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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第2章 café「R」〜カフェから巡る四季〜

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《第24話》オーナーへのお礼【前編】

オーナーへのお礼のために、巧の父が一肌脱ぐという。

彼女はそのお招きにどう対応したらいいか四苦八苦!

「そうそう、親父がさ、この前のディナーめっちゃ良かったって。

 久しぶりに帰ってくるから、この前のお礼したいってさ。

 来週の月曜日の夜、空けといて」


 昨日告げられたのだが、巧からの伝言というより、命令に近い。

 まぁ、時間は空けてやろう。

 だが、どこで食べるの?

 どんなTPO?

 まず、どんな服を着て行けばいいの?───


「……無理だぁ……」


「莉子さん、どうしたの?」


 そう聞いてきたのは優である。

 カフェオレを飲みこみ、見つめてきた。

 今日は瑞樹とデートだと言う。待ち合わせにこのカフェを使ってくれたようだ。


「いやさ、来週の月曜なんだけど、なんか巧くんのお父さんたちに食事に誘われて、何着てけばいいのかなぁって……」


「ああ、それ。

 瑞樹くん、店選んでるから、聞いてみたら?」


 ほら、来た。彼女は扉越しの瑞樹に手を振り、手招きをする。


「優ちゃん、どうしたの?」


 慣れた動作で彼女の横に腰をかけてくる。

 コーラ飲みたい。そういうので、凍ったグラスに注いで渡す。


「莉子さんがね、来週の食事会、何着てったらいいんだろ、って」


「あー、お店ね、この前みんなで行った二つ星の店にしたんだ。うまく予約取れたんだぁ」


「なるほど。

 で、何着ればいいの?

 私、ジーンズとシャツしかないよ?」


「ワンピースとかないの?」優が聞くが、


「ない」


「うそでしょ?」絶句する彼女に莉子は畳み掛ける。


「ない」


「連藤さんとのデートのときは?」

 瑞樹が言うが、


「ジーンズ、シャツ、ジャケット、ハットで済む店に行きます」


「それはそれで潔いというか……」


 二人は腕を組んで悩んでみるが、


「したら莉子さん、明日の夜とかどう?

 私、奈々美と買い物行くんだ。

 一緒に行こう。

 したら明日、6時に迎えに来るから。

 店、閉めといてね!」


 カウンターにじゃらりと小銭を積んで、二人は手を振り出て行った。


「ウチの店、なんだと思っとるんだ……」


 そう言いながらも、明日の営業時間の変更報告に、FacebookとTwitterに一言載せておく。


「女の子と買い物なんて、久しぶりだな」


 微笑んだ莉子はつぶやき、今日の仕事をこなすことにした。




 ────翌日。


「莉子さん、これなんていいんじゃない?」


 奈々美も優もノリノリである。


「派手じゃない?」


 おずおずと出てきた莉子は、本当にしおらしい。いや、自信なげだ。


「あそこの店、結構カジュアルだったから、これぐらい色あってもいいって」


 優のセンスで持ってきたワンピースは、華やかで、今までに着たことがない色合いであり、柄である。


 ───顔が負けてる


「莉子さんはどんな色とか好きなの?」


 奈々美がワンピースを探りながら、振り向いた。


「黒、白、グレイとかかなぁ……」


 派手なワンピースを着ている莉子に、


「したら、ネイビーなんて着てみない?」


 いいねー、着てみよ! 優に肩を押され再び着替え室へと押し込まれた───



 ヒールの靴も、パーティバッグも、パンストすら無縁だったため、

 全て、何もかも全て、彼女たちは手配をしてくれた。

 食事ぐらいご馳走したかったが、それすらも拒絶してくる彼女たちは莉子にとって、天使でしかない。

 いや、地上に舞い降りた女神である。

 

 帰りは二人の馴染みのイタリアンに連れて行ってもらい、楽しくおしゃべりをして解散した───






 そんな日からあっという間に一週間は経つものだ。

 昨日もあまり眠れなかった気がする。

 ソワソワしながら店の前で待っていると、連藤と三井が迎えに到着した。

 到着した車は、高級外車というやつだ。

 こんなに間近で見るのは初めてかと思う。

 黒塗りの車は磨き抜かれ、埃ひとつない。

 三井は助手席の連藤のアシストをしに降りてきた。

 その手を借りて連藤も車から降り、莉子の前へと移動してくる。


「巧と瑞樹は、父親連れて先行ってるってよ。

 にしても、今日、決まってるじゃねぇか」


 三井が馬子にも衣装だな。そう言ったようだが、あえてそこは突っ込まないでおこう。


「実はね、優さんと、奈々美さんが選んでくれたんだぁ」


 嬉しそうに、くるりと回った。

 軽やかに弾むワンピースだが、首元から胸元まで、透けた素材の布で覆われ、それだけ見ると薄い生地のブラウスのようだが、胸元からは切り返しとなり、濃い紺色の生地が彼女の体を覆っている。

 その布地には刺繍が施されており、光の加減で光沢感が現れる。

 また彼女の体の華奢な細さが、布のおかげで可憐な雰囲気に彩られる。

 さらにハイウエストの位置でベルトが取られ、足長効果抜群だ。

 スカート丈は膝より少し上ぐらいだろうか。それも足長効果を追加しているようだ。

 高いピンヒールは真っ赤に染まり、ハンドバックもまた赤色だ。

 それが大人っぽさとカジュアルさがでて、黒髪ショートの莉子によく似合っている。 

 連藤が莉子の体にそっと触れた。

 優しくかたどるように、手で彼女を見ていく。


「青系の、ワンピースだな。

 サイズもぴったりだし、

 ……カバンと靴は赤を選んだのか。

 素敵なコーディネートだ。

 よく似合ってる」


 その微笑みを莉子は見つめながら、


「なんで色見えてるの?」

 無表情である。


「色ぐらいは感じられるんだ。

 さぁ、莉子さん、行こうか」



 ───恐ろしい男!



 莉子は無言のまま連藤から差し出された手を掴み、黒塗りの車の座席へと体を滑り込ませた。



長くなったので分けます。

すぐ後編でますのでー。

後編でワインがでてきます!

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