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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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193/218

《第193話》川は皮から 海は身から

 頂き物のほっけを、莉子は焼いていた。

 そのため、今日合わせるお酒は日本酒だ。

 それをいっしょに叩くのは、やはり、連藤である。


 もう店は閉まっており、ドアも閉められ、クローズも出てる。

 今日はゆっくりと2人で、晩酌を楽しめそうだ。


「たまにはいいな、日本酒も」


 連藤は嬉しそうに、クリームチーズの醤油漬けをつまみに、お猪口を運んでいる。


「今、ホッケ焼けますらね……と」


 グリルを眺めながら、莉子は鼻歌のようにつぶやいた。


「……川は皮から〜……海は身から〜……と」


 カウンターの下のオーブンで調理していたため、ひょっこり頭をだし、自分のお猪口に手を伸ばしたとき、連藤が驚いた顔をしている。


「莉子さん、今の歌はなんだ?」

「歌?」

「かわは、かわからーというやつ」

「あー。これは、母がよく言ってて」


 焼き上がったホッケを皿にのせ、大根おろしを別のお碗にたっぷりと用意する。


「魚を焼くときの、面ですね。理由はしりませんが、川魚は、皮から。海魚は身から焼くのがいいそうです。……はい、召し上がれ」


 差し出されたホッケの湯気に、連藤は嬉しそうに微笑む。


「いい脂の匂いがする」

「ばあちゃんが送ってくれたホッケだから、絶対おいしいよ」


 莉子の嬉しそうな声に、連藤は大きくホッケを頬張った。

 大根おろしの風味と、ホッケの上質な脂がよく合う。

 適度に莉子がかけただろう醤油が、いい甘味を引き出してくる。


 そこにすかさず、白米が差し出される。


「やっぱ魚のときは、ご飯でしょ」


 莉子はすでに頬張ってるようで、もごもごしながら、美味しい美味しいと繰り返している。


「ばあちゃん、サイコー……!」


 連藤も莉子の真似をして、ホッケをご飯に上手にのせ、ひと口。


「……うまい」


 さらに日本酒を流すと、また、旨味が増す気がする。


「……はぁ」

「どうしたんですか、ため息なんて」


 莉子の慌て方が面白く、つい、演技をそのまましておきたいが、美味しいものを食べているのに、嬉しい顔ができないのはつまらない。

 なので、連藤は素直に白状した。


「あまりにおいしくて、日本人に生まれてよかった、と思ったんだ」

「なるほど!」


 莉子はあいたお猪口に酒を注ぎつつ、連藤の手を握る。


「たくさん、生まれてよかった、つくっていきましょ! 今日はホッケ! サイコー!」


 莉子の手を握り返すと、いつもより、手が熱いかもしれない。

 ふふふと、楽しげに笑う声から、莉子はすでに酔っ払っているようだ。


 ──かわいい!!!!


 連藤は、莉子さんサイコー! と、心のなかで叫びつつ、冷めないうちにホッケに箸をのばすのだった。

いつも、ありがとうございますっ

ぜひ、お魚と日本酒、最強なので、合わせてみてください!

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