Episode-101 『純愛オブ純愛の証明・超清純派女優の場合』
さてと…。
その場のノリで二ノ前先生のお風呂に同行を願い出た私であったが、すぐにとある不安を感じていた。
――憶えているだろうか、私がこの空間に来た初日に紗凪ちゃんとのお風呂で見せてしまった醜態を。
紗凪ちゃんの上半身下着姿を見ただけで奇声を発し足を挫いたふりをして、湯船で肩が触れただけで内心大騒ぎ、仕舞いには転びかけたところを紗凪ちゃんに受け止めてもらった際に触れた上半身の柔らかな感触で鼻血出血+気絶のコンボ。
今思い出しただけでも顔が熱くなりつつも肝が冷える程のやらかしだ。
が、ここで一つ疑問が生まれる。
『あの時、私があそこまでの反応を見せてしまったのは果たして相手が紗凪ちゃんだったからなのだろうか?』、という疑問だ。
勿論、私は紗凪ちゃんが好きだし、紗凪ちゃんに恋をしている。これは疑いようもない事実だ。
しかし、恋とその…なんと言うか、相手をそういう目で見てしまうのはまた別問題と聞く。
つまり、もしかしたら私は相手が可愛い女の子ならば普通にあの時の様にテンパってしまうのではなかろうか、と不安なのだ。
その上、これまた厄介なのがこの二ノ前ユキというお方――顔立ちは普通に整っているのだ。おまけにスタイルもそこまで悪い訳ではない。
そのため『相手が可愛ければ』という条件には当てはまってしまう。もし、その不安が的中してしまえば、
――いや、でも大丈夫、大丈夫だ。
そう考え弱気になりかけたところで、邪念を振り払うように自分のほっぺをパチンと軽く叩く。
私の恋と愛は本物だ。
こんなもので、揺らぐほどにチープなものでは断じてないはずだ。それをここで実際に体感し証明しなければならない。
「おい、望城どうした?」
そこで、勝手に私の中でこんなもの呼ばわりにされてしまっている二ノ前先生から声がかかる。
ちなみに今の私たちがいるのは、脱衣場。
まさにお互いに衣服を脱ぎお風呂へと向かう一歩手前という訳だ。
「あっ、いえ…。ちょっと考え事を」
そんな二ノ前先生に煮え切らない声でそう返すと、彼女はそもそもあまり興味がないのか特段気にした様子はなく「いや、湯船につかってから考えればいいだろ」とだけ言うと自身の上着へと手をかけた。
のだが…、
「……おい」
「はい?」
「いや、『はい?』じゃなくて。…なんで見てんだ?」
ちょうど下着がギリギリ見えないぐらいの位置まで上着を上げたところで、動きを一時停止して私にそう声をかけてくる。
「あっ、お気になさらず」
「気になるんだよ…! なんの視線だよ、お前も脱ぎゃいいだろうが」
「いやいや、本当お気になさらずに」
「…意図が読めなすぎて非常に不気味なんだが」
そう言いつつも「はぁー、まぁいいか」と溜め息一つと諦めの言葉一つを吐いて二ノ前先生は停止していた動きを再開させ、上着を脱ぎ捨てる。
上半身下着姿となった二ノ前先生。意外…と言ったら失礼だが、身に着けている下着は地味という訳でもなく派手という訳でもない普通に可愛らしいオーソドックスな感じ。
「なんというか、普通に可愛らしい下着ですね」
「凝視の次はそれか…。一応言っておくが普通にキモいぞ」
「あっ、いや別にそういうあれじゃなくて普通の感想ですよ」
「…まぁ別に何でもいいけど。あとこれは私の趣味じゃないぞ、うちの母親のセンスだ」
「はい?」
唐突に出てきた母親というワードに思わずポカンとした声を出してしまう。
すると、二ノ前先生はめんどくさそうに「はぁー」とため息を吐きながら、
「私は身に着けられりゃなんでも構わんのだが、うちの母親が『一応若いんだから』とか『一応女の子なんだから』とか『将来的に必要だから』とか色々言って、定期的に衣類一式送ってくんだよ。おかげで家の服はほぼ全て母親の贈り物だ」
そう説明してくれる。
めんどくさがりながらもキチンと説明してくれるところに、いい人オーラが出てるね。
「いいお母さんじゃないですか♪」
「――ま、世話にはなってるな」
そう言いながら、今度は下を脱ぐ二ノ前先生。
そして、上下下着姿となった二ノ前先生を前に私も先程の疑問の答えを確信を持って得ることができていた。
『あの時、私があそこまでの反応を見せてしまったのは果たして相手が紗凪ちゃんだったからなのだろうか?』
その答えは――YES!!
何故なら、あの時の紗凪ちゃん以上に露出の多い格好をしている二ノ前先生を前にしても私は奇声を上げて足を挫いたふりなんてしていないから。
うん、全然大丈夫。これにて証明完了。やはり私の恋は純愛オブ純愛だったのだ。
「ふっふふ~ん♪」
そして、そうと決まればもう心のつっかえは完全に消え失せた。
いや~、私も捨てたもんじゃないですね、これは。私はやっぱり紗凪ちゃん一筋だよ~。
そうさっきとは打って変わって上機嫌になり鼻歌を歌いながら隣の二ノ前先生に習うように服を次々脱いでいく。
流石の二ノ前先生も再びの私の変わり身にはツッコミを入れる気も起きないのか同じく残った衣服を脱ぎ去っていく。
「じゃあ、行くか」
「あっ、待ってくださいよ」
そして、お互いに一糸まとわぬ姿となった私と二ノ前先生はタオルだけを持ってお風呂場へと歩き出した。
脱衣所からお風呂場へと繋がる扉を前を歩く二ノ前先生が開け、後ろを歩く私が再び閉める。
「さてと、身体洗うか」
「そですね。それで終わったら湯船でちょっとお話ししたいことがあるんですよ」
「なんだよ? またしょうもないことか?」
「まっさかぁ。そこそこ重要なことですよ」
「重要? なんについてだ?」
「――私たちが今暮らしているこの世界についてですよ。ちょうどここの話は百合神様には聞こえませんしね。秘密のガールズトークといきましょう♪」
「いや、お前も私もガールって歳じゃないだろう…」
そして、そんなことを話しながら私達はまずは体を洗うためシャワーの方へと歩き出した。
初投稿からちょうど一年が経ちました!
二年目も頑張ります!!




