《第208話》ハイボールに合うウイスキーって?①
唐揚げとハイボールを楽しみたい!!!!!
と、連絡が来たのは3日前。
巧からだった。
なんでも、
もー、会食とかヤダ!!!!
疲れる!!!!
大人の会話、したくない!!!!
とのことで、仕事放棄でもあるわけですが、固苦しくない状態で、固苦しくないものを食べたいそうだ。
それに付き合うのは、瑞樹と三井、連藤になる。
久しぶりの4人の集合に、莉子もどんなものがいいかと考えるが、なにより、ハイボールとは?
「……てか、ハイボールとは?」
莉子の声ももれる。
このカフェでは、瓶ビール、ワインばかり。泡といえば、スパークリングワインとなるわけで、全く、ウイスキーなんぞ置いていない。
困った。困ったぞ。
手をつけるところがもうわからない。
ウイスキーと打ち込んで検索すれば、もう手に入らないような高価なものがゴロゴロでてくるし、だいたい、よく表記されているピート感とはなんぞや……?
まだフルーティやベリー系の香りまではわかるが、モルト香とは??
「マジでわかんない……」
莉子はランチの準備を進めながら、うんうんと首を捻り続けていた。
捻っていれば、答えがでるときがある。
「あ! ヤスさん!」
思わず声が出る。
それぐらいしっかりぴったりハマった人物だったのだ。
「莉子ちゃんはワインだなんて、おしゃれだねぇ。うちは一人だから、強い酒ばっか。ウイスキーとかさぁ」
何年前かも覚えていないが、そんな会話をしたことがあるのだ。
昔すぎて、もう嗜んでいないかもしれない。
でも昔取った杵柄で、ウイスキーウンチクを炸裂しないだろうか……?
「──え? ウイスキー?」
いつもの時間に本を持ってやってきたヤスさんに、莉子は相談をもちかけた。
それもそのまま、『ハイボールに合うウイスキーはありますか?』と。
「ウイスキーかぁ……ウイスキーは最近、高騰してて、今までのが倍とかなってて、ぜんぜん手が伸びなくなったよねぇ」
独り言のようにつぶやきながら、顎を撫でている。
莉子が差し出したコーヒーの香りをそっとかいで、嬉しそうに顔をほころばして、ひと口。
「最近、流行ってるかなぁって思うのは、ニッカウイスキーかなぁ」
ニッカというと、赤い帽子をかぶった赤いヒゲのおじさんのイラストが思い浮かぶ。
他には? と言われると、無勉強すぎて全くわからない。
さきほど角瓶と調べたらサントリーで、ニッカのあるアサヒビールではなかったのもあり、もう、頭の中が混乱し始める。
「このウイスキー、最近でたんだけどさ。莉子ちゃんのお店にあっても似合うかもね」
ヤスさんはスマホを操作し、画面を見せてくれた。
そこには、透明な瓶に白文字が印字されたウイスキーがある。
それは『おじさんクサイ』というイメージと真逆だ。
おしゃれで、かわいい雰囲気もある。
「こんなウイスキーもあるんですね」
「これ、ニッカフロンティアっていうの。ブレンデットっていって、色んなウイスキーを混ぜて、いい感じにしたのなんだけど、手頃な金額だし、初心者でもウイスキーらしい味を楽しめると思うよ。特にハイボールはオススメだね」
「へー……」
「莉子ちゃんはワイン飲んでるから、わかると思うよ」
「いやいや。でも、探して飲んでみます」
まずは、自分で飲んでみないとな。
とは思うものの、ウイスキーはガバガバ飲むものでもない。
1本買って、全然口に合わないと捨てるのも勿体ない。
こういうとき召集されるのは、おっさん組、そう、三井と連藤である。





