Episode-EXTRA18 『ルーム27・自分大好きお姫様の場合』
私は生まれたときから特別だった。
可愛かった、ひたすらに可愛かったのだ。
可愛くなる努力をしたわけではない、可愛くなるために飾られたわけではない、――ただただそこに存在するだけで可愛かった。
可愛いの具現化。
可愛い=私であり、私=可愛い。
それはこの世の物理法則と同じように決して揺るがぬ自然の摂理。
故に私よりも可愛いものはこの世界に存在せず、私が可愛さナンバーワンであることは疑いようもない事実なのですわ。
***―――――
「ふぅ~、今日も変わらず優雅な朝ですわ」
先日、飼い始めた志保璃の背に乗りながら私は朝のティータイム中。
時間からして同居人が起床してくるのはもうすぐでしょうか? もうそこそこ時間が経つのだからそろそろ志保璃にも慣れて欲しいものですが…。
憂いながら、志保璃の背中を撫でる。
「ギャウギャウ~♪」と気持ちよさそうな愛らしい声が返ってきた。
ふむっ、やはり私の様な高貴な存在のペットはこれくらいでなくてはいけませんわね。
犬、猫、鳥、etc…、現実世界で一般的に飼育されているペットは常々から私に釣り合わないと思っていましたが、理想のペットはここにおりましたのね。
ペットが空想上の生物ドラゴン。ああ、なんて優雅な響き。
「やはりあなたを選んで正解でしたわ、志保璃」
「ギャウ、ギャウギャウ!」
「ふむっ、あなたもそう思いますのね。気が合いますわね」
志保璃が喜んだことによる多少の揺れも高貴なる私には関係ありませんわ。むしろ心地よいとも言えるかしら。
その揺れに合わせる様に体を揺らしバランスをとりながら、淹れたての紅茶の香りと味を堪能する。
ああ、見なくてもわかる。
きっと第三者から見た今の私は恐ろしく画になっている。恐ろしい程に華がある。
私のもつ世界一の可愛らしさに加えて、優雅さ高貴さ、そしてアクセントにもなるであろう背に乗っている志保璃の気高さ美しさ。
仮に今の私を写真におさめるだけで、きっと値段がつけられない様な価値がその一枚の写真に生まれることだろう。
「――ああ、我ながら何と罪な存在なのでしょう」
「ギャウギャウ、ギャウ!」
「ふふっ、やはりあなたもそう思いますか。ええ、そうでしょう、そうでしょうとも!」
何故なら、私の可愛さは世界一なのですから!! おーほっほっほっほ♪
思わずそんなお嬢様然とした笑いがこぼれてしまいそうですわ。
ちなみそんな可愛らしすぎる私の同居人がそんじょそこらの女性に務まるはずがない。圧倒的な私の可愛さの前にその存在は空気の如く霞んでしまうのだから。
しかし、奇しくも私たちは百合神様の定めるベストカップルトップ5に選出された。それはつまり――あまり言いたくはないことですが、同居相手もまた私に釣り合うだけの個性を持っているという事実を意味しております。
それはいい、それはいいのです。
私の可愛さ同様に世界には一番の存在というものが当然存在する。賢さ、美しさ、渋さ、冷静さ、そして――かっこよさ。
しかし、最近一つのことに私は頭を悩ませていた。
その彼女の持つ個性とは別の個性が私にとって目障りに感じてします程に大きくなってきていますの。私の存在を脅かしかねない程に。
――そして申し訳ありませんがそれだけは許容できませんの。何故ならそれは私が一番でなくてはならないものですから。
そんな風に彼女のことを考えていると、
ガチャリ、とドアノブが回る音が耳に届く。
そして、
「おっはよーう!」
とそんな陽気な声とともにドアが開かれ、私の同居人がメインルームへと姿を現した。
麻宮明日華。
私と同じ高校二年生にして、生粋の王子様である…と思っていました――出会ったばかりの頃は。




