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Episode-100 『脳内プランはズレるもの・いつもの二人の場合』


 やたー、まさかまさかの副収入。

 本命のプランを進行しつつ、キッチリ自分の利益も獲るとはやるね、私。

 

 まぁ、あの二ノ前先生の言うように主観丸出しの答えで納得してもらえるかは五分五分もいかないくらいだと思ってたけど言ってみるもんだ。

 他人に何を言われようとも私の百合に対するこだわりが揺らぐことはない。でもそれを他人に理解してもらえるかどうかは別問題だしね。うん、そう考えれば二ノ前先生は何とまぁ柔軟な発想を持っていることか。

 いや~、流石天才漫画先生。このまま鬼村ちゃんとも素晴らしき百合的関係になり公私共々百合作家になってくれれば言うことないですね~。


「ふっふふ~ん♪」


 上機嫌な気持ちで二ノ前先生との百合談義を終えた私はキッチンでお皿洗いに邁進していた。

 ちなみに二ノ前先生の方は私との会話終わった直後から「ふーむ」と真剣な表情を浮かべながら頬杖をついて何かを考えるようにじーっと黙っている。

 おそらくだが、もうすでに未来の百合漫画について思考を巡らせているのだろう。

 

 そんな彼女を邪魔しちゃ悪いので、とりあえず皿洗いを終えた私はこの後の二ノ前先生とのプランについて夕飯の仕込みをしながら考えることにした。

 大丈夫、まだ時間に余裕はあるんだ。


 ここで今日の私の脳内プランを一度復習しておこう。


 ①:二人が運動場へと向かった後に起きてきた二ノ前先生にご飯を作ってあげる。

 ②:ご飯を食べる二ノ前先生と世間話やあの数年前に一度会った時の話でまずは軽く距離を縮める。

 ③:お茶でも飲みながら話を継続。色んな所に話を振りながら、自然な感じで話題を鬼村ちゃんに持っていく。

 ④:昨日知った鬼村ちゃんについてのことをプレゼン。→二ノ前先生がより鬼村ちゃんに興味を持つ。

 ⑤:運動場から帰ってきた二人と合流→初めての四人での食事。

 ⑥:私と紗凪ちゃんが潤滑油となって話していくうちに鬼村ちゃんと二ノ前先生の仲も深まっていく。

 

 予想外の流れになったが、なんやかんやで③の半ばまでプランは進行できたと考えていいだろう。むしろ予想外の流れになったおかげで、二ノ前先生の寝坊分の遅れを取り戻せたかもしれない。

 後は二ノ前先生に鬼村ちゃんの話題を振るだけ。さすれば、一気に④まで進行できるはず。

 そして、今のこの二ノ前先生との会話が途切れた時間でさえ私は無駄にせずに⑤の食事の準備に取り掛かれている。


 ――素晴らしい。先程の百合漫画の件といい確実に私に運が流れてきている。


 ようやく可愛い女子高生二人に言った「私に任せて!」の言葉を現実にする準備が整った。

 それになにより、これでまた紗凪ちゃんからの好感度がアップだ。

 よ~し、もうひと頑張りしちゃうぞ!


 そう意気揚々とお米を研ぎ終えて、炊飯ジャーの予約炊飯ボタンを押す。

 さーて、次は――。


 ――ドン!


「うおっ!? ビックリした!?」


 が、「次はお肉でも仕込もうかな~」と考えていたところで不意に響いた音に驚き思わずそう声を漏らす。

 ギョッとしながらその音の鳴った方を見ると、二ノ前先生が机に手を叩きつけながら立ち上がっていたところだった。


「どっ、どうしたんですか…?」


 その奇行にチョイ引きで恐る恐るそう尋ねる。 

 すると二ノ前先生は私の声に、はっとしたかと思うと「あー、わりわり」と頭をかきながら謝罪の言葉を口にした。

 どうやら無意識の行動だったらしい。それはそれでヤバい気もするが…。


「なんか、頭がいまいちスッキリしなくてあんま思考がまとまらんくてな。満腹だからか?」


「いや、私に聞かれましても…。あれだったらソファで横にでもなってればいいんじゃないですか?」


 とりあえずそんな風に提案してみるが、二ノ前先生の方は「いいや」と否定して、


「ちょっとスッキリさせるために風呂入ってくる」


 と、いきなりそんなことを言い出した。

 そして、そのまま私の返答を待たずに自分の部屋へと歩き出してしまう二ノ前先生。

 ええっ、マイペースにも程があるでしょ!?


「ちょっ!?」


 これって、二ノ前先生の入浴時間次第じゃまた私の脳内プランにズレが…!

 当然その二ノ前先生の行動に私は焦る。メッチャ焦る。


「二ノ前先生、いつもの入浴時間ってどれくらいですか!」


「んー。いつもは短いが、今回は頭をスッキリさせる目的だからそこそこ長いかもしんないな」


「うおい!」


 が、その焦りも虚しく質問に一つだけ答えると二ノ前先生は自身の部屋へと消えていってしまった。恐らく着替えの衣類を取りに行ったのだろう。


「――やばい…かも」

 

 そして、一人キッチンに残された私は脳内でプランのズレを修正する算段を大急ぎで立てていた。

 が、考えようにも正直二ノ前先生の入浴時間が未知数なのだからどうしてもそれは不透明なものになる。


「―――!」


 その状況の中で先程向かいかけた冷蔵庫を穴があくほど見つめながら、私は決断を強いられていた。

 お料理…は後でどうとでもなる。四人が集合してからでも作れるはず。

 ならば優先すべきは――、


 結論は出た。

 そして、それを決めた瞬間に私は自分のプライベートルームへと一目散に駆け出していた。



 ――ガチャ。

 

 準備を終えてプライベートルームから顔を出す。

 大急ぎで準備したせいか、私が出たのは先に自身のプライベートルームに入った二ノ前先生と同じタイミングだった。


「…? なんでお前も自分の部屋から出てくんだ?」


 そんな私を見て二ノ前先生がそう本当に不思議そうに問いかける。

 その問いかけに私は自分の分の着替えを持ちながら、


「私もお風呂ご一緒します!」


 そう高らかに宣言した。


 プランは変更。

 プランナンバー③~④はお風呂場で進行します。


***―――――


「あー…、もう無理だ。脇腹がいてぇし、これ次動いたら吐くぞ…」


「ははっ、せやな。もう自分、はたから見てもかんっぜんに虫の息やで」


 運動場内に設置されたテニスコート。

 さっきまではここで熱戦を繰り広げてたんやけど、今のうちはコートで仰向けになっとる桃をネットを挟んで見下ろしながら会話をしとるわけや。


「つーか、自分凄いでほんま。うちとここまで一対一で遊べるやつ今までおらんかったで。それになんやスポーツ万能やしな、どんな競技でもすぐ順応するやろ。そのおかげで白熱してメッチャ楽しかったで、桃」


「そりゃどうも…。つーか、なんであんたはピンピンしてだよ。化け物なのか?」


「アホ、ぬかさんといてぇや。うちかてごっつ疲れとるわ。お昼挟んで何種目やったと思うとんねん」


「…とりあえず十以上はやったな。正直一か月分くらいの運動量を今日のこの半日でこなした自信があるぞ」


 そう言いながら、桃が身体を起こしコートに胡坐をかいて座る。

 口ではそう言いつつももう軽く息は整っとるし、やっぱこいつ凄いな。『放課後全力スポーツ部』に特待生として入部して欲しいくらいやで。

 

 ――まぁ、とはいっても体力的にはもう限界なのはホンマやろな。これうちの同級生とかやったらもうとっくの昔に全員ぶっ倒れとるぐらいの運動量やろし。


「よし、今日はこのくらいにしとこか。メッチャ絆深まったやろ」


「これは絆が深まったと言えるのか? ずーっと一緒にスポーツしてただけなんだけど…」


「それがええんやないの。一緒に遊んどる内に自然となかよーなるんがダチいうもんやろ?」


「――そうか。うん、そうだな」


 さってと、あとはこの後どうするかやけど――。


「なんやアレやな。もうこれで終わりってなったら、メッチャ汗とか気持ち悪なってくるな」


「そりゃそうだろ。もうビッショビショだぞ、マジで。真夏日にマラソンしてもこんなビショビショにならんぞ、汗の分の水分補給に何本ペットボトル空にしたんだって話だ」

 

 そう何隠そう、うちも桃も汗でビッショビショやねんな。

 勿論替えのTシャツとかは持ってきたんやけど、そんなもんとっくの昔に替え済み。二人してもう全身くまなく水浸しというわけや、汗やけど。


 身体は疲れて、汗ビッショ。

 うん、ならこの後のスケジュールは決まった様なもんやな。


「――よっし、桃。ここはお風呂は入りにいこか!」


「さんせー」


「あっ、ちなみにメインルームは夜さんが須能さん相手に奮闘中かもしれへんから、こっそり邪魔にならへん様にやで」


何やかんやで、本筋のストーリーも今回で100話を突破しました(EXTRAも合わせると112話目ですが)。

やっぱり節目の語り手は主人公がいいかな~、と思って今回はこの二人目線です。

いよいよ宿泊学習編も折り返しに突入しますし、EXTRA枠も増えてきました。

これからも盛り上がる展開を色々と考えておりますので、今後とも何卒本作をよろしくお願いします。


100話も突破したのに、作中経過時間が一か月も経ってない…。

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