Episode-104 『脱衣と心配(表)・関西弁JKの場合』
「ありゃ?」
運動場でのスポーツ合戦を終えて、桃と二人でお風呂場へとやってきた。
あとはさっさと汗まみれの服を脱いでお風呂へ直行…と思うとってんけど、そこでうちはあるものを発見してしまった。
「脱いだ服がカゴに入ってあるやん」
「ん? あー、ホントだ。…てことはこれって」
「当然、夜さんと桃の相方さんやろな」
こりゃまた奇遇やな。
たしか夜さんの話では、メインルームであの須能さんいう人を説得する計画やったらしいけど――なるほど、そういうことかいな!
お風呂いうんは誰でもやっぱ気が緩む、つまりメインルームで50パーくらい説得してその後はこのお風呂で完全にラストスパートをかけるって作戦やな。
――いや、なんでもできる夜さんのことや。メインルームでもう完全に説得を終えてて、このお風呂は疲れを癒す為だけの目的ってのも十分あり得るな。
どっちにしろ、凄いで。流石ですわ、夜さん♪
そう相変わらずの仕事の速さに感心しながら、夜さんたちのところから少し離れた着替えカゴの前まで移動する。桃も同じように移動してうちの横の着替えカゴを手に取った。
「今さらやけど絶対こんなにカゴいらんよな。何で二人暮らしやのに温泉旅館くらいあんねんって話や」
「それは確かにな。数えたことはないけど100人分くらいあるだろこれ」
「せやな~」
そう何気ない会話をしながら上着を脱ぐが、
「うおっ…!?」
とそこで横から桃が声を上げた。
見ればこっちを見ながらビックリ顔を浮かべとる。そして、その視線はうちの顔よりも少し下に向いとるわけで、
「運動してるときから薄々感じてたけど――お前けっこう胸でかいな」
何故か感心した様な声でそう言ってきた。
「せやんなぁ~。自分で言うのも何やがそこそこ発育ええねん」
「すげーな、同い年とは思えない」
「……せやなー」
そして。うちもまた同じく上着を脱いだ桃の上半身を見ながら感想を口にした。
…うん、まー、なんや…。
うちとしても運動してるときから薄々気づいとってんけど…、こいつ胸無いなぁ。俗に言う断崖絶壁ってやつやん。
「正直運動中は『もしやこいつさらしでも付けとんのやろか?』と思うとってんけど、素でそれやったんやな」
「…お前はオブラートに包むことを知らないのか?」
「ハハッ、堪忍してや。うち結構ガサツやねん。特に同い年にはな」
「なんだよそりゃ…。ったく、はぁー」
「こらこら溜め息はあかんで、幸せ逃げてまうやろ。――あと、ちょっとそのおっぱい真横から見てもええか? 起伏がどんな感じになっとんのか知りたいねんけど」
「いっ、いいわけねぇだろ! ぶっ飛ばすぞ!」
「ハハッ、冗談や冗談。なんや学生女子が一緒に風呂入る言うたらこういう流れが一応鉄板みたいなもんやろ?」
「そうなのか? 同い年のやつと一緒に風呂なんて入ったことないからわからねぇけど」
「ありゃ、そうなん? まぁ、うちもぶっちゃけそんなないけどやな」
「――ふっ、ふふっ。なんだそりゃ」
桃とそんな風な中身のない話を繰り返しながら、同時に服を脱いでいく。
今さらながらやけど、個別攻略作戦こっちはもう完璧に完了やな。やっぱ同い年の気のいいやつとなら一緒に遊んでたら自然と仲良うなれるもんやで。
…ん、そういや夜さんとあの漫画家先生も同い年やったよな。ならやっぱりもうあの二人も打ち解けとるパターンの可能性が高いやろな。場合によってはこのお風呂場で桃と漫画家先生を引き合わせられるやん。
ふとそんなことを思う。なんやかんやで、ええ感じの流れやん。
ほんで、そうこうしている間にうちも桃も服を脱ぎ終えてお風呂に向かう準備は完了していた。
「さてと、ほならお風呂にいこか」
「ああ。――っと、いやちょっと待ってくれ」
しかし、二人とも裸にタオル一枚の格好になってお風呂に向かおうとしたところで、急に桃がそんな声と一緒にうちの腕を掴んだ。
「ん? どないしたん?」、そう聞くと「いやぁ」と桃が歯切れが悪いような声で桃が苦笑いを浮かべる。
「…よく考えたら今お風呂に二ノ前先生に加えて虹白夜さんがいるんだよね。なんかそれ考えたらメッチャ緊張してきたんだけど」
「いや、女同士で何を言うてんねん」
「女同士でもだよ! 紗凪は緊張とかないの?」
「うち? うちは――」
「いや、あるわけないやろ」と言おうとしたんやけど、そこで言葉が止まった。
確かによー考えてみたら初日に夜さんと一緒にお風呂入ったときに全く緊張してへんかったとは言えへんかもな。
そもそものぼせて気絶した夜さんを運ぶときとか、心臓バクバクしとったしな。
…というか、冷静に考えたら初日以来で初めてやな。夜さんと一緒に風呂入るの。
あれ? あの時は湯船に浸かった時点では特に緊張とかは無かったけど、今回も別に大丈夫…よな?
うん、せやせや。あの裸の夜さんを運んだ時に意識してもうたのは不可抗力みたいなもんやろ。流石に今回まで前回のあの緊張を持ち越して、それどころか今度は一緒にお風呂に入るだけで緊張してまうようなことは――。
「――紗凪!」
「おおっ、ビックリした!? なんやねん急に、驚いたわ!」
「いや、驚いたのはこっちのセリフだよ。急に無言になるんだから」
「…え? うちそんな無言になってた?」
「まぁ、五秒くらいだけどな」
「あー、いやすまん。ちょいと唐突に考え事や。…ほんでこれはうちの考え事にも自分のさっき言うとったことにも言えるけど、何事もジッと考えるよりもまずは行動してみるもんや」
そう言うと「え?」と困惑する桃の手を引きお風呂へと進んでいく。そやそや、うじうじ考えるよりまず試してみるのがうち流や。
そしてガラッとお風呂の扉を開けて、
「おじゃましま~す♪」
そうできるだけ陽気に中にいる二人に挨拶をした――のだが、
「ありゃ?」
「え?」
お風呂場の中の様子を見て、うちと桃の口から出たのは疑問の声やった。
何故なら、
「あれ? 二人ともいーひんやん?」
お風呂場の中には人っ子一人いーひんかったんやから。
あれ、脱いだ服あったよな? なんでやろ?




