Episode-123 『初ペット・関西弁JKの場合②』
「なるほど、コンはメッチャ優秀なんやなぁ~」
『コォ~ン』
椅子に座り百合神が残した紙を読みながら、膝の上に座るコンの頭を撫でる。
遊び疲れたようでコンは休憩中。その間にうちは紙に書かれてる内容を読んどるっちゅーわけや。
ちなみにもう夕飯時なので、夜さんはいつも通り夕食の準備中。
つまり、これは夕食ができるまでの暇つぶしでもあるわけやね。ほんで紙はもう一枚ある、なんや明日新しくできる部屋の説明らしいわ。
「夜さんはこれ読みました?」
コンの説明を読み終えてもう一枚を手に取りながら、台所でフライパンを振る夜さんに聞いてみる。
「うん、読んだよ。どっちもかなり力入ってるみたい」
夜さんの返答に「へえ~」と頷き、うちもまたその紙に書かれた内容をを実際に読み始めた。
『ショッピングルーム』について
・文字通り、買い物ができるエリアとなる『ショッピングルーム』が開放される。
・衣類や装飾品がメインになると予想しているが、食品や娯楽物のコーナーもキッチリ設置してある。
・金額は全て無料ではあるが、あまり豪遊し過ぎると現実世界に戻った際に金銭の価値観がズレる可能性があるので注意すること。
・なお、『ショッピングルーム』の敷地は相当に広大であるため違和感を感じないように常に特別エキストラを店員役お客役でそれぞれ多数配置している。これはゲームなどでいうNPCに該当する。会話は可能なので、困ったときに道を聞いたりすることも可能。
「――こらまた、壮大ですね」
「だよねぇ~。『ショッピングルーム』って言ってるけど説明読む限りではデパートみたいになってるのかもね」
「たしかに。ほんでこれならコンが無理ってのもわかりますね」
「現実のデパートでもきつねを連れて歩いてる人いないしね」
「ははっ、そらそですね」
夜さんの言葉に思わず吹き出しつつ、もう一つの開放エリアの説明へと目を向ける。
ええーっと、はてさてこっちはなんて書いてあるんやろ。
『ひなたぼっこルーム』について
・この百合の箱庭には当然ながら太陽の光は届かない、それは大きな現実世界との違いとなっている。そのためその違いを埋めるために太陽光の当たる『ひなたぼっこルーム』が開放される。
・当然この太陽は私が神の権能で造り上げた疑似太陽ではあるが、本物との違いは人間には全くわからない程だ。実質、この疑似太陽は先日のイベントルーム開放の花見でも使われていた。
「ほぉ~。あんときは深く考えへんかったけど、そういや確かに太陽あったわ」
・ちなみに太陽光――つまりお日様の光に飢えている身体へとそれを補充するために『ひなたぼっこルーム』と命名したが、もう一つ大きな目的として疑似的にではあるが外に出て常に室内にいるストレスを解消するという狙いもある。
・そのため通常時は快晴となっているが、設定を変えることで曇りや雨に『ひなたぼっこルーム』内の天候を変えることも可能となっている。
「いや、それもう『ひなたぼっこルーム』とちゃうやんけ」
そう反射的にツッコミを入れてもうたが、そこであることに気付いた。
説明はそこで終わっている。だが、その後にPSと説明のパソコンで打ったかのような文字とは違い手書きの様な文字で、
・「それじゃあ『ひなたぼっこルーム』と違うやないかい!」とツッコんだだろ(笑) ん? ツッコんだだろ(笑)
と付け足されていた。
ピクンとこめかみが跳ねるのがわかった。
…なんやろ、この感情は?
うちは何一つ間違ったことは言ってへん。こいつはただうちの反応を予測しただけや。そやのに、この(笑)が最後にあることによってまるでうちがアホなことを言ってそれを百合神が自然に小馬鹿にしとるかのようになっとる。
まぁ、トータル何が言いたいかというと、
「ほんっま、ムカつくやつや! なんやねん、あいつ! つーか、そもそも百合神って何やねん!!」
百合神がただただムカつくって話や!
『コンッ!? コォーン、コォーン!』
「ああっ! ごめんな、コン! ついいつものノリでツッコんでもうた。そやったなぁ~、お前膝の上にいたんやもんな~、怖かったな~」
『コォ~ン、コン!』
「はぁ~」
が、そんな怒りもすぐさまペットという存在は癒してくれるらしい。
あかん、すぐさま心が浄化されるのを感じる。これがペットの力…!
「ご飯できたよ~」
「えっ、もう! すんません、なにも手伝えなくて」
「いいのいいの、座ってて。っと、キミも座ってなくちゃダメだよ」
「あっ、こら! テーブルの上に乗ったらあかんで、コン」
『コン?』
そうこうしているうちに夕食が完成してしまったようだ。
今日の夕食は、ミートソーススパゲッティにオムレツ。相変わらず美味しそう。
そしてその匂いに釣られてしまったのかうちの膝の上からテーブルに飛び上がったコンだったが、それを自慢の反射神経でうちは即座に捕まえた。
「ここはご飯食べるとこなんや。だから乗ったらあかんねん、わかったか?」
『――! コン!』
「よし」
まっすぐその眼を見つめてそう言うと、コンはまるでうちの言ってることがわかったかのようにコクンと頷いた。そして、そのまま地面に放すとそこでお座りしたのだ。
賢いなぁ~、こいつ。五歳ぐらいのときのうちよりも賢いんとちゃうか。
そういえば、コンもまだ何も食うてないからお腹は減っとる筈なんよなぁ。流石にうちらがご飯食べとる横でずっとお座りしとるだけいうんはかわいそうな気が――、
「はい、コンちゃんはこれね。百合神様曰く人のご飯食べられるらしいから、同じのつくっちゃった」
『コン!』
「はい、まだ『待て』よ。『待て』」
『コンコン!』
が、そんな凡人の心配など完璧超人の夜さんには必要なかったらしい。
そんなことを言いながら夜さんが当たり前の様にお座りをするコンの前に一人前のお皿を置いたのだ。
さすが夜さん。サラリとコンの分もご飯をつくっとったとは…、できる女感が凄まじいわ。
そして、夜さんに「待て」と言われて待つコンも凄い。
あれ? まずいな、もしかしてこの部屋で一番賢ないのうちなんちゃう? まさかの三番目なんちゃう? いやでも、賢さ順で人きつね人の並びは流石にあかんやろ。
よし、ここは気合いれ直さなあかんな! 立派なご主人にならな!
「よーし、じゃあ食べよっか」
「はい」
『コン!』
「「いただきます」」
『コンコンコン!』
そしてそう決意を一人で固めながら、うちらは初めて二人と一匹で夕食を食べたんやった。




