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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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《第199話》新玉ねぎで一品!

 春めいてきたのもあり、日中は少なからず温かい。

 新しいことを始める人も増えるし、新しい場所に身をおく人も多い。


 そんな時期だが、変わらない人たちもいる。

 三井と連藤だ。


「莉子ぉー、なんか1品ぁー」


 今日はロゼワインでスパイシーな料理。

 というリクエストがあり、グリーンカレーやら、トムヤンクンやらと、手作り&市販の素を使って料理を出していたのだが、まだ食い足りないと言い出した。


「まだロゼワインが残っているしな。何ができるだろう?」


 ボトルを掲げ、重さを感じてつぶやいた連藤に、莉子はキッと睨む。


 やめておけといったのに、3本目のロゼを開けたからだ!


 莉子は言いたくなるのをぐっと飲み込み、冷蔵庫の中身を思い出す。


「……あー、新玉があるので、それで1品作りますね」


 莉子はロゼの入ったグラスを持ったまま厨房にはいると、野菜室から新玉ねぎを2つ取りだした。

 玉ねぎの頭とお尻を切り落とし、皮を向いて、十字に切り込みを入れる。

 さらにバターを一欠片乗せて、ラップをふんわりかけてからレンジにかける。

 大きさにもよるが5分~7分で完成するのが、この丸ごと新玉ねぎ焼きだ。

 オーブンで火を入れるのなら20分ぐらいは見たほうがいい。


 莉子はいつも電子レンジを3分ほどかけてから、オリーブオイルと塩をまぶして、アルミホイルで包み、オーブンで焼いていくが、今日はその時間はないと判断。


「ちゃんとできるかなぁ……」


 合図があるまでぬるくなったロゼを飲みながら莉子は待つ。


「私の分も作ればよかったな」


 眺めているうちに、時間が減り、メロディーが流れてくる。

 莉子はさっとラップを外し、菜箸でつついてみた。


「おー……いい感じのしゃきトロ」


 玉ねぎをひっくり返して、バターを両面になじませて、改めて盛り付け直し、乾燥パセリを散らせば、それっぽい1品だ。


 莉子は2人の前に熱々を運び、となりに醤油差しを添える。


「はい、新玉ねぎの丸ごと焼き。醤油はお好みでどーぞ」


 三井はさっそくと箸を刺し、ぺろりと1枚、むいていく。


「おー、とろとろとしゃきっとしたのと、いい感じ」


 連藤の分は莉子が適宜に切り、皿にとって差し出すと、1枚、箸でつまみあげた。

 2人は醤油をかけずに、そのまま玉ねぎを口に含んでいく。


「「……甘い」」


 新玉ねぎの魅力だ。

 甘みが強い!

 そして、水分がたっぷり含んでいて、ジューシーなのである。


「うまいぞ、これ」

「莉子さん、これなら1玉、簡単に食べれるな」


 有塩バターを使ったのがよかったのか、醤油はいらなそうだ。

 ほんのりとしたバターの塩味と玉ねぎの甘みでロゼがするすると進んでいく。


 莉子はそんな2人を眺めて、ナッツを口に放り込みつつ、店内の時計は夜の11時を回っている。

 今日はこれでお開きになりそうだ。


 〆の甘みに、新玉ねぎもいいな。

 莉子は頭の中に、メモをした。

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