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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第2章 café「R」〜カフェから巡る四季〜

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《第89話》ボジョレー解禁したよね

「おい、ボジョレーないのかよ」


 流行りに敏感な男、三井が切り込んでくる。

 そこに賛同するのは、巧と瑞樹だ。


「やっぱ解禁したなら飲みたいよな」


「飲みたいよねー」


 口々に言うが、ボジョレーの瓶が出てくる気配はない。莉子であれば先読みをして準備をしてそうなものだが、彼女は薄ら笑いで乗り切ろうとしてる。


「連藤もそう思わないのかよ」


 連藤は答える代わりに質問を返した。


「三井は毎年ボジョレーを飲んでいるのか?」


 ここぞとばかりに胸を張り、


「当たり前だろ。

 秋が来たっていう、風物詩だろ!」


 巧と瑞樹が感嘆の声をあげるなか、莉子が重い口を開いた。


「うちはボジョレーはお店に置きません。

 個人的に解禁のお祝いはしたけど」


「なら俺も呼べよ」


「解禁日の12時に、おめでとう! っていうだけだよ?」


 そう言っても、むくれた表情は消えないようだ。

 逆に飲んだとわかると瑞樹が食いついてきた。


「ねね、味はどうなの?」


「結構有名じゃん、ボジョレーって」


 瑞樹と巧が交互に答えるなか、莉子が携帯片手に一つ咳を払った。


「『ボジョレー・ヌーヴォー』とは、フランス・ボジョレー地区でその年に収穫されたブドウを使った新酒のこと。

 と、いうことは?

 はい、巧君!」


「え? は?

 その年のワインが飲めるってこと?」


「正解!

 ってことは? はい、瑞樹君!」


「とっても新鮮ってことだよね!」


「正解!

 というわけで、味はどうでしょうか、三井さん」


「……まぁ、軽めではあるよな」


「正解!

 ……ということで、わりと高いのに、すんごく美味しいもんでもないのです。

 美味しいのも確かにあるんだけど、やっぱりしっかりと熟成したワインとは違うんだよね」


「俺も今年初めて飲んだんだが、同じ値段なら別なワインが飲みたいなと思ったんだ」

 少し首をかしげながら連藤は言うが、


「でも年に一度のお祭りじゃねーか!」

 三井が前のめりに食ってかかるが、手の甲で鼻頭を払い咳へと戻し、


「そんなに騒ぐなら、飲んでみるか?」

 連藤が目配せすると、おずおずと出てきたのはボジョレーである。


「やっぱりあるじゃねぇか!」

 騒ぐ三井をおいて、グラスに注いでいく。


「香りはフレッシュですごくいいです。

 ボジョレーはガメイってブドウで造るんですが、甘みがあってイチゴのような味って表現がされるだけあって、果実味は豊かですね」

 そういいながら3人へグラスを滑らすと、待ってましたとばかりに3人はグラスをつまみ、口に運んでいく。



「「「……でも、軽い」」」



 莉子と連藤は納得したかと頷くが、それでも味は良かったようで、一気に飲み干し2杯目を求めてくる。


「こうなるからなぁ……」

 莉子はぼやき、注いでやるが、瞬く間に3人は頬がワイン色に染まっていく。


「軽いから飲みすぎるだろうと、別日にと思ったが、遅かったな……」


 連藤と莉子は安価でありながら果実味が良いスペインワインを飲んで、3人を眺めている。


「明日も仕事なのにね」


 そういいつつも、彼らのグラスには絶えずワインが注がれていく。


「来年はみんなでお祝いしよーよー」


 真っ赤になった瑞樹はグラスを掲げていうが、語尾に力が入っていないため、妙に説得力がない。

 きっと明日には忘れてしまう、そんなレベルの酔い方だ。


「やっぱ、日本が一番最初に飲めるんだろ?

 やらなきゃ損だよな」


 巧も同じく赤い顔だが、まだ思考が追いついているのか、時差の話を出せるほどの酔い具合である。


「今日出さなかったら、莉子、いつ出す気だったんだよ?」


 少し喧嘩腰の三井だが、酔っているからか呂律が怪しげである。


「今週末の土曜日とか?

 でも飲んじゃったからいいね」


 いいながら、グラスの片付けをしようとしたが、


「いや、ダメだろ、莉子!」


「なんで?」


「なんでじゃねぇよ。

 このワインに合う料理食ってねぇし」


「ボジョレーは軽いから、なんでも合うよ。大丈夫!」


「なわけねぇだろ」


 反発はしてくるが、出した料理はすべからく平らげている。

 だいたい焼き鳥が一番似合うのだから仕方がない。

 適当に聞き流しながら、3人を見張るが、瑞樹がカウンターへと寝そべった。

 1人脱落。

 もう一杯飲み干した時、巧がカウンターへと溶けていく。

 2人目脱落。


 残る1人は、三井だ。


「……軽いから飲みすぎるな、これ」


「だから言っただろ」


 連藤が言い切ると、


「明日も仕事だったなぁ……

 面倒くせぇなぁ……」


「三井さんが面倒だなんて、珍しいですね」


 莉子が空いた皿など片付けながら返すと、


「苦手な相手だからな」


「だから酒で誤魔化してたのか」すかさず連藤が突っ込んだ。


「仕方がないだろ?

 やり手の元カノじゃぁ、俺だってやりにくいっての」


「それは確かに」

 莉子は妙に納得した表情でうなづくと、


「ご愁傷様でした」

 残りのスペインワインをグラスに注ぎ、掲げた。


「意味わかんねぇよ!!!」



 次回、元カノはどこまで元カノ?

 三井の過去が明らかに!?

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