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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第2章 café「R」〜カフェから巡る四季〜

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《第86話》Happy Halloween の日 #前日編

 今日は定休日。

 莉子はのんびりと片付けをしていた。


 それはあのハロウィンの片付けだ。


「これ、来年も使えるかな……?」


 パンプキンがつながったガーランドを畳みながら呟くが、来年もできたらいいなぁと想像する。



 ハロウィンのイベントの日、31日は定休日の日であったため、告知は小さくし、夜9時からスタートとして準備を始めた。



 ───ハロウィンイベントの前日。

 営業の後、莉子と他精鋭6名が集結し、スチームパンク風の店内にするために、クロスをかけたり、アンティークな小物を置いたり、ハロウィンのガーランドやカボチャを設置。

 大掛かりなものは男性4名が、小物の設置などは女性3名で行った。


 小さな店内のため2時間はかかったが、それでも割と早くに仕上がったのではないだろうか。


「今日は忙しい中、わざわざお手伝いありがとう」


 そう言いながら出してきたのはホットワインだ。


「莉子さんのホットワイン、あったまるよね」


 優と奈々美が口々に言いあうが、


「ね、みんな衣装とかどうなってるの?」

 瑞樹の何気ない一言で一瞬にして空気が固まる。


「おれはねー、海賊にしようと思って。

 巧はなにか決めた?」


 巧の表情は無だ。

 それは三井、連藤も同様である。


「まだみんな決めてないの!?

 ヤバくない!?」


 いや、ヤバい。


 だが、決まってないのだからもういいんじゃないか(着なくてもいいよね!)と思っていたそのとき、


「そんな事だろうと思ってました」


 莉子が立ち上がった。


「ちゃんと連藤さんの分は用意してあります」


「巧のもあるよ」


 そう言い、奈々美と優も立ち上がると、3人で二階へと上がり、布を抱えて戻ってくる。


「連藤さんは今回ヴァンパイアで」莉子が渡し、


「巧は瑞樹くんと同じ、海賊」奈々美が巧に手渡した。


「三井さんもヴァンパイアね!」そう言って優が服を手渡す。



 3人それぞれ服を見やるが、やはり無である。



「いいから、着替えてみて!」


 莉子の一声で店の片隅に3人を寄せ、瑞樹がサポートで着替えを手伝ってみる。


「黒パンツと白シャツはそのままなのか?」


 連藤が戸惑いながら言うが、


「そだね。あ、ベストもいつもの着てるやつでいい感じ。靴は紐の革靴のほうがいいかも」


 瑞樹はこたえ、ドレープがいくつもあるネクタイを連藤の首に取り付けた。それはイメージ通りの伯爵が着ていそうなゴージャスな襟首だ。いつもの黒ベストはそのままで、マントが取り付けられる。アクセントに懐中時計が掛けられ、メガネはスチームパンク風の部品が色々付いた色眼鏡に変更し、ステッキが持たされ、さらにシルクハットを被せられる。


 いっぽう、巧だが、さながらジャック・スパロウかという出来だ。

 腰周りのアクセサリーはもちろん、ベスト、ターバンなど、小物がよく効いている。


「おれの海賊もそんな感じだから、安心して」


 瑞樹がいうと巧も安心したのかガラスに映った自身の姿をまじまじと見つめている。

 まんざらでもないようだ。


 だが三井の顔はやはり無だ。


 三井も連藤同様、同じように着ていくのだが、三井は帽子はなし、白い手袋と長いマントが特徴的だ。

さらに懐中時計やブローチがあしらわれ、連藤よりは華やかなヴァンパイアと言ったところだろうか。


「できたよー」


 瑞樹の声に釣られて3人が駆け寄ると、想像通りの姿がある。


「……莉子さん、大丈夫なのか?」


「連藤さんは元がイケメンなので、平気」


 莉子はにやけながら細部の調整をおこなうが、自分の姿が見えない連藤にはなんとも想像しがたい状況である。

 となりの三井は着ているにもかかわらず、引き気味の表情だ。


「つか、これ、やりすぎじゃあないのか?」


「三井さん、3番さんはゴスロリで来るんでしょ?

 丁度いいです」


 きっぱりと言い放った。


「奈々美、これ、けっこうイケてね?」


「気に入ってくれたらなよかった」


 奈々美は微笑みながら携帯で写真を撮っている。

 そんなバラバラなメンバーを遠巻きに眺めていたのはこの2人だ。


「優ちゃん、明日楽しみだね!」


「ほんと、ワクワクしちゃうね!」


 瑞樹と優である。

 やはり本場ハロウィンを体験している優にとっては楽しみな行事であって、恥ずかしい日ではないようだ。

 同じく瑞樹もそんな彼女に感化されているのか、ごく自然にハロウィンを楽しみにしている。


 瑞樹と優がいちばん純粋に楽しんでいるのかもしれない。



 ひと通り衣装チェックも終わったところで、連藤が衣装を脱ぎながら、


「莉子さん、明日の料理はどうなってる? 手伝おうと思ってたんだが…」


「明日の準備は大丈夫。昼間休んでるし。

 明日はフード1500円で食べ放題にして、ドリンクは1杯なんでも200円。こんなのも作ったんだー」


 そう言って出てきたのが胸に付けるクリップに用紙が貼り付けられているものだ。


「この紙のとこに、ドリンク飲んだらシールつけて、ドリンクだけ最後に精算」


 おおーという歓声が上がり、衣装を片付け、内装の最終チェックの後、明日のメニューはナイショとして、解散となった。




「───さぁ、明日が本番なので、早く寝ますか!」

 莉子は張り切ってベッドへ潜り込んだ。

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