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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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《第211話》ハイボールと唐揚げ②

 並べられた料理は、それほど手の込んだ料理ではないかもしれない。

 だが、今日は、『それがいい日』なのである。


 巧は、まずはと並べられたウイスキーを眺めて唸る。

 それは瑞樹もだ。


「巧、ウイスキーわかる?」

「わかんね」

「だよねぇ」


 そのやりとりに肩をすくませたのは連藤だ。


「じゃあ、なぜ、莉子さんにハイボールなんて言ったんだ」


 連藤はワイルドターキーを濃いめに炭酸水を注いでいく。

 三井は昨日と同じようにニッカフロンティアをハイボールにするようだ。

 巧と瑞樹は顔を見合わせ、もじもじと顔をそむけつつ、ぼそりと声を揃えた。


「「……たまたま動画みてたら、美味しそうで……」」


 しぼんだ2人に笑いながら、莉子は肩を叩いてグラスを渡す。


「私もウイスキー初めてで、色々探すの楽しかったです。で、ヤスさんのおすすめは、ニッカフロンティア。このNって白で書いてあるウイスキーね」


 それならと、巧と瑞樹はニッカフロンティアでハイボールを作っていく。


 氷に落とすようにウイスキーを注いでいくが、その時から香りがあがってくる。


「なんか、ワインと全然違うね。巧はどう?」

「わかる。なんか、煙たい匂い、しねえ?」

「それはいろんなウイスキー混ぜてるからな。煙い原酒も混ぜてあるからな」


 三井が得意げに付け足した。


「連藤のは?」


 巧が連藤のハイボールを鼻に近づけた。


「なんか、濃い。瑞樹、嗅いでみ?」

「え? なに? わ……、濃い。すごい大人の飲み物の匂いがする……」


 わいわいと作っている横で、莉子はバスカーの青だ。

 炭酸を注ごうとカウンターに置いたとき、サッと取られてしまう。


「お、これ、なんかフルーツっぽい」

「巧、それほんとー? ……あ、あれ、ホントだ。なにこれ。2杯目はこれにしようかな」


 莉子は瑞樹に渡ったグラスを奪い、炭酸を丁寧に注ぐと、


「今日は3種類のウイスキーがありますから、好きなようにたくさん召し上がってください。じゃ、乾杯しましょ」


 巧に目配せすると、巧はえへんと喉を払う。


「じゃ、ハイボールじゃんじゃん飲もうぜ! 乾杯!」

「「「「「かんぱーい」」」」」


 喉を鳴らしながら一気にハイボールを飲み干したのは、巧と瑞樹だ。


「……ぷはっ! ……ほー……これ、マジ飲みやすい」

「わかる。でも、ちょっとスモーキーな感じもあって、ウイスキー飲んでるって感じるのもいいね!」

「お、お前ら、良さがわかってんじゃねぇか」


 すでに2杯目となったウイスキーハイボールだが、度数は気にしなければならない。

 チェイサーとなる水も置いた莉子は、さっそくと生春巻きにパクついた。

 食感もいい、甘酸っぱいソースもいい。

 ハイボールの少しフルーティな雰囲気にも似合う気がする。


 大皿に盛り付けてあるため、それぞれバイキング形式で料理を手元に運んでいくが、唐揚げの大きさに、連藤から声があがった。


「……大きすぎないか?」


 となりにいた三井が連藤の皿に乗せたのだが、重さに驚いたようだ。


「今日はその唐揚げ、一人一枚ノルマです」

「……結構、重いな……」

「莉子、オレたち、そんなに若くねぇぞ」

「それがその唐揚げ、結構ぺろっと食べれちゃうんですよ」


 巧と瑞樹も皿に唐揚げをのせ、なみなみ作ったハイボールを片手に頬張った。


「「んー!!!!」」


 衣のサクサク感はもちろん、肉汁のすごさたるや!

 お肉にしっかりとした味がついているのも、ハイボールに合うが、何より、肉の柔らかさが異常だ。

 もう鶏肉の肉汁を飲んでいる感もあるほど。


「……めっちゃ、おいしいです、莉子さん!」

「これ、すごくいい……大満足っ!」

「それはよかった」


 確かに、少し大ぶりの唐揚げをあげつつ、食べるのもできるが、莉子も飲みたい。

 飲みたいなら、一斉に食べられるものがいい。

 結果、大きな唐揚げで揚げればいいじゃない。となったわけだが、肉に切り込みが少ないのもあり、肉汁のまとまりがいいのである。

 さらにじっくりと2度揚げしていることで、衣がしっかり固まり、尚且つ、肉汁が逃げないのもいい。

 焼肉のタレで味つけているのもあり、ニンニクの風味はもちろん、ちょうどいい甘みが唐揚げを食べ続けさせる勢いになっている。


「連藤さん、切ります?」

「……いや、……ほ。……熱くて、いいな、これも」


 まだまだ熱かったようだ。

 ほほほと息を吐きながら、唐揚げを頬張り、冷えたハイボールで流し込む。

 脂っこい味がハイボールの炭酸が洗い流してくれるのはもちろん、ぐっと強いアルコールが味の濃いものを食べさせてくるのもある。

 気づけばあっと今に半分を食べ切ってしまった。


「……あとから胃にきそうだな、三井」

「お前もか、連藤。莉子は?」

「あたしは全然……はふ。食べれます」


 鶏肉が好きな莉子にとって、鶏肉での胃もたれはご褒美なのだ。



 それぞれの食べ方、飲み方で夜が更けて行く。

 ハイボールという新しい飲み物に出会った今日、早めのお開きになりそうだ。

 ……みんな、ウイスキーの度数を甘くみすぎて、飲みすぎたのが原因だ。


 やっぱり、こういう日もある。

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