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Episode-127 『平和の終わりと波乱の予感・超清純派女優の場合』


 めっちゃ平和だった。いや、ホントに。

 大体この空間に来てから初めての場所に行くときは、お風呂だったり運動場だったりお花見だったりと何か問題が起こるのが定番だった(主に私がやらかしてだけど)。

 しかし、今回は何もなく和やかな空気のままに私たちは『ひなたぼっこルーム』でのお散歩を終えた。


 正直完全に予想外だった。

 絶対に何かが起こると思っていた。具体的に言えば、これ見よがしにあったあの池に私がすっ転んで落ちるとか、コンちゃんが野性に目覚めで走り回りそれを追った私が体力切れをして倒れるとか、そんな感じだ。

 

 いや、別にハプニングを自分から求めてるわけじゃないよ。

 今までの傾向からのこのレアケースに若干驚いたと言うだけ。それに紗凪ちゃんも言ってたけど、たまにはこういう和やかなのも良いものだしね。


 という訳で、閑話休題。


 散歩から帰ってきた私たちは一先ずちょっと休憩してから、みんなで昼食をとっていた。

 今日のメニューは初日にも食べた紗凪ちゃん特製のお好み焼き。もちろん美味しい。そしてコンちゃんもまたお好み焼きを美味しそうに食べていた。

 うん、よろしいよろしい。なにせ今日のこのお好み焼きは「うちの料理の味も舌に憶えさせとかんとな~」と紗凪ちゃんが企画したものだから。美味しそうに人生初、いやきつね生初のお好み焼きに舌鼓を打つコンちゃんを見て、紗凪ちゃんも満足顔だ。


 そして、その昼食も無事に終わり時間は午後へと移っていく。


 午前は『ひなたぼっこルーム』

 午後は『ショッピングルーム』


 当初の予定通りそんなプランが滞りなく進む。


「なら、コンはお留守番やで。できるか?」


『コン! コンコン!』


 頭を撫でながらの紗凪ちゃんのその言葉に利発そうに頷くとコンちゃんはそのままソファへと飛び乗る。

 そしてそのままそこに横になると、『コ~ン!』とまるで「いってらっしゃい」とでも言っているかのように片手をスッと上げた。


 この子、マジで賢い。そして可愛い。

 というか今さらながらきつねとは言えどもコンちゃんは神様に創造された生き物。もしや人間くらいの知性はあるのかもしれない。


 そんな愛くるしい見送りの合図に紗凪ちゃんは「かわええ子やなぁ~」とうっとり顔だ。

 うん、まぁなんども言ってるけど私は紗凪ちゃんが幸せならばそれでオールオッケー。小難しいことを考えるのは二の次三の次だ。


 なにはともあれ、これで『ショッピングルーム』へと行く準備は整った。

 あとは行った後の行動をどうするかだが、


「あの、夜さん」


「なぁに?」


 そこで紗凪ちゃんが話しかけてきてくれる。

 なに紗凪ちゃん? 私は貴女のプランに全力で従うよ!


「やっぱ百合神あいつがあんだけ言うくらいやから、マジで現実世界の店で売ってるもんとかは何でのありそうですよね」


「うん、そうだね。敷地も広いってわざわざ伝えるくらいだしね」


「ですよね~。――で、うち色々と考えてみたんですけど」


「うん」


「やっぱここは女子らしく最初は服とか見に行きません?」


「あ~、いいねぇ♪ やっぱり買い物と言ったらお洋服だよね」


「ですよね! よし、そうと決まれば最初は服のコーナーに二人で行きましょか」


「さんせー♪」


 私の言葉に紗凪ちゃんが嬉しそうに笑う。


 …………さて、どうしたものか?


 そんな中、口で発した言葉とは裏腹に私は心ではドバっと汗をかいていた。


 コンマ数秒の判断で喜びの演技と共に同意を示した。違和感は全くなかったはず。

 これ自体はこの場の判断として間違ってはいないと思う。…この場の判断としてはだが。

 さて、では遅れてやってくる不安はどうしよう?


 ここで私が心中で何と葛藤しているのか解説しよう。

 私は別に服が嫌いというわけじゃない。だが同時に好きなわけでもない。端的に言うとあまり興味が無い。

 そして興味が無い故に、実はよわい二十三になった今でも母さんと幸が選んで買ってきてくれた服をそのまま着ているのだ。


 つまるところ、私は洋服に対する知識が無い。それどころか自分にファッションセンスがあるのかないのかすらわからない。

 それが紗凪ちゃんとのお買い物でどのような影響を及ぼすのか。まぁ普通に考えてマイナスになることはあれどプラスになることはないだろう。


 ふっふっふっ、午前中はあんなに平和だったのに午後は始まる前から波乱の予感がプンプンするね。


「じゃあ、行ってみよっか」


「はい、行きましょ行きましょ」


 そして、不安になり過ぎて逆にテンションが上がってきた私はドアノブに手をかけた。

 最後にチラリとソファのコンちゃんへと目を向ける。


 ――コンちゃん。もし私が何かやらかしちゃったら、その時は帰ってきてから慰めてね。モフモフさせてね。


 そして、私はドアノブを回し『ショッピングルーム』へと続く扉を開いた。


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