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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第4章 café「R」〜料理覚書〜

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《第167話》ターキーを焼きます!

 今日は14時に閉店。

 なので、ランチタイムのみの開店となる。

 事前告知していたおかげか、ランチのお客は少なめだ。


 とはいえ、巧と瑞樹は来店していた。


「ねーねー、莉子さん、今日のメニューなーに?」

「オレも知りたい!」

「うるさいよ、瑞樹くんに巧くん。メイン、知ってるんだから、それでいいじゃない」


 カウンターにへばりついて聞いてくる2人に、莉子は食後のドリンクをとどけ、ため息をつく。

 これからの仕事を思うと、莉子は少し憂鬱だ。

 やったことをないことをする、というのは、少し億劫なときもある。


「ま、楽しみにしてて、ふたりとも」

「いやさ、連藤がめっちゃ張り切ってて」

「そうそう、もうそろそろ上がってくるんじゃないかなぁ」

「……え? 5時ぐらいにくるって言ってたけど」


 そう話しているうちにドアベルが鳴った。

 噂の連藤だ。


「莉子さん、ちょっと早いが来てしまった」

「……早く来ても、焼きあがるのはディナータイムですよ?」

「確かにそうなんだが……落ち着かなかったんだ」


 少し恥ずかしそうな声に、莉子は小さく笑ってしまう。


「じゃ、コーヒーいれますから、時間までゆっくりしてください」


 莉子の案内でカウンターに腰をおろした連藤だが、すぐに巧と瑞樹に質問攻めだ。

 だが連藤との話は、ターキーの焼き方ばかりで、他のメニューに関しては相談もなにも話していない。

 連藤は首を横に振り、


「時間になれば、わかる」


 いれたてのコーヒーをゆっくりとすする。

 莉子はその隙にと、昼営業の閉店準備を整えると、クローズの看板を出しに動いていた。


「思えばさ、いつもここ貸切にしてるけど、結構な頻度で貸切にしてるよね」


 瑞樹の声に、巧は笑う。


「だって、みんなの食事だからな」


 巧の言う「みんな」は「家族」の意味もある。

 莉子はその意味を読み取り、改めて今日のディナーを準備しようと、心に決めた。



 15時から厨房に入った莉子と連藤だが、改めて今日の人数の確認をする。


「今日は、10人ぐらいでしょうか」

「巧が変に人を呼ばなければ、それで合ってるはずだ」

「……よし。じゃ、まずはオードブルからさばいていきますか」


 さすがにコース料理だと莉子が楽しめないということで、基本、大皿料理で対応としたのだが、たった10人、されど10人、意外と手がかかる。

 テリーヌの盛り付けから、カプレーゼ、海鮮マリネも準備。

 これらは大型冷蔵庫に保管しておけば問題ない。

 あとは、ターキーを焼きながら、スープなどにとりかかればいいのだが、ターキーが一苦労だ。

 漬け込んだ袋から取り出し、手足を縛り上げていく。

 内臓には、ある程度火を通したジャガイモやマッシュルーム、玉ねぎをハーブで炒めたものを詰めておく。


「今日のジャガイモはインカにしたので、ほくほくになったらいいなぁ」


 莉子は軍手の上にゴム手を履いてつめているが、連藤は「うまくいけばな」小さく笑う。


「9割火をいれてあるんで、芋が生焼けになることはないから、大丈夫でしょう。とりあえず、皮をパリっと焼きたいですね」

「油をかけながらやるしかないな」

「ですね」


 改めてハーブとオリーブオイル、ニンニクをこすりつけたターキーを莉子はオーブンへと突っ込んでみる。

 2羽並べてみたが、ギリギリだ。


「……やばかった。1羽ずつ焼くことになるとこだった……ターキーは大は小をかねないもんですね……」


 一度、ターキーを外に出し、莉子はオーブンを温めに入る。

 現在、17時30分をまわったところだが、莉子は火を入れることに決めた。


「もう焼くのか?」


 驚く連藤に、莉子は返事をする。


「小さな丸鶏でも1時間は焼きますからね。ターキーはもう少し時間を見ておきたいです」

「そうだな。じっくり焼く方がいいだろうしな」


 ターキーは20分おきぐらいに油をかけるため、タイマーをセット。

 これで合っているかはわからないが、やってみるしかない。

 その間に、ビーフシチューを仕上げて、ライスコロッケと、グラタンも用意するが、口休めがあったほうがいいだろうか……


「こんなんでいいかなぁ。連藤さん、もう少し、何かあった方がいいです?」

「スナックは?」

「ナッツ類とか、私が好きなポテトチップスと、ポップコーンもあります」

「それなら、問題ないんじゃないか? それよりも、ターキーを見てくれ」

「……どれだけターキーなんですか」


 45分ほど焼いているが、ようやく表面に色がついてきたような雰囲気だ。

 大きいだけある。

 莉子は、少し温度を下げて、時間を延ばすことに決めると、油をかけなおし、扉を閉めた。


「想像よりも時間かかりそう」

「まあ、ピンが上にあがれば完成だから、のんびりしようか。あ、莉子さん、よかったら2人で先に乾杯するとか、どうだろうか」

「連藤さんがそんなこというとは珍しい。なら、自然派ワインの微発泡にしましょ。一応、仕込み、終わってないですし」

「莉子さんにしては珍しいな」


 そう言いながら、グラスには淡いレモン色のワインが注がれる。

 自然派ワインのため、色が独特だ。

 これほど黄色いのだが、白ワインになるそうだ。


「じゃ、前祝い? なのかな。今日のパーティ、楽しみましょうね、連藤さん」

「ああ。今年もみんなで祝えて、莉子さんと一緒に過ごせて、俺は幸せだ。ありがとう」

「ちょっと、なんか、それ、まだ早いですって」

「言いたいんだ。ありがとう、莉子さん」


 2人でグラスを掲げ、ひと口飲み込む。

 爽やかな酸味と香りが鼻を抜けていく。

 なんとなく、2人の指が絡まり、そっと身を寄せたとき、ドアベルが鳴る。


「おい、莉子、ビール!」


 莉子の舌打ちが響く。

 連藤はグラスのワインを飲み干すと、


「では、莉子さん、ここは頼む。俺は三井とオモテの準備をしよう」


 連藤は額にキスをして、厨房を出て行った。

 莉子はおでこを撫でながら、


「……がんばろ」


 ターキーの焼きの仕上げにとりかかる。

一年ぶりの更新がクリスマスメニューという

本当に申し訳ありません……!

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[一言] 続きが読めるなんて嬉しすぎます。
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