。助かりましたわ」
「いえいえ、お役に立てて何よりです」
普通のお客さんがこっちにめっちゃ親切ってことくらいやな。
お客さん役の人も現実世界の店員さん並みにこっちの質問に丁寧に答えてくれる。ここに来るまで何人か試してみたけどみんな同じくらい親切な対応やった。
…あれ? でもそう考えるとやっぱりあのオシャレアドバイス姉さんはちょっと違っとったな。
もちろん親切でええ人やってんけど、他のエキストラの人らはいきなり何か質問しても頼みごとをしてもそれを直ぐに受け入れて答えてくれた。でもあの人は最初に「…………はい? ……私がですか?」と言った。
もちろんそれが一般常識に当てはめれば普通なんやけど、この世界からしたら異質よな。
…ということは、つまりあの人は――、
「やっぱ百合神か百合丘が遊び心でつくったちょっと変わり者エキストラってとこなんやろな~。あいつらそういうの好きそうやし」
ま、そんなところやろ。
そもそもあいつらの思考を深く考えるだけ無駄や、無駄。
「―――ん?」
そんなことを考えているうちに周囲に陳列されている商品の種類が変わっていた。別のコーナーに入ったみたいや。
「おおっ、遊び系のコーナーやな。――!」
軽く周りを見渡してそのコーナーの特色に気づく。おもちゃやゲームなど娯楽系の商品がそこにはあった。
同時にそれを見たうちの頭の上で珍しくピコンと電球が光る。
「せっかくやし夜さんと暇なときに遊ぶ用のテレビゲームとかボードゲームとか探ししとこかな」
我ながら中々いい案やな。そしてそうと決まれば、即行動や。
そんな訳でうちは急遽そのコーナーにて遊び道具を探し始めようとした、――そのときだった。
――パチン。
小気味のいい音が唐突にうちの耳に届いた。
「ん?」
どこか聞き覚えのある様なそんな音。それに興味を引かれて不思議とうちの足は音の鳴る方へと向かい出した。近づくにつれてその音は鮮明になっていった。同時にうちもその正体に何となく気づき始める。
何度も聞いた事のある木材を弾く様なそんな音。それに加えて玩具コーナーという今の場所。その二つから導き出されるものは限られていた。
「やっぱり」
そしてうちは目でしっかりとその発生源を発見した。
そこにあったのは駒が並んだ将棋盤。さっきの音は将棋を指す音だったわけや。
が、そんな中で一つ違和感があった。うちとしてはてっきり誰かと誰かが将棋を指しているのかと思っていたんやけど、将棋盤の前に座っているのは一人だけ。その人が一人で両面のコマを動かして一人二役で将棋を指していた。
…詰将棋って感じでもないよな。完全に自分対自分で指してるって感じや。
珍しいし、なんや地味に切ないな…。
――よし。
その光景を見て、うちは何となく軽いノリでそこから更に前へと進みその人へと近づいた。
そして、
――パチン。
「………はい?」
「うちも混ぜてぇな」
相手が一手指したタイミングで反対のコマを動かすと、そのままその人の対面へと腰を下ろした。
改めて見ると個性的な見た目やな、この子。
顔の見た目や身長は大体中学生くらいなんやろけど、胸だけが凄まじく成長しとる。うちも同年代と比べたら結構でかい自覚はあんねんけど、そのうちよりもだいぶでかいで。何カップなんやろ?
そんでそんな子が一人で将棋指しとるんや。
――これはあれやな、完全にコーディネートお姉さんと同じ変わり者エキストラの部類やな!
「えーっと…」
そんな巨乳中学生(仮)は突然のうちの乱入に困惑顔。
この反応はやっぱりうちの予想通りやな。普通のエキストラの人やったら、「どうぞどうぞ」ってなるはずやしな。
「ちなみにうち地味に将棋強いで。昔っから爺ちゃんに鍛えられとるからな、ほらほら嬢ちゃんのばんやで」
「…うおぉ、急に乱入かと思ったら見るからにコミュ力強者。…というか、この人たちにこんな機能あるのなんて聞いてないんだけど…。それにこれはまた勘違いされてる流れだし…? …今さらながら私そんなに見た目幼い?」
「何を一人でブツブツ言うてんの? あれ、もしかして嫌やった?」
「いやっ、まぁ、嫌じゃないですけど…。…うん、まぁじゃあせっかくですし――指しましょうか」
少し悩むような仕草を見せた後にそう言うと、
――パチン。
彼女の手によって次の一手が指される。
「う~ん。ほならこうや」
――パチン。
そして、うちと巨乳中学生エキストラとの将棋対決が唐突に始まった。




