Episode-135 『貴女のための服選び・関西弁JKの場合③』
「百合百合ぴょ~ん! ――ほら、これでええんやろ」
もうええわ、一回も二回も大して変わらへん! やりゃええんやろ、やりゃあ!
そんな半分やけくそな気持ちで百合丘の前でそれを披露した。披露したんやけど…、
「はぁ~…」
返ってきたのは溜め息。それも心底うんざりした様なため息やった。
え? なんなんこいつ? シバいてええん?
「あのですね~、八百屋さんじゃないんですよ? なにをハキハキと大声で言ってるんですか? せっかくの可愛いポーズが台無しですよ」
「いや知らんがな。別に大して変わらへんやろ、お前のと」
「―――。かっち~んときちゃいました♪ その耳はお飾りなんですか?」
うちの発言に百合丘の笑顔が固まる。そして続いた言葉には謎の圧が込められていた。
「ふっー、はっー」と深呼吸をする百合丘。
なにをするつもりや、とその様子を黙ってみていると、
「百合百合ぴょ~ん♪」
「………」
百合丘はそう突発的にビシッとボーズを決めてそれをやってきた。
なんや見てたらまた恥ずなってきたな。うちさっきまでこれをやってたんやなって。
「いいですか~、わかりやすく言いますとあなたのは語尾が『!』私のは語尾が『♪』なんです♪ ハキハキした陽気さはいりません、必要なのはきゅぴ~んとした可愛さです♪ そうすればあなたの『百合百合ぴょ~ん』にも♪が自然とつくはずです♪」
「すまん、ホンマにすまん。何を言うてんの自分? お前今の自分の発言を紙とかに書き出してみーや、中々に訳わからんこと言うとるで」
「――――…………。なんでわかんねぇんだよ、脳細胞が半分死滅してんのか?」
「うん、お前今のは完全に言うたな。思いっきり悪口言うたな。今回ばかりは流石に聞き逃さへんかったで!」
なんかこいつとうちの会話って始まってから一歩たりとも前に進んでなくない? ずーっと同じことやってない?
そんなことを内心で思いながら、結局うちは我慢できずようやく尻尾を出した百合丘にツッコみをいれてしまったんやった。
***―――――
数分後。
「はぁ~。もういいや、あなたにきゅぴ~んとなるセンスが無くてはどうしようもありません。諦めますよ。えーえー、私がわるうございました」
「いや、なんでうちが悪いみたいになっとんねん…」
百合丘はもう猫を被るのをやめていた。そして何故かうちはできの悪い生徒みたいな扱いをされていた。
せやけどそれが良い方向に転んだのか、
「――で、私を呼び出した要件を改めてお聞きしましょうか?」
百合丘がそう話題を変える。
ふむっ、ようやく一歩進んだわ。
唐突に話の内容が変わった訳やけど、一々ここにツッコんでまた無限回路に突入する程にはうちもアホやない。…まぁ、さっきまでのやり取りであんだけ時間使った時点で普通にアホやねんけど。
「そやそや、それな。実はうちファッションとかの知識ないねん」
「はい、見ればわかります」
「――――」
我慢や、我慢。ここで感情のままに言い返したら思う壺やで、音木紗凪。
「――でや。お前に夜さんに似合う服を選ぶためのアドバイスを貰おうと思ってやな」
ふーっと一度気持ちを落ち着けるために息を吐き、そのままうちの要件を伝える。
すると百合丘の方は「ふむっ」と顎に手を当て何かを考え出した。
「な。自分、ここにオーナーなんやからそういうのにも詳しいんとちゃうの?」
「まぁ、そこは否定はしません♪ しかしあれですね。私の場合はセンスが良すぎてアドバイスがそのまま答えになってしまいます。それは百合的観点から見た場合、あまり良くはない。という訳で、虹白様のお洋服を選ぶ際のアドバイスはできかねますので、ここはあなたが虹白様のお洋服を選ぶために必要な知識を得るアドバイスを差す上げましょう♪」
「………どういうこと?」
言っている言葉の意味がわからず困惑するうちに百合丘がある場所を指差して、
「彼女たちに聞けばいい、と言っているのです♪」
そう告げる。
そして、その指の先の光景を見てうちもようやくこいつの言いたいことに気付いた。
「――なるほど」
そこにいたのは買い物をする女の人たち。
つまり百合神が事前に説明しとった特別エキストラってやつやな。ここに来るまで何度もすれ違ったりはしたんやけど、特に触れてこんかったんよな。
「つーか、そもそもあの人らって話しかけたら返事してくれるん?」
「もちろん。見た目も中身も普通の人間となんら変わりません。あえて言うなら、あなた達に対して親切に接する様になっているという点が普通の人間との違いかもしれませんね。というわけで、彼女たちなら喜んで協力してくれますよ♪」
「なるほど。そらありがたい話やわ」
ええこと聞いたで。
さっきまでの無駄話の時間もこれでチャラみたいなもんやな。
そうと決まれば聞く人選びやな。
だ~れがええやろな。できるだけ夜さんに近い感じの人がええなぁ~。
「では、音木様。私はこれに――」
「あっ、あの人なんかええんちゃう?」
そこで少し遠くで服を選んどるっぽい感じの一人の女の人がうちの目に留まった。
何となく夜さんに雰囲気の似ているスラッとしたクールそうな大人の女性。もちろん夜さんには及ばないが、かなりの美人さんや。
あれやな、どことなくキャリアウーマンっぽいわ。まぁ特別エキストラなんやけど。
――でも、あの人なら夜さんのお洋服を選ぶいいアドバイスをくれるはずや。よし決めたで!
「あの人に頼むことにするわ」
そう百合丘に何となく伝えてみる。
すると、
「…ふふっ。もっていますね、音木様」
「?」
百合丘は初めて心から可笑しそうにそう笑うと、意味深なことを言い、
「では、私はこれにて失礼いたします♪」
次の瞬間には、百合丘の姿は霧のように消えていた。
そそっかしいやつやで。
それにしても、もってる? どういう意味や?
――あっ、もしやあの人は特別エキストラの中でもファッション知識に溢れた超特別エキストラなんとちゃうの!?
さっすがうちやん!
よし、これで今までの遅れを取り戻したるで!!
そして、そう納得するとうちはその女性の元へと小走りで近づいていった。
「あの、すんません。ちょっと洋服選ぶん手伝ってほしいんですけど~」
「…………はい? ……私がですか?」
うちの第一声にその女性はポカンとした表情で不思議そうに首を傾げながらそう言った。言いかえれば、困惑がその顔に出ていた。
……いや、喜んで協力してくれるんとちゃうんかい!?




