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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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212/218

《第212話》自分へのまかない・キャベツ焼き

 『千切りキャベツ』を業者発注できることをご存知だろうか。

 もちろん少しばかり割高だが、大量の千切りキャベツを作ることが難しい場合、野菜と一緒に発注できる業者もある。

 今回、莉子は白身フライ定食の付け合わせとして、発注をかけた。


 の、だが……


「雨、降るなんてなぁ……」


 発注した日の天気予報は、晴れだったはずだ。

 しかしながら、天気は流動的。

 朝日がのぼったら、雨の日もある。しかも1日雨だという。


「桜は散るし、千キャベ余るし、いいことないわぁ」


 雨の強さもほどほどあるため、客足は想像通りのスカスカ。

 いつもの4人も今日は仕事で来られないときている。

 それでもなるだけ余さないように、たっぷりと盛り付け、提供はしたのだ。

 したのだが、まあまあなボウルに一杯くらいのキャベツが余った。


「……今日は店閉まって、賄い食べて、終わろ……」


 判断は早い方がいい。

 ゆっくりできるときにする方が、いいのである。


 莉子は閉店準備を整え、クローズを出し、店内の電気を落とした。

 現在17時。本当ならまだまだ明るく日もでているこの頃なのに、すっかり暗い。


 莉子は在庫になった食材をトレイに乗せた。

 ボウルのキャベツと、炊いたご飯、白身フライが3切れある。

 3つを見つめながら、2階へ上がる。

 だが、2階に到着しても余りものの処理メニューが思い浮かばない。

 それならと、冷蔵庫をのぞいてみるが、期待したしゃぶしゃぶ肉の冷凍はなかった。

 あれば、簡単に千切りキャベツとしゃぶしゃぶ肉でお鍋にしようと考えたのだ。

 だが、あいにくそれもない。

 目についた材料は、卵と、納豆、キムチに豆腐、油揚げ、ぐらいだ。


「……油揚げと乾燥ワカメあったから、それで味噌汁とぉー……」


 ご飯はある。あとはフライを温め直し、キャベツはしょうがない。

 焼くしかない!


 耐熱用のボウルに入れ直し、そのまま電子レンジへ。

 軽く加熱することで火を通りやすく、そして、カサを減らしてよりキャベツを多く食べる作戦だ。

 軽くラップをかけて2分ぐらいかけておく。

 次に、醤油と味醂は小さじ2ぐらい、片栗粉は大さじ2ぐらいを混ぜておき、別なボウルに卵を4個割り、そこへ調味料と粉チーズを好きな感じに投入。

 キャベツの粗熱が取れたら、卵液の中にキャベツをいれて、あとは焼くだけだ。


 大きめのフライパンに、少し多めの油をいれ、軽い揚げ焼き風で火を入れていく。

 弱火にし、蓋を閉めて、じっくり焼く。

 明日の朝ごはんのおかずにもするので、おいしくなーれと祈りながら火を通していく。

 綺麗な焼き色が付いたらひっくり返し、同じようにもう片方にもいい焼き色がつけば、完成だ。


「よーし。ごはんごはん……」


 一人ご飯だが、かなり豪華なご飯だ。

 白身フライのブロッコリー添え・タルタルソース付き、油揚げの味噌汁、ご飯、冷奴、そして、大きく焼いたキャベツ焼きだ。

 キャベツ焼きは味がそれほどついていないため、自分の好きな調味料で食べるイメージだが、今日はタルタルソースが多めにある。

 これでイケるはずだ。


「いただきます」


 莉子はタブレットで気軽な動画を流しつつ、早めの夕食を始めた。

 さっそくと、キャベツ焼きをひと口。

 焼きためのため、さっくりとした表面と、しゃきっとしたキャベツの歯応え、少し多めに入れたチーズの風味がとてもいい。さらにタルタルソースのコッテリ感がまたよく合う!


 莉子は無言で立ち上がると、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

 ワインは開けられない、ウイスキーは少し似合わない、ならと、予備で置いてあるビールはこういうときに役に立つ。


「……ぷはぁ」


 とてもいい!

 コッテリ感を洗い流してくれるのはもちろん、フライがより美味しく感じる気がする。

 さっくりとした衣とタルタルソース、そこへレモン汁をひとたらししてかぶりつく。

 そのままビールを飲み込めば、もう完璧!


 天気は雨で、ザアザアとうるさい日だが、夜のまかないは、完璧なディナーになった。

 今日はこれが正解の日なのだ。

 莉子はひとり満足げに頷きながら、またキャベツ焼きを頬張った。

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