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Episode-96 『全ては百合に収束する・超清純派女優の場合』


「んで、あれの音で起こすつもりが実は私は起きていてノックでそのまま出てきたことにより――ああなっちまったと…」


 呆れた様な表情でそう言いながらお冷を飲む二ノ前先生。


「そんな感じですね。いや~、申し訳ない」


 そんな二ノ前先生と会話をしながら、私はキッチンで一人中華鍋を振っていた。つまり二ノ前先生のお昼ご飯をつくっている最中というだ。


 今さらながら、このメインルームに仕切りは存在しない。

 それ故にキッチンもその場にドンッとあり、普通に料理しながらでもこっちからメインルーム全体を見渡せるし、反対に料理している姿もメインルーム内ならどこからでも見れる。

 だから普通にいつもは私と紗凪ちゃんは片方が料理している姿を見ながら片方は食事用のテーブルに座り、食事前は二人仲良く会話をしていたわけだ。


 おっと、少し話がズレてしまった。

 まぁ何が言いたいかというと、今は私がキッチンで料理中。そして、同時にそんな私の料理が完成するのをテーブルで待つ二ノ前先生と会話中という訳だ。


 幸いにも先程の爆竹ショックで二ノ前先生が怒っているということは全然無い様子。

 それどころか「ちげぇよ! つーかマジで何のつもりだお前、私を殺す気か!?」のツッコミの後に「…あと腹減った、飯つくってくれ」と即座に自分の食欲に負けたのかそんなことを二ノ前先生は口にした。

 凄まじいその切り替えの速さに私は驚きつつも「よっしゃ、セ~フ」と心の中で安堵し、すぐさま昼食を作り始めたというわけだ。


 ちなみに昼食のメニューは、簡単にチャーハン。

 だが、そんじょそこらの自宅チャーハンじゃないよ。なんたってここには調味料調理器具が充実している上に、料理人は私。

 ぶっちゃけ、この一か月ほどで紗凪ちゃんに褒められ過ぎて私は自分の料理の腕にメチャクチャ自信を持っていた。

 よ~し、まずは会話を弾ませる為に胃袋を掴んでやるぞ~。


「ほっ、ほっ!」


「中華屋みてぇだな」


「でしょう、ちなみに味も負けてませんよ。――できた、お待ちどう様です」


 はい、完成。

 私の分と二ノ前先生の分をそれぞれ炒めていたお玉でドーム状になるようにしてお皿に移す。

 こうすることにより熱が逃げないと共に、なんか本格的なお店のチャーハンっぽくなって味がさらに美味しく感じるのだ。


 二人分のお皿を手に、私もテーブルの前へと移動する。

 そして、二ノ前先生の前に彼女のぶんの皿を置くとその対面の椅子へと腰掛けた。


「普通に美味そうだな」


「そりゃそうですよ」


「あっ、そういや昨日の晩飯もありがたく頂いたぞ。あれも美味かった」


「…あー、あのパスタですか。それはお口に合って何よりです」


 一瞬その言葉の意味がわからなかったが、そう言えば昨日の夜に部屋から出てこない二ノ前先生のためにパスタつくって冷蔵庫入れといたんだった。

 ふむっ、考えてみれば私が何の気なしにつくったそのパスタがもしや昨日の二ノ前先生と鬼村ちゃんの百合的展開を助長したのかもしれない。

 素晴らしい、これは正に『全ての道は百合に通ず』ってやつだね。やはりこの世の全ての事象は最終的に百合に辿り着くんだね~。

 

 と、そんな風に冷静になったらメチャクチャバカなことだとわかるような事を脳内でのほほ~んと考えながら、


「んじゃ、いただきます」


「はい、召し上がれ。そして私もいただきます」


 そう二ノ前先生と二人でのお昼ごはんタイムが始まった。


 

 始まった―――のだが…、


「―――――」


「―――――」


 会話が恐ろしい程に始まらない。

 そして、


「美味いな」


「どうもです」


「―――――」


「―――――」


 始まったとしても恐ろしい程に続かない。


 …やばい。

 この展開にさっそく私の背中に冷や汗が伝い始めていた。

 別に気まずくはない。それどころか、どこか居心地がいい感じすらある。それはきっと私も二ノ前先生も沈黙を苦としないタイプの人間だからだろう。


 普段の生活ならばこれでも別にいい。が、残念ながら今は普段とは違う。私にはやらねばならない使命があるのだから。

 ここで二ノ前先生との距離感を詰めねば更にプランは遅れ、待っているのはゲームオーバー。

 ならば多少無理やりにでもここいらで会話の糸口を見つけるしかない。


 探せ探せ、私と二ノ前先生が共通に盛り上がれる話題。


 ――――!


 脳をフル回転させて考えることわずか数秒。

 私の頭にヒョイと名案が浮かんだ。うん、即興にしては中々にいい案だ。さっきの爆竹モーニングコールよりもずっといい案だ。

 さすが私! やればできる子! …子じゃないけど!


「うー、ごほん!」


 そして決めたからには再び速攻で行動に移す。私に迷ってる時間はない。

 咳払いを一つして、スプーンをいったん手放す。

 そして、


「そういえば、二ノ前先生」


「んー?」


「二ノ前先生って、これまで何作か漫画描かれてますけど全部ジャンル違いますよね」


「そうだな。あんまり似通ったのを描くのが好きじゃねぇからジャンルは毎回変えてるな」


「ですよね。それで今連載中の『スター・マリッジ』の次の作品なんですが――」


「?」


「百合漫画なんてどうでしょう♪」


 そう二人で盛り上がれそうな話題を提示した。


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