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Episode-103 『名前と言葉遊び・超清純派女優の場合』


「どこが、と言われて一番に思いつくのはやっぱりネーミングセンスですね」


「は? なんだそりゃ?」


 私の指摘に言葉通り訳が分からないといった表情で二ノ前先生が首を傾げる。

 ――っと、危ない。その疑問に答えようと二ノ前先生の方を向いたことでちょっと身体が見えそうになっちゃった。

 紗凪ちゃん程の破壊力は無いといえども、流石に一糸まとわぬ姿の二ノ前先生の身体を間近で見るのは目に毒だ。それ故に初日に紗凪ちゃんとお風呂に入ったとき同様に私は二ノ前先生と並んで湯船に浸かりまっすぐ前を見ながら、改めて疑問に答えるため口を開く。


「ここにきて、本名を知って気付いたんですよ。二ノ前ユキって名前は本名を使ったアナグラムですよね」


「――まぁな」


 私の言葉に一瞬ハッとした様に間を置くと、そう二ノ前先生が肯定する。

 

「須能一、言うまでもなくあなたの本名です。これを逆さまにすると、一須能。一と書いて『にのまえ』と読む苗字があるし、すのうはsnow――つまり『雪』。これを合わせて二ノ前ユキって感じでしょう。なんかロマンチックですよね」


「みなまで言うな、こっぱずかしい。いいだろ別に、考えたの十代前半なんだから」


「いや、別にまったくもって責めたりとか茶化したりとかしてませんよ」


 そう言いながらチラリと横目で見ると、自らのペンネームの由来を解説されて少し恥ずかしかったのか二ノ前先生は軽く眉をしかめながら口元まで湯船に浸かっていた。

 …少し可愛い。まぁ、紗凪ちゃんの方がもっと可愛いですけどね!


「それが私と・・全く同じつけ方だったからピンときたんですよ。同時に『同じ考え方だ~』とちょっと感慨深く思ったりしました」


「同じ?」


「ええ」


「それはお前の芸名も同じ様な言葉遊びでつけたってことか? ――あ」


 そこまで言ったところで二ノ前先生も気づいたのだろう。そんな声を上げる。

 うん、やっぱり鋭いですね。自分で言うのもなんですが結構トリッキーなつけ方してると思うんですけどね。


「望城レイン。反対にしてレイン望城。望城もちじょうを二つとも読み仮名を変えて更にひらがなにすれば、『レインぼうしろ』。レインぼうを無理やり変換した『rainbow』と残った『しろ』で虹白ってことか」


「正解です♪ …あと確かに解説されるとこれ恥ずかしいですね」


 自分でわかっているのに、他人に改めて言われると謎の羞恥心が芽生える。

 しかもー、二ノ前先生と違って私の場合これ考えたの声優活動を辞めた後だから二十代なんだよね。普通に数年前なわけですよ。

 つまり十代前半の二ノ前先生と二十代前半の私の思考回路は同じってこと? 

 …よし、これは二ノ前先生には黙っておこう。


「うむ、私の羞恥を理解できたようだな」


 そんなダブルの意味で恥ずかしくなっている私を見て、シングルの意味で恥ずかしがっていると思っているであろう二ノ前先生が満足げに頷く。

 薄々感づいてはいたけど、意外と単純だなこの人。

  

「ん。じゃあ夜はどこからきたんだ」


「あー、それは自分で一からつけました。語呂が何となくいいなぁ~って感じましてね」


「ちなみに望城レインって本名なのか?」


「いえ、そっちも芸名ですよ。お母さんが考えてくれました」


「ふーん。――あっ、そういやお前と一緒にいたあの面白いメイドは元気か?」


さちですか、メチャクチャ元気ですよ。ここに来る前日も仕事場に一緒に行きましたし」


「…今さらながら、職場にあんな本格派メイド連れてくるのって世界中探してもお前だけだろうな。私でも見たとき相当驚いたんだから」


「いや~、私も浮いてるってのは解ってるんですけどホント子供のころから一緒にいるんで出かけるときは幸がいないといまいち落ち着かないと申しますかね。あと両親も未だに絶賛過保護中ですし。そういう二ノ前先生こそ、あの面白い担当編集さんは今でもそのままですか?」


「今はもう変わったよ。そして、どういう因果かあいつの妹が同じ会社に入社してな。それが今の私の担当編集だ」


「えっ、何ですかその漫画みたいな展開!? 漫画家さんは私生活も漫画じみてるんですか!?」


「いや、お前の私生活の方が万倍漫画じみてるだろうが!」


 そして、私達はいつのまにやらここに呼び出された条件を考えるという話からメチャクチャ脇道にズレてそんな昔話に花を咲かせ始めていた。


 ――ガチャ。


「ふぅー、改めてやけどええ汗かいたなぁ!」


「あー、マジで早く風呂に入りたい!」


 メインルームから脱衣所のドアの開閉音と共に二人の女子高生の声が聞こえてきたのは、そんな時のことだった。


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