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Episode-13 『初お風呂・関西弁JKの場合』


「ふっ、ふふふぅ~ん」


 上機嫌に鼻歌を自然と歌ってまう。

 現在、うちはお風呂の扉の前に座って虹白さんを待っとる最中。

 待ち遠しい…とはさすがに言いすぎな気がするけど、それでも楽しみであるには違いない。


「ん? でも冷静に考えたらうちみたいなもんが虹白さんの裸とか見てもええんやろか?」


 不意にそんなことを思う。

 なんや、勢いで自然に言ってもうたけど今になってちょっとそこが気になる。

 友達とかならそりゃ当然そんなこと気にならへんのやけど、虹白さんは女優さん。それも恐らくいま日本で一番人気があるだろう女優さんや。

 

 う~ん、今さらやけど我ながらごっつガサツやな。

 まあ、こんなしょうもない考えなんて虹白さんは思いつきもしないんやろうけど…。

 庶民の勝手な妄想やろな~。

 まあでも、そんなこと気にしてもしゃーないわな。虹白さんもまったく気にしてへんみたいやし普通にお風呂入る感じでええやろ。


「あっ、音木さん」


 自分の中で結論を出したところで、ドアの開く音と共にプライベートルームから虹白さんがちょこんと顔を出す。

 そして、うちがここに座ってるのを見ると小走りで駆け寄ってきてくれる。


「ごめん、遅くなっちゃった」


「いえいえ、うちが勝手に早く来てもうただけですよ」


 これはホントにその通り。

 虹白さんは十五分って言うたのに、うちは五分くらいで準備済まして出てきてもうたわけやし。

 我ながら、子どもっぽいわ~…。


「んじゃ、行きましょか!」


 ちょいと恥ずくなって、急ぐようにお風呂の扉へと手をかける。

 そしてガラッと開くと、「お~」と後ろから虹白さんの歓声が聞こえてきた。

 

「これは…確かに凄いね」


「ですよね、少なくとも二人暮らし用のお風呂とは考えられへんですよね。あっ、あっちに着替え用のカゴありましたよ」


 そのまま、脱衣所の着替えカゴのところまで歩いていく。

 さっき靴下脱いだままにしとるから、場所はわかりやすいわ。

 

「んじゃ、ササッと着替えて一番風呂といきましょか」


「うぇっ!?」


「!? どないしました!?」


 何の気なしにTシャツを脱いだ瞬間に、隣の虹白さんが悲鳴に似た謎の声をあげる。

 すぐさま隣を振り向くと、何故かそこに虹白さんの姿はない。

 

 ………え?

 そして、少し遅れて気付く。

 何故だか虹白さんはうちと反対方向を見て床に倒れて丸まってはった。


「ちょ!? ほんまにどないしたんですか!?」


「――いやっ、あの…! あれだ! ちょっとなんか足ぐねっちゃったみたい!」


「え、ただ立っててですか?」


「…あれ、あの…靴下脱ごうとしたらさ」


「あー」


 足ちょっと上げたときに捻ってもうたんやろか。

 おっちょこちょいやな~。

 って、そんな呑気に言ってる場合とちゃうな。


「とりあえず座って冷やしましょ。肩貸しましょか?」


「いや、それはいいや。というか別にそこまで重傷じゃない気がする! 多分、三分ぐらいすれば治るタイプのやつだと思う!」


「いやいや、そんなタイプの捻挫なんてあるんすか?」


 いまいち釈然とせーへんな。

 いや、でも当の本人が言うんならそうなんやろけど。嘘つきはる理由なんてもちろんないやろし。


「んじゃ、うちもちょっと待ってますね」


「――うーんと、あれなら音木さん一足先にお風呂行ってていいよ」


「いやでも、虹白さん置いて一人で行くんは…」


「全然ぜーんぜん気にしなくていいよ。もう、ほぼ痛み収まりかけてるからさ。すぐ後から行くよ」


「そですか?」


 うーん、やっぱちょいと怪しいな~。

 何故かずっと顔をこっちを向けへんのも気になるし。

 

 ――はっ!

 そこで気づいた。

 もしかして虹白さんうちに気ぃ使ってくれてるんやろか。

 なるほど。うちがずっとはよお風呂入りたいオーラを出しとるのを感じ取って、それでそう言ってくれとるんやな。それならば説明もつく。

 

 うーん、やっぱ大人の女性って感じやな。

 うちみたいな小娘にそんな気ぃ使わんでもよろしいのに。

 だからこそ、うちはその厚意を蔑ろにしたらあかんか。でも、同時に甘えっきりってのもまたあかんやろ。


「ちょっとだけ、足見してもろてええですか?」


 回り込むように虹白さんの正面へと移動し、「ええっ!?」っと驚きの声を無視して軽くその足に触れる。


「んー、腫れとかは全くありませんね。これも痛ないですか?」


「うっ、うん」


「なるほど、ほんまに軽く捻っただけみたいですね。なら一安心ですわ」


 さすがに痛みを我慢してまで、気を使われるわけにはいかへん。

 でも、考えすぎだったみたいやな。これで一安心。

 再び自分の着替えカゴの前まで移動し、残っていた服と下着を脱ぐとタオルで軽く体を隠す。


「んじゃ、お言葉に甘えさせて貰いますね。お先に湯船で待ってますわ」


 そして、「もし痛みが出てきたら呼んでくださいね」と一応最後に虹白さんにそう伝えてうちはお風呂場の中へと歩き出した。

 背中から虹白さんの「は、はわぁ…」という気の抜けたような声が聞こえた気がしたけど気のせいやろ。


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