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Episode-114 『ようやく揃った・超清純派女優の場合』


「――てなわけで、ここで一年鍛えてこいつをアシスタントに雇うことにした」


「はぁ…」


 まさかの二人一緒での登場に呆気にとられた私と紗凪ちゃんに、二ノ前先生はメチャクチャ簡潔に昨日の夜にあった出来事の顛末を説明してくれた。

 

 そりゃ、もう「はぁ…」としか言えませんわ。

 いやだって、なにそれ!? 一夜にして私の二日分の働きを圧倒的に上回ってるじゃないですか!? それも当の本人が!! あれ? 私の存在意義とは…?

 なんか紗凪ちゃんに慰めて貰ってお気楽にぐーすか寝てた私が馬鹿みたいなんですけど!!


「まぁ、あれやな。こっちとしても理由はどうあれ二人が仲よーなってくれたのは素直に嬉しいですわ。とりあえずおめでとさんです」


 が、そんな心の声で器の小ささをモロに露呈する私とは違い紗凪ちゃんの方は最初こそ驚いていたものの、結果的に二人の関係がグッと縮まったことを知りとても嬉しそうに手を合わせて笑顔を浮かべていた。

 まるで聖女の如し。というか後光が見える。なんて尊いの紗凪ちゃん。

 そしてそんな紗凪ちゃんを見ていたら私も心も浄化されるというものだ。


「同感です。やはり、外野がどうこうするよりも結局当人たちが近づけば関係は一気に変わるということですね。自分のことの様にとても嬉しいです」


「…なんかお前、相方と一緒のスタンスっぽくしてるけど、さっき話聞き終えたとき普通に「はぁ…」て『なんじゃそりゃ?』的なリアクションとってたぞ」


「…はーて、何のことでしょう?」


 徹夜しているとは思えぬ二ノ前先生の鋭い指摘が飛んでくる。

 ここはこれ以上追及されると良いことはない。危機感知能力でそう瞬時に察した私は、二ノ前先生から彼女とは異なり徹夜の影響がもろに出ている鬼村ちゃんへと視線を移した。

 鬼村ちゃんは二ノ前先生が説明を行っている間ずーっと机に突っ伏せて寝ぼけまなこを浮かべていた。だが、眠る気はない様で夢に行く一歩手前で何とか堪え続けているようだ。


「鬼村ちゃん、眠気覚ましに熱いコーヒーでも飲む」


「――! …あっ、すんません。じゃあ頂きます」


「こいつ苦いの無理だから、砂糖とミルク必要らしいぞ」


「は~い、…っていうか昨夜だけでそんなことまで知ったんですか?」


「私もたまに作業の休憩時間とかにコーヒー飲むしな。昨日、そんな話になったんだ」


「へぇ~」


 そう納得しながら、キッチンへと戻っていく。そう、そこそこの時間中断して忘れそうになっていたが今は絶賛朝食の準備中なのだ。それも昨日の盛大なやらかしを少しでも取り戻そうと朝食とは思えない程にメニューは豪華につくっていた。

 だが「話の種になればな~」的な意味も込めて作ったこの豪華すぎる朝食も、鬼村ちゃんと二ノ前先生の関係が良化した今となってはただの豪華すぎる朝食でしかない。

 …まぁ、それはそれでいいかもね。


「紗凪ちゃん、私が言ったことなのに頼んで悪いけど鬼村ちゃんのコーヒー淹れてあげてくれない」


 気持ちを切り替えて朝食準備に戻るため紗凪ちゃんにそうお願いすると、


「りょうかいですっ!」


 ビシッと敬礼して、元気に引き受けてくれた。

 あ~、紗凪ちゃん可愛い。ホント可愛い。四六時中可愛い。

 その仕草に活力を貰って、意気揚々と鍋の前に戻ろうとした私だったがそこで「夜さん夜さん」と再び紗凪ちゃんがテクテクとこちらに近づいてきた。


「? どうかしたの?」


「いや、あれですね。朝ごはん早起きして豪華につくってよかったですね」


「ん、ああそうだね。二人が仲良くなったお祝いにピッタリってこと?」


「まぁ、それもあるにはあるんですけど。もう一個の方でもあります。だってほら、ようやっと全員・・揃ったやないですか♪」


「――あ」


 その紗凪ちゃんの言葉で私はようやく彼女が何を言いたいのかを察した。


 初日の昼食は、鬼村ちゃんが部屋に逃亡して三人だった。

 初日の夕食は、二ノ前先生が部屋で作業をしていて三人だった。

 二日目の朝食は、二ノ前先生が寝ていて三人だった。

 二日目の昼食は、個別攻略作戦中だった。

 二日目の夕食は、二ノ前先生が倒れて三人だった。


 とまぁ、こんな感じで大半は二ノ前先生不在によるものだが私たちはこの宿泊学習中に四人揃ってご飯を食べるようなことは一度もなかった。

 それが三日目の朝食にしてようやく四人全員が揃ったのだ。これは中々に劇的ではないだろうか。

 確かにこれなら紗凪ちゃんの言うように朝食を豪華にした甲斐があったというものだ。

 

「――そうだね」

 

 まったく、紗凪ちゃんに教えられてばっかりだな私は。もっと精進せねば。


「おーい、白目をむきかかてるぞ」


「…そりゃ、身体能力の鬼みたいなやつと半日スポーツ三昧した後に徹夜で不慣れな漫画作業ですしね。白目の一つくらいむかしてほしいって話ですよ…」


「ハハッ、そりゃそうか。でも、あれだ。さっきの見た限りじゃお前結構センスあるな。元の空間戻ったときの鍛えがいがありそうで私は嬉しいぞ」


「…それはまぁ、そう言ってもらえればアタシも普通に嬉しいです…けど。…でも、戻ったらマジで一日ガッツリ寝かせてください…ね……」


「って、おい!? 寝るな! コーヒーまで耐えろ、桃!」


 紗凪ちゃんとキッチンに立ち、テーブルに並んで座りながら初日では考えられないくらいに親しそうに会話を繰り広げるが二人を眺める。

 なんというか、感慨深い光景だ。


「あれですね。なんやかんや色々ありましたけど、百合神の依頼を引き受けてよかったですね」


「――うん、よかったね」


 そして、私達はあの二人負けない様に「ニシシ」と仲良く笑って、宿泊学習の最後を飾る朝食の仕上げに取り掛かった。 


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