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Episode-119 『初ペット・超清純派女優の場合』


 『部屋+1(好きなようにカスタム可)』


 これは中々にいいと思う。

 残り約十一か月の間、行動エリアが常に一つ増えるという訳だしね。

 しかも、おまけの様についている(好きなようにカスタム可)の言葉も中々バカにできない。おそらくカスタムと言ってもこの空間でのカスタムだ。好きに家具を並べるとか、壁紙や床を好きに張り替えられるとかそういう次元ではないだろう。文字通り、完璧に私達の好きな部屋が新たに一つ造れるはずだ。


 『イベントルーム創造権利×1』

 

 同じくこれも中々に豪勢だ。

 イベントルーム創造となると、この前のお花見の様な季節限定イベントを一つ新たに創り出すことができるということだろう。つまり、私と紗凪ちゃんの距離をグッと縮める様な独自のイベントを考え実行することができれば圧倒的な力を発揮することも可能になるということだ。

 だけど、部屋+1と違って恒久的に扱えないのがデメリットではあるかな。


 百合神様から提示されたカード。

 それを右から眺め、順番にそのメリットを分析していく。


「――!!」


 しかし、そんな分析は次に私の目に映ったものを見た瞬間に全て塵となって消え失せた。

 私の目に映ったのは三枚目のカードの内容――ではない。それをキラッキラに輝いた瞳で見つめる紗凪ちゃんの姿だった。


「あっ!」


 そんな私の視線に気づいたのか紗凪ちゃんはハッとして我に返った。

 そして、


「あの~…、夜さんはどれがいいと思いますか?」


 紗凪ちゃんには珍しくどこか歯切れの悪い声でそう尋ねてきた。

 それに対し、


「個人的な意見だけど、私はペットがいいと思うかな」


「――!! ですよね!!」


 もう先程の考察などガン無視で私はそう答えた。

 

 私にとって何より優先されるのは紗凪ちゃん。

 そんな紗凪ちゃんのパッと花が開くような満面の笑みを見られただけで、他二つのメリットなど遥かに超越してしまう程に私は幸せな気持ちになれるのだ。


 こうして、宿泊学習の成功報酬は一瞬で『ペット』に決定した。



「ちゅーわけで、ペットでよろしゅう頼むわ」


「ふむ、あいわかった。しばし待て」


 紗凪ちゃんの声に頷くと、ピッと壁に投射されたモニターが消える。

 何か作業があるのかな? まぁ、ペットって言うことはこの空間に新しい生命を生み出すってことでもあるわけだしね。

 …あれ? いやでも、私達みたいに現実世界から連れてくるってパターンもあるのか。


「いや~、意見一致してメッチャ嬉しいです♪ うち実はむか~しからペット飼ってみたかったんですよ」


 そんなことをふと思っていると、もうめっちゃくちゃ上機嫌なのがヒシヒシと伝わってくる紗凪ちゃんが笑顔で話しかけてきてくれた。

 う~ん、即決でペットを選んだ甲斐があったってもんだ。

 実質、私にとっての宿泊学習の報酬はこの紗凪ちゃんの幸せそうな笑顔だね。いや~、私も幸せだ~。


「へぇ~、飼ったことなかったんだね」


「はい、何回か親に頼んだりはしたんですけどねぇ。結局一度もOKはでぇへんかったんですよ」


「そっかぁ。ちなみに私もペット飼ったことはないかな」


「えっ、意外!」


「そう?」


「はい、夜さんの家とかでっかいフッサフサの犬とかいそうなイメージありましたわ」


「あー、なるほど。でもうちは父も母も仕事人間だったからね、飼ってもあんまり可愛がれないから飼わなかったのかも」


「はぁ~、いろいろ事情があるもんですね~」


 そして、そんな感じで紗凪ちゃんとペット談義をすること少々。


「――待たせたな」


 再び壁にモニターが映し出され、百合神様が姿を現した。

 そしてその再出現に私たちが何かを言う前に、


 ――パチン。


 と指が鳴らされ、もう昼食を食べ終えた私と紗凪ちゃんが座るテーブルに数枚のカードが裏向きで落ちてきた。

 一、二、三、四、五。五枚だ。


 …というか今日は百合神様、指パッチンとカードを凄い使うな。

 マイブームだろうか? それともエンターテイナーに目覚めたのだろうか?


「そこに先程私が神の権能により分析した『お前たちと相性のいい動物』五選の名前が書かれている。その中から好きな動物を一つ選ぶといい。それが今日からお前たちのペットとなる」


「ほぉ~、至れり尽くせりやな」


「あの~。仮にもしグッとくるのが無かったらどうするんですか?」


 とりあえず、気になったので聞いてみた。

 もちろん、紗凪ちゃんのためにね。気に入った動物さんがいなくて、その中から選ぶんじゃテンションも下がっちゃうだろしね。


「まぁ、無いと思うがもしそうなれば致し方ない。もう一度選出し直そう」


 なら最初から好きな動物でいい気もするが…、まぁ色々あるのだろう。

 それにこっちはご褒美をもらう立場。あまり色々注文をつけるのも失礼な話だ。まずはなんて書いてあるのか確認してみないとね。

 「なるほど、了解です」、私はそう了承を示して紗凪ちゃんに倣う様にテーブルの上のカードへと目を向けた。


「じゃあ一個づつ捲っていく?」


「そですね」


 紗凪ちゃんと話し、まずは一番手前のカードの端をつまんでひっくり返した。


『犬』


 メチャクチャ簡潔な文字がそこには書いてあった。


「ベタですね」

「ベタだね」


 犬種とかどうなるんだろ?

 そう疑問にも思ったが、まぁとりあえずはその確認は後回しでカードを全部めくってみよう。


 というわけで二枚目。


『猫』


「またベタですね」

「またベタだね」


 二連続のベタ。

 あれ? 意外とオーソドックスな流れだ。


 続けて三枚目。


『きつね』


「おー、ここで変化球や」

「たしかに。でも、きつねか~。あんまりペットとしてのイメージは湧かないね」


 三枚目にして予想外のカードに二人して少し盛り上がる。

 そしてこうなってくると、残り二枚が俄然がぜん気になってくる。


 ノリに乗って四枚目。


『たぬき』


「化かし合いやん」

「そだね…。それにしてもたぬき? きつね以上にイメージ湧かないね」


 が、ここで私はふとあることに気付いた。

 犬と猫。そしてきつねとたぬき。反対とは言わないが比較されることが多い動物がセットできている。

 

 それ故に最後の五枚目が全く予想がつかない。


「あと一枚。なんだろうね?」


「『鬼が出るか、蛇が出るか』ってやつですね」


「鬼も蛇も出た時点で選考外になるけどね」


「あははっ、そらそや」


 そして、最後の五枚目のカードを私はめくった。


『神獣――ホワイトリリードラゴン』


「「……………」」


 そこに書いてあった文字を読んだ瞬間に、私と紗凪ちゃんはポカンとするしかなかった。

 

 なんか鬼よりも蛇よりも遥かに強そうなやつが出たんですけど?

 あれ? 今ってこれペットを選んでるんだよね?

 

 ――ていうか、『神獣――ホワイトリリードラゴン』ってなんだよっ!?


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