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Episode-EXTRA11 『ルーム19・普通っぽく見えて結構変わっている彼女の場合』


 こんにちは、高佐悠菜です。

 今私はひょんなことから神様とやらの娯楽に巻き込まれ、謎の空間で謎の少女と365日に渡る同居生活を送っています。


 同居相手の上之宮春貴ちゃんは、偶然か必然かはわからないけど同い年の女の子。

 上之宮という中々に豪勢な苗字からわかるようにかなりのお嬢様っぽい。何故かというと、行動の端々に気品のようなものが漂ってるんだな、これが。

 まぁでもただお堅いだけってわけではなく、普通に話しやすいし庶民の私とも何の隔たりもなく接してくれる素晴らしい子だ。お嬢様でありながら、庶民にも対応している。水陸両用みたいな感じだ。


 あと心なしかどっかで前に会った気がするんだよな~? 気のせいかな?

 まぁ、今はそれはいっか。


 そんないきなり始まった彼女との同居生活には最初こそ困惑したものの、その生活が自然なものとなるのに大して時間はかからなかった。

 そしてそんな私たち二人の生活は特に山もなく谷もなく一年間が終わる――そんな風に思っていたのだが、

 

 二人で暮らし始めて一週間。

 そこで私は初めてある異変に気付いた。



「? …ありゃ、寝てる」


 それはとある日の夜。

 お風呂から上がり、髪をバスタオルで拭きながらお風呂場から出てきた私はソファで気持ちよさそうに寝ていた春貴ちゃんを発見した。

 いつもお風呂に入る順番は春貴ちゃん→私、となっている。ちなみに最初は一年間一緒に暮らすわけだし一緒に入らないと提案してみたんだけど、春貴ちゃんには拒否られてしまったのだ。

 そんなわけでソファで寝ている春貴ちゃんはすでにお風呂上りというわけだ。


「う~ん、気持ちよさそうに寝てるけど風邪ひいちゃったりとかしないかな~…」

  

 そんな彼女を見てそんな心配をしながらも、パジャマ姿のまま規則正しく寝息を立てているところを起こすのも若干気が引けたため私は自分の部屋まで戻って薄めのタオルケットを持ってくることにした。

 そして、それを春貴ちゃんが起きない様にゆっくりと身体にかけてあげた。


「さってと」


「…ぅなさん」


「ん?」


 彼女が起きていないことを確認し、ここでドライヤーを使う訳にもいかずもう一度お風呂場へと戻って髪を乾かしてこようとした私だったが、その耳に後ろから春貴ちゃんの声が届いた。

 しかし、振り返ると間違いなく春貴ちゃんは寝ていた。つまり寝言だ。が、何を言ったかは聞き取れなかった。

 春貴ちゃんの寝言…、ちょっと気になる。


 そして、その好奇心に負けてそのままお風呂場へと戻らずに春貴ちゃんに近づいたのが全ての始まりだった。


「うな…さん。…きです」


「んー」


「悠菜さん、大好きですぅ~」


「はいっ!? ――ってやばっ…!」


 春貴ちゃんの口元に耳を近づけたことで聞こえてきたその言葉に私は思わず大声を上げてしまった。

 …え!? えっ!? 大好きって言った!? どゆこと!?

 初めは聞き間違いかと思ったけど、そんな訳はない。だってハッキリ聞こえたもん。


 好き? それも大好き?

 いや、私も春貴ちゃん好きだよ。一緒にいて楽しいし。でも寝言で「大好き」と言うかといわれれば多分言わない。

 しかし、引っかかったのは大好きという言葉だけじゃない。その前の悠菜さんもそうだ。何故なら私は春貴ちゃん呼びだが、春貴ちゃんは私のことを高佐さんと呼んでいる。それが何故に寝言では悠菜さん?


 …はっ、そうか!!


 そこで私は気付いた。


 もしかして、春貴ちゃんは心の中では私ともっと仲良くしたいと望んでいるのでは!

 そうだ、そうに違いな!!


 つまり、今の現状よりも春貴ちゃんは私と距離を縮めたいと。

 なるほどなるほど、つまりお嬢様であるが故の遠慮があったのか! これは気付いてあげられなかった私の失態だ!


「よし」


 とりあえず、先程の私の大声でも春貴ちゃんが目覚めていないことを確認し、私は再び髪を乾かすためにお風呂場へと向かった。

 『明日からはもっと積極的に春貴ちゃんに接していこう』、そう決めながら。


 

 その後、私は今までより一層春貴ちゃんにスキンシップをとるようになった。

 春貴ちゃんは少し困り顔を浮かべながらも、どこか嬉しそうだった。

 ふっふっふっ、やはり私の予想通りだったようだね♪


 その結果、私と春貴ちゃんの距離はより縮まった気がした。それが全ての変わる前兆となった。

 

 ――そして、あの日がやってきた。


 その日、お風呂から上がった私は再びソファで眠っている春貴ちゃんと遭遇したのだ。

 

 今度もタオルケットかけてあげよっかな、と自室へと向かおうとした私だったがその途中でとあることを思い出して足を止めた。

 

 前回、ソファで眠ってしまった春貴ちゃんは起きたときにタオルケットをかけた私に対して「すみません」と「ありがとうございます」を五回ずつ言ってきた。私は別にお礼を言われるようなことをしたつもりは無かったし、謝れるようなことをしたつもりはもっと無かった。でも、結構迷惑をかけることを春貴ちゃんは気にするタチなのだ。それ故に今回もそのパターンになる気がする。

 それにやっぱりソファは結構不安定だから長時間寝て起きたときに身体を痛めてしまうかもしれない。

 しかし、だからといって起こすのもこの気持ちよさそうな春貴ちゃんの顔を見てしまっては気が退ける。


「よいしょ」


 とうわけで、春貴ちゃんを彼女のマイルームのベットへと運ぶことにした。

 きっとこれは、先日の一件で春貴ちゃんとの距離がより縮まったからこそとってしまった行動なのだろう。


 存外眠りは深かったようで、私がお姫様抱っこの要領で持ち上げても起きる気配がない。

 でも眠りが深いってことは疲れてるってことだよな~。そりゃそうだよね、いきなりこんな不慣れな生活になればね、いつも通りの感じの図太い私が変わってるだけだよ。

 それに春貴ちゃん何故かたまにプライベートルームに長時間籠ってる時あるしね。なんか作業でもしてるのかな?


 そんなことをなんとなく考えながら春貴ちゃんの身体を抱っこして、彼女のマイルームまで歩く。

 というか女の私が結構簡単に運べるって、春貴ちゃん軽いな~。体重何キロくらいなんだろ?

 

「…そういや、勝手に部屋は入っちゃって大丈夫かな」


 が、ドアノブに手をかけたところで少し思いとどまる。

 一応この部屋の名前プライベートルームだしなぁ。これって場合によっちゃプライバシー侵害?

 いや、でもそうなるとどうするよ。

 

 ――うん、これはしょうがない。なんなら後で私のプライベートルームを入ってもらえばおあいこだ。


 そう結論を出し、春貴ちゃんを抱きかかえながらドアノブを回してドアを開ける。

 開いた扉の先にあったのは、春貴ちゃんらしいシンプルだけどキチッと片付いた品のある感じのワンルームだった。うん、イメージ通り。

 

「っしょ、っと」


 そんな部屋の奥にあるベッドの上に春貴ちゃんを寝かせる。

 よし、これでミッション完了。

 後はメインルームに戻るだけ…………ん?


「なにあれ?」


 が、そこであるものが私の目についた。ついてしまった。

 それは春貴ちゃんのプライベートルームの側面に設置された入り口とは別の部屋。

 百合神様はこのプライベートルームは私たちの自室を再現したと言っていた。つまりあの扉は春貴ちゃんの本来の部屋に備えついていたもの。つまりあの扉の先の空間もプライベートルームの一部という訳だ。


 …これは先程までのしょうがないで済まされることじゃない。それはわかっている。

 でも、何故だか私の身体は吸い寄せられるようにその扉の前へと向かっていた。

 その理由もまた単純。


 ――かっ、隠し部屋(まったく隠れてはいないけど)! すっごい! カッコイイ~!!


 という単純な好奇心にとるものだった。


 ううっ、ごめんね春貴ちゃん。こんな泥棒みたいな真似。

 でも、すっご気になるの! あとで謝るから許して~!

 心の中で春貴ちゃんに謝罪しながらドアノブに手をかける。クルリと回すとノブは抵抗なく回った。

 鍵穴はあるが、鍵はかかっていなかった。


 空いた扉の先に広がっている世界は暗い。

 でも部屋の明かりのスイッチはすぐ横にあったので念のために春貴ちゃんを起こさない様に隠し部屋のドアを閉めてからそのスイッチを押した。


 ――これにより私と春貴ちゃんの関係が決定的に変わることなど微塵も想像せずに。


***―――――


「春貴ちゃん、春貴ちゃん」


「…んん?」


 ソファで眠る春貴ちゃんに遭遇するのはこれで三回目だ。

 今回はタオルケットをかけるわけでも、自室へと運ぶわけでもなくその肩を少し揺すって起こす。

 若干うなされた様に眠る春貴ちゃんを見ると、これからあの話をするのが少々気が滅入るのだがしょうがない。もう決めたことなんだから。


「大丈夫、少しうなされてたみたいだけど」


「大丈夫です。少しだけ昔の夢を見ていただけです」


「――そっか。って、そうだそうだ。なんか結構お高そうな茶葉使ってお茶淹れたから一緒に飲まない?」


「それはいいですね、頂きます」

 

 すでにテーブルには先程慣れないながらも頑張って淹れた紅茶が湯気を立てている。

 そのカップのある席に私と春貴ちゃんは対面に腰かけた。


「慣れてないから、味は大目に見てね」


「フフッ、気にしないでください。美味しいですよ。高佐さんもどうぞ」


「――うん」


 紅茶を一口飲んだ春貴ちゃんに勧められるままに私も紅茶を一口飲む。

 そして、「ふーっ」と小さく息を吐く。同時に覚悟も決めた。

 よし、ドンとこいだ。


「ねぇ、春貴ちゃん一個聞いていい?」


「はい? 別に構いませんよ」


「あのさ…、今から私ホントすっごい馬鹿なことを言うから間違ってたらすぐ言ってね」


「?」


「あのさ、春貴ちゃんってさ…もしかして――私のストーカーさん…とかだったり…する?」


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