《第70話》夜に咲く花 その後
2階についた2人だが、莉子はひと息ついて振り返った。
「連藤さん、ビールにする? ワインにする? それともシャワー入る?」
浴衣の帯をほどきながら莉子が聞くが、連藤はにやりと口をつりあげて、
「その選択に莉子さんは入らないのか……?」
連藤は帯を掴むと、簡単にほどいてしまった。
「あ、連藤さん、ありがとう。助かったよ。
したら私、シャワー入ってくるね」
すぐに連藤に背を向け脱衣所へと向かっていくが、連藤は何かを察した莉子の両脇に手を差し込み腰を抱えると、結ばれている紐をさらにほどいていく。
「いやいや自分でできますよ」
「何も遠慮することないじゃないか」
襟を抜いた首元に、連藤の息がかかるほどに近い。
その首元からはほのかな香水の匂いと外の火薬の匂い、さらに莉子自身の夏の匂いが香ってくる。
莉子のその香りは連藤にとってまだ冷え切っていない部屋の温度と相まって、まるで外にいるような、そんな気分にさせてくる。
「連藤さん、暑いし!」
ぴたりと背中に張り付いた連藤を引き剥がすように莉子は身をよじるが、向かい合わせになるように莉子の肩を回すと、連藤はひときわ強い力で抱きしめた。
「……なんか外にいる気分なんだ。
莉子さんの匂いが、いい」
興奮する連藤に呆れながらも、夏の魔力はすごいと思う莉子だった。
ムーンに続きがあるよ!





