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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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192/218

《第192話》お好み焼きって誰が考えたんでしょうね

 どうしようもなく食べたくなるものがあると思う。

 莉子にとってそれは、『お好み焼き』だった。

 とはいえ、店を休んで、食べにいくこともできず、悶々としていたところで、ふと舞い込んだ夜更けの酒盛りに、莉子はお好み焼きを出すことに決めた。


「なんで、お好み焼きなんだよ!」


 ぶーたれるのは、三井だ。


「カフェが夜遅くに、わざわざ店をあけてくれることに、まず感謝してほしいですね!」


 言い返しつつ、手は止まらない。

 キャベツを刻み、別なボールには、粉を用意していく。

 が、取り出したのは、たこ焼き粉だ。


「お好み焼きのくせに、なんでたこ焼き粉なんだよ!」

「いちいちツッコミがうるさいですね。賞味期限ギリギリだったのと、これ、水を混ぜればいいっていう、究極のたこ焼き粉らしくて。なら、お好み焼きでも美味いかなって。塩とマヨネーズがオススメなんですって。赤ワインに合いますから焼いていきますね」


 連藤は、わーわー言う三井を無視して、用意してくれた赤ワインと、甘辛く焼いた照り焼きハンバーグでお好み焼きを待つ。


「おい、連藤、なんか言い返さねーのかよ」

「俺は、作ってくれるものに、文句は言わないようにしている」

「神かよ……」


 だがしかし、本当に水だけでおいしいのか疑問は残る。

 水に溶いてみると、ほんのりと良い香り。

 出汁のかおりや、甘い香りがする。


 ───いける!


 そう踏んだ莉子は、キャベツにその液体を投入、さらに揚げ玉をいれ、フライパンで焼いていく。

 豚バラはひっくり返してから焼くように切りそろえておく。


「莉子さん、珍しいな、お好み焼きなんて」


 追加のチーズを出したとき、連藤が言った。

 莉子は頷きながら、首をかしげる。


「私もわかんないんですけど、なんか、粉もん、食べたくなるタイミングってありません?」

「あー、俺わかるかも」


 三井はグラスを大きく傾け、ワインを飲み干す。


「肉みたいに、米食いてー! ってとき、あるわ、俺も」


 つがれたワインに口をつけながら、うんうんと頷く。

 だが連藤は疑問の顔だ。


「俺は、あまりないかもしれない。確かに食べたいものはあるが、猛烈ってことはないな」

「お前はバランスの良い食事をしてんだよ」


 吐き捨てるように言った三井に、連藤は笑う。


「それなら、お前だって、星川にダイエットメニュー、食べさせてもらってるだろ」

「そりゃそうだけどよ。なんで、あんなに野菜ばっかりだすかな、マジ」

「それだけ三井さんのこと、大事だからですよ」


 焼きあがったお好み焼きをケーキのように切り分け、盛る。

 それぞれに、マヨネーズ、塩は3種類用意した。

 莉子もお好み焼きがとりわけられ、なぜか、茶碗がある。


「莉子、お前、まさか……」


 驚く三井をおいて、連藤が目を開いた。


「莉子さん、ふんわり感は少しすくなめだが、しっかりと味のあるお好み焼きだ。確かに塩が合う……うまいな」

「よかったです。私もこんなだとは思っていなくって」


 返事をしつつ、莉子はお好み焼きを頬張り、そして、ご飯をひと口。


「やっぱ、莉子、お好み焼きで、飯くってんのか!?」

「三井さんもいります?」

「いらねーよ! 気色悪!」

「塩辛いものなら、ご飯は拒みませんよ」


 言いながらもりもり食べる莉子に戸惑う三井は、連藤を巻き込む。


「おい、連藤、おかしいって言ってやれよ」

「関西では定食にもなってるそうじゃないか。いいんじゃないか。食べ方は色々だ」


 莉子と連藤はにこにこと楽しむ横で、三井はちびちびとワインを飲みつつ、お好み焼きを頬張る。

 確かに、美味い。


 美味いが、お米と一緒は、ないだろう……。


 そう思ってやまない三井だった。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

気になる料理、食材などありましたら、コメントお待ちしております!

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