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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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《第197話》じゃがいも食べ比べ!

 本日も段ボールが届いたわけで。

 見なくてもわかる。祖母からだ。


 箱の中にはナイロン袋に分けて、3種類のじゃがいもが入っている。

 小さな紙には、『メークイン』『キタアカリ』『インカのめざめ』と書いてある。


 どれも白っぽく、唯一メークインが細長く大きいぐらい。

 キタアカリは少し黄色味がかって丸く、インカのめざめも黄色っぽいが、インカは思っていたよりも粒が大きく見える。


「……お隣の農家さんからいただきました。みんなで食べてね。ばあばよりって、みんなで食べる、しかないよね、この量は……」


 お店で出すには心もとなく、1人で食べるのは多すぎるという中途半端な量だ。

 莉子はさっそくと集合をかける。



『じゃがいもが届きました。食べ比べしましょう。20時集合』



 莉子としては何で食べ比べをしようか考える時間となる。

 ポテトサラダ、コロッケ、にっころがし……


「へー、芋の甘い匂いするー」


 言いながら入ってきたのは巧だ。

 上着を脱ぎ、カウンターに腰をおろすと、


「ほんとだー。いい匂いだね。ね、巧はさ、じゃがいもの種類わかる?」


 瑞樹が巧のとなりに腰を下ろして問いかけるが、


「芋なんて、芋だろ」


 答えたのは三井だ。


「芋の種類はかなりある。スーパーに行っていないのが丸わかりだな」


 最後に連藤が腰をおろし、4人、到着だ。


「みなさん、お疲れ様でした。さっそくですけど、今日は素材の味が楽しめる、素揚げ、で、食べ比べを」

「それ、フライドポテトっていうやつだろ」

「三井さん、さすが。そうとも言います」


 莉子がドイツのリースリングワインを取り出した。


「スッキリの白は、じゃがいもと合うと思いますので……」


 冷やしておいたリースリングはキリッとした酸味がある。

 じゃがいもに粒マスタードをつけて食べれば、間違いなく合う!

 という、莉子の経験則での見切り発車だ。

 だが、ちゃんとウィンナーやベーコンのソテーはもちろん、ミモザサラダも準備済みだ。


 そうであっても今回のメインは『じゃがいも』。

 しっかり味を堪能してもらいたいところではある。


「3種類、揚げてあるので、どーぞ」


 莉子は3種盛りにしたフライドポテトの皿を4人の前にさしだした。

 つけるものは、塩、マスタード、粒マスタード、ケチャップ、マヨネーズと、多彩に用意してある。


「っぱ、最初は塩っしょ」


 そういいながら食べ始めた巧だが、表情が固まる。


「……なにこれ。じゃがいもってこんなに違うの……」


 それに食いついたのは瑞樹だ。


「じゃあ、おれもー」


 瑞樹が食べ始めたのはメークインだ。


「……ねっとりしてる……? これはあんまし好きじゃないかも」

「へぇ。どーちがうよ」


 三井がつられて手を伸ばしたのはキタアカリだ。


「ちょっと甘みとホクホク感があるな……これはアリかも」


 連藤は話を聞きながらつまみあげたのはインカのめざめになる。


「……これは甘みが強いな。……でんぷんのホクホクした感じもある……ナッツの風味も感じる……インカかな」

「あなたはジャガイモソムリエですか」


 莉子がツッコミを入れるが、それぐらい的確な答えに驚き半分、白けが半分だ。


「ジャガイモは、こだわりたいからな」


 連藤の言葉もわかる。

 莉子も同じ気持ちだ。


 なぜなら、じゃがいものによって煮崩れの仕方が半端ない!!!


 よく、カレーにしよう! と煮たけれど、出来上がったらじゃがいもがない、という経験はないだろうか?

 莉子はある。


 何度となく、ある!


 初めの頃、値段でじゃがいもを購入していたのだ。

 だが、形が残るものと、そうじゃないものがあることがすぐに判明。

 何が違うのか。


 ──品種だ。


 それからだ。品種によって料理を変えたりするようになったのは……

 なにごとも経験で学ぶ、とはいえ、これほど料理に影響するものも少ないのでは? と莉子は思う。


 ちなみに、煮物に強いのはメークイン!

 男爵やキタアカリは煮崩れしやすいので注意が必要だ。

 ポテトサラダやコロッケなど、潰して使う料理が向いてる。

 インカのめざめは味が濃いので、蒸したり、それこそ油との相性がいいのでフライドポテトはとてもよく合う。


「みなさんは、どれが好きです?」


 莉子は揚げたてをサクサク食べながら聞いてみる。


「おれは、このねっとりした感じ。食べてる感あるじゃん。なめらかにのどにつまるかんじが、芋! って感じで」


 巧はメークインがお好みのようだ。


「こっちのほくほくしたの! あっさりがいいよね!」


 瑞樹が選んだのはキタアカリになる。


「オレはこのホクアマだわ。これなら、赤ワインにも合うし」

「俺もこっちだな。やっぱりインカは甘さと香りが違う」


 年長組が選んだのはインカのめざめになる。


 それぞれよくて、それぞれの好みが出るのは間違いない。


「じゃあ、莉子さんは?」


 巧の質問に、莉子は首をひねる。


「巧くんと同じ、喉に詰まる感もいいんですよね。だからここにないんですけど、男爵系も捨てがたく。でもフライドポテトだと、インカになるかなぁ。インカは芋だけで旨味があるので」


 それに食いついたのは連藤だ。


「男爵か……男爵もホクホク感はかなり高いからな……」

「そんなにホクホクなの? マジ?」


 興奮ぎみの巧に笑いながら、じゃがいもひとつで会話が盛り上がるのも珍しいと、そっと眺める莉子だった。

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