Episode-120 『初ペット・超清純派女優の場合②』
いやいやいや、これは流石に…ねぇ?
だって一つだけカテゴリ違くない?
百歩譲って『ホワイトリリードラゴン』ならまぁまだ…、いやそれでもおかしいけどでもまだ理解できた。
『神獣――ホワイトリリードラゴン』はまずいでしょ。
だって神獣って言っちゃったら、もう神獣じゃん。神の獣じゃん。
自分でも若干訳の分からないことを言ってるが、そこはご了承願いたい。
つまりは訳の分からないことを言ってしまうほどに衝撃を受けているということだ。
「おい…、なんや一匹だけごっつ強そうなんが混じってるんやけど」
流石に私よりも順応性が高いであろう紗凪ちゃんもこれは見過ごすことはできないらしくさっそく百合神様にそう問いかける。
だが、何故か当の本人は「ん? なんのことだ?」と素知らぬ顔だ。いや、顔は見えないけども。
しかし、それで納得などできるはずもなく、
「何のことや、やあらへんやろ! お前、明らかに地球上に存在しないやつが一匹混じっとるやんけ!」
「そうですよ!」
「? ――! ああ、『神獣――ホワイトリリードラゴン』のことか」
「それや!」
「それです!」
重なった二人の声に百合神様は「やれやれ」と首を振る。
そして
「まったく…。さんざん『神』と話したりしているのだから、今さら『神獣』や『ドラゴン』といったもので驚くとはおかしな話だとは思わんか?」
そう謎の正論っぽい言葉を言ってきた。
…まぁ、確かにそれは言えてるかもしれ――いや、違う違う! 騙されるな、私!
これは今ペットを選んでいるんだ。いくらここが百合神様が管理する百合の溢れた空間という現実離れした場所であろうとも、いくら神が普通にいる世界であろうとも、ペットを選ぶという選択肢の中で『神獣――ホワイトリリードラゴン』が出てくるのはやっぱりおかしい! 絶対おかしい!
あっぶなかった~。あやうく騙されるところだ――、
「…なるほど。そう言われれば確かにそうかもしれへんな」
………紗凪ちゃん?
安心したのも束の間、私の愛するハニーはその説明に納得してしまったらしい。
「ちゅーか、『ホワイトリリードラゴン』って大きさどれくらいやねん?」
「ん? それはだなぁ――」
そして、もうそこは紗凪ちゃんの中で解決してしまったらしく、今度はその詳細を百合神様に確認し始めてしまった。
やばい…、ひじょーによろしくない流れだ。
なんかペット屋さんで店員さんに飼う時の注意点を聞いてるみたいな感じになっていらっしゃる。
…いや、別にいいんだよ。紗凪ちゃんが本当に「うちは『神獣――ホワイトリリードラゴン』が飼いたいんです!」って言ったりしたら私は笑顔で受け入れるよ。
うん、頑張る。愛のためならばその程度全然許容できる。
…でも、私『神獣――ホワイトリリードラゴン』のお世話できるかなぁ? 毎食ご飯あげたり、たまに散歩したりとかできるかなぁ?
なんたって『神獣』だしなぁ。
「――という感じになる」
「なるほどなぁ」
…っとやば。考え込んでいるうちに『神獣――ホワイトリリードラゴン』の詳細を聞き逃してしまった。
いや、でもまだ飼うと決まったわけではないし…。
「夜さん」
「はい!?」
「あー、えっと…。歯切れ悪くて堪忍なんですけど、正直うち的には全員魅力的で選べんくらいです。犬も猫も憧れ的なのはありましたし、きつねもたぬきも個性あっておもろそうやし、ドラゴンも意外と悪ないかなぁと思い始めてます。ほんで、夜さんの希望もあったら聞かせて欲しいなぁ~って思うんです」
「…う」
が、そこで不意に振られた意見に私は言葉を詰まらせた。
私の意見を言うならば一択だ。「『神獣――ホワイトリリードラゴン』は流石にペットって感じはしないし止めた方がいいんじゃないかな~」と言えばいい。そして、紗凪ちゃんのことだ「それもそですね」とすぐ納得してくれるはず。
だが、
「――私もどの子でもいいよ。どの子も二人で楽しく飼えると思うしね」
気付けば私はそう答えていた。
紗凪ちゃんは全員魅力的と言った。すなわち甲乙つけがたい存在であると。ならば、そこに私の意見は挟みたくない。
せっかくペットを飼うなら、本当に紗凪ちゃんが選んだ子の方がいい。たとえそれが『神獣』であろうとも!
「う~ん、そっかぁ。――よし、もううじうじ悩んでもしゃあない! ここは運を天に任せましょか」
「え?」
そう覚悟を決めた私だったが、事態は思わぬ方向へと進行した。
紗凪ちゃんが五枚のカードを手に取ってシャッフルし、そのままテーブルの上にに裏向きに置いたのだ。
…これはまさか、
「こっから一枚引いて、それで決定ってことにしましょか」
そして、紗凪ちゃんの口からペットの選出方法が告げられた。
これは予想していなかった展開…。だけど、本当に平等に魅力的ならば理に適った方法だ。
同時にそれは五分の一の確率で『神獣――ホワイトリリードラゴン』がペットになることが決定したということも意味していた。
いや、今さらそれを言ってもしょうがない。さっき覚悟は決めたはずだろう。
あとは何が来ても受け入れる聖女の様な心持ちで事の行く末を見守ろう。
「りょうかい」
紗凪ちゃんの言葉を了承し力強く頷く。
「じゃあ、いきますよ」、そして紗凪ちゃんはその中の一枚を手に取ってひっくり返した。
「「――――!」」
そしてそこに書かれていた動物の名前は、
「――きつねや♪」
「…ふぅ~~」
紗凪ちゃんが嬉しそうにそう言う、傍らで私は心底深い息をついていた。
よっ、よかった~。
本能で安心してしまった私をどうか許してくださいね。未だ見ぬ、そしてこれからも見ることはないであろう『神獣――ホワイトリリードラゴン』よ。
…ていうか、私この短時間で何回『神獣――ホワイトリリードラゴン』って言ったんだろ?




