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Episode-93 『メインルームで1on0・超清純派女優の場合』


 私と紗凪ちゃん、そして鬼村ちゃんは仲良くテーブルを囲み朝ごはんを食べていた。

 そしてそんな朝ごはんの中での会話の内容は必然的に一つに絞られる。

 そう今日の予定についてだ。


 大事な大事な宿泊学習の中日。

 ここで何としても鬼村ちゃんと二ノ前先生の距離をグッと縮める何かが欲しい。

 でも、鬼村ちゃんにはまだ話してはいないが昨晩で紗凪ちゃんとの今日の作戦は協議済み。それに加えて深夜のテーブルで私は二人の秘密のやり取りを文字として目撃したことで二人の間に百合の波動を感じ取ることができた。


 まぁ、何が言いたいかというと私はかなり余裕をぶっこいていたのだ。

 昨日の時点では「なんとかしなきゃ!」だった心持ちも、「うん、これはなんとかなるな!」に変化していた。

 全力で取り組むのは勿論取り組む。しかし、成功率が20パーセントの課題と80パーセントの課題に取り組むのでは当然、自信とか心配の度合いは変わってきてしまうものだ。


 それ故に、


「えっ、でもそれは虹白さんの方がずっと大変な役回りなんじゃ…」


「大丈夫。その辺は私に全部任せて。二人は何も考えず運動場で遊んできなよ♪」

 

「はっ、はい。わかりました」


 鬼村ちゃんに今日の個別攻略作戦を説明した時もそんな風に自信たっぷりにできるお姉さんキャラを前面に押し出してしまったわけだ。

 もちろん、紗凪ちゃんの前で格好つけたいという気持ちもあったけどね。


 そんな訳で朝ごはんを食べながら今日の作戦について説明し終えた後は、三人で食器を仲良く片づけて軽く食休みを挟み、私は運動場へと行く二人を見送ったのだった。


 ***――――


 ということがあったのが、数時間前。

 

 そして時は戻って現在、ちょうど時計の針がお昼を指し示そうとしていた。

 そんな中で私はメインルームのソファに座り、数時間前とは打って変わって全てを諦めた様な空虚な瞳を浮かべていた。


 ――たった一人で。


 一応言っておくと私の脳内プランでは、


 ①:二人が運動場へと向かった後に起きてきた二ノ前先生にご飯を作ってあげる。

 ②:ご飯を食べる二ノ前先生と世間話やあの数年前に一度会った時の話でまずは軽く距離を縮める。

 ③:お茶でも飲みながら話を継続。色んな所に話を振りながら、自然な感じで話題を鬼村ちゃんに持っていく。

 ④:昨日知った鬼村ちゃんについてのことをプレゼン。→二ノ前先生がより鬼村ちゃんに興味を持つ。

 ⑤:運動場から帰ってきた二人と合流→初めての四人での食事。

 ⑥:私と紗凪ちゃんが潤滑油となって話していくうちに鬼村ちゃんと二ノ前先生の仲も深まっていく。


              ~~~~fin~~~~


 的な流れがこの二日目の黄金パターンだった。微塵の隙もない程に考え抜かれた最高のプラン。

 そう私の予想ではこうなるはずだったのだ。そして、今の時刻ならば③か最低でも②までは進んでいる流れのはずだった。

 しかし、現実はそれどころか①が始まる気配すらない。


「―――――――――」


 何故かというとその理由は単純明快、


「あの人っ、全然部屋から出てきやがらねぇ……!!」


 ご飯を作る相手が一度たりともプライベートルームから出てきてないのだ。

 

 何度かノックもした。しかし返事はない。

 漫画を集中して描いていて聴こえない可能性もあるが、それならば空腹で出てきたりトイレに行ったりが一回ぐらいあってもいいはずだ。

 

 ――つまり十中八九寝ている! 漫画家という労働時間が不規則な生活をしているとはいえ、23歳のいい大人が! 平日の昼過ぎまで!!


 …まぁ、本来の部屋での生活ならまだわかりますよ。自由だし。そもそもここには平日休日の概念はないし。

 でもあの人、今が自分達二人の関係を深める宿泊学習だって知ってるよね! その期間が三日しかないことも知ってるよね! なのに何でこんな爆睡してるの!? おかしくない!?

 うん、なんか考えてるうちにちょっとムカついてきたぞ! こっちの気も知らないで~!


「――いやっ、だが一端クールになれ私! 過ぎていった時間は戻らない、残りの時間での最善手を考えよう」


 が、ヒートアップしてはいけない。メインルームに私一人しかいないことを良いことに声に出して自分を落ち着かせる。

 ――正直、今まではいつかは起きてくるだろうという楽観で待ちの一手をとっていた。しかし、もうこれも限界だ。


 プランを修正しよう。

 待ちではなく、私から行動に移さなければこのままではご破算だ。

 そして年下可愛い女の子二人(しかも女子高生(しかも片方は思い人))の前であれだけ大々的に「任せて」と言った以上は二人が帰ってきたときに「できませんでした」はありえない。


 ――何としても部屋から出てきて交流して頂きますよ、二ノ前先生。


 そんな覚悟を胸に私はメインルームのソファで二人が戻ってくるであろう残り時間を計算しながら、プランの再構築を始めた。


 紗凪ちゃん、鬼村ちゃん! 私、頑張るよ!!


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