Episode-136 『結果発表・超清純派女優の場合』
「さぁ~て♪ 結果発表の~お時間です♪」
さあ、運命のときはやってきた。
司会者の如く、百合丘さんがマイクを片手にテンション高くそう声を上げる。その声を私はとある密室の中で聞いていた。
私がいるのは更衣室。でも、ただの更衣室という訳ではない。ここはこのお互いの服選びの発表の場として『ショッピングルーム』内に特設してもらった更衣室だった。
そして私が今いる更衣室と向かい合う様に少し距離が離れてもう一つ更衣室がある。言うまでもなく紗凪ちゃん用の更衣室だ。そして、その両者の中間地点にマイクを持った百合丘がいるというのが今の状況である。
そして、事前に私達にはお互いが選んだ服が手渡されており、すでに着替えも完了している。
つまり私はすでに紗凪ちゃんが私だけの為に選んでくれた音木紗凪コーデを身に纏っているという訳だ。それだけでもう幸せ度は最高潮で、内なるテンションも最高潮だ。
さっきから更衣室内にある鏡の前で何度かクルクル回ったりしてるしね。柄にもなく。
いや~、しかし驚きました。お洋服のセンスもいいのね、紗凪ちゃんは。
…まぁセンスが未知数の私に人のセンスを評価する資格はないんだけど、それでも鏡に映っている私の服装は中々のものだと思う。紗凪ちゃんが選んでくれた補正を抜きにしても、全然見れる服装なんじゃないかなこれは。個人的には幸や母さんが選んでくれたお洋服だと言われても全く違和感がない程だ。
――だが、今回の問題はそこじゃない。
正直言えば、私は紗凪ちゃんが一生懸命選んでくれた服なら何でも嬉しいし、心から受け入れられる。ぶっちゃけ、Tシャツにジーンズとかの簡単なやつでも全然何一つ問題ない。
だが、私が選んだ服に対しての紗凪ちゃんの反応は果たしてどうなのだろうか?
もちろん天使の様な紗凪ちゃんのことだ。私と同じくなんでも心から受け入れてくれることだろう。それは想像に難くない。
でも私は紗凪ちゃんに心から喜んでほしいのだ! 自分に似合っていると思ってほしいのだ! 夜さんセンスいい~って思ってほしいのだ!
そのために力を尽くした。
今までのここで暮らしてきた紗凪ちゃんの服装を思い返しながら、私がここで選んだ服とその記憶を擦り合わせ続けた。
そして、ファッション知識皆無ながら私はなんとか造り上げたのだ。紗凪ちゃんに似合うコーディネートを。
それが果たして良いものだったのか。はたまた悪いものだったのか。
その審判が今まさに行われようとしている。
「では、お二人とも更衣室の扉を開けて下さ~い♪」
百合丘さんの声と共に、「ふぅ~」と最後に呼吸を整える様に深く息を吸って吐く。
そしてドアノブに手をかける。ガチャっと二つのドアが開く音が鳴る。
開いたドアの先――そこに私と同じようにして更衣室から出てくる紗凪ちゃんの姿が私の網膜に映り込んだ。
ダボッとしたゆとりのある黒いズボン(世間一般ではパンツと言うが、私は昔からパンツじゃ下着と一緒になるじゃん。なんでわざわざズボンじゃなくてパンツって紛らわしい方の名前で呼ぶの?、というオシャレ下級者思考のためずっとズボンと呼び続けている)。
少しだけ英語の柄が描かれた白いTシャツ。そして、その上に羽織る小さめのGジャン。
足元はサンダルに近い構造の軽い女性用の靴。
手首には主張しない程度のブレスレット。首元にはこれも主張しない程度の小さめのネックレス。
――とまぁ、そんな感じである。
イメージとしては『紗凪ちゃんの持つボーイッシュな感じを活かしつつ、ちょっと大人びた感じも出せたらな~』的ファッションだ。
当初は思い切ってスカートも考えたんだけど、更によく考えてみたら一か月以上一緒に暮らしているけど紗凪ちゃんがスカートを身に着けているところを実は見たことないんだよね。つまり紗凪ちゃんはスカートはあまり好きじゃない可能性があった。
故に今回はそこに挑戦的なことはせずに、言い方はちょっと悪いが無難な感じに纏めてみた。スカート姿の紗凪ちゃんは更に仲良くなったら見せてもらうことする予定だ。
…というか、自分で言うのも何だが結構良い感じな気がする。なんか今までに見たことが無いこう新鮮な感じも凄いするしね。
だが、この場で大事なのは私の感想ではなく紗凪ちゃんの感想だ。
気に入ってくれたかな? どうかな?
喜んでくれたかな? どうかな?
時間にしては一瞬の間、しかしその最中に私の中で複数の不安と期待が交差していた。
さぁ、紗凪ちゃんの裁定はいかに!!




