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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第162話》莉子の定休日 〜夕食編

「莉子さん、別に映画を見てたなら、そう言ってくれたらいいじゃないか」

「そうはいいましても……」


 ふたりキッチンに並んで始めたことは夕食作りだ。

 一度、コーヒーブレイクを挟んだが、すぐに夕食の準備となった。

 今日の夕食は早めに飲み始めて、ダラダラしよう! ということになったのだが、鍋だと〆はなんだと動かなくてはならない。

 そのため本日は、オーブンに入れて焼くだけ料理に決まった。


「鶏肉の下味は、適当な香草とオイルと塩……あ、ニンニクは?」

「はい。まな板におきました。皮付きです」

「ああ、助かる」


 連藤は指先でニンニクを確認すると、包丁の平らな部分で押しつぶす。

 こうすればニンニクの殻も綺麗にはずれ、そのままスライスすれば問題ない。


「トマトがあったので、ドライバジルとオリーブオイル、塩と胡椒で和えてみました。他に何か足します?」

「いや、それで……冷凍のエビぐらい、足しておくか?」

「そうですね。入れときますか」


 お湯でエビを溶かしていると、連藤は鉄鍋を取り出す。

 熱した鍋に、マリネした鶏肉を皮から入れ、一度焼目をつける。両面に焼き目がついたところで、鍋ごとオーブンへ。冷凍のフライドポテトは、ホーローのバッドに並べ、それもオーブンで温めることにした。


「そだ。連藤さん、今日のワイン、なんにします?」

「おすすめは?」

「軽い料理なので、マスカットベリーAとかどうです?」

「日本のワインか」

「ええ。ちょうどいい重みでいいかと」

「じゃ、それにしようか」


 日本ワインは高価なものが多いが、マスカットベリーAは割と安価なワインだ。

 しかもスーパーにある!

 手頃な場所で、手頃な金額で買えるワインなので、味も好きだが、庶民派なところも莉子は気に入っている。


「トマトサラダとコンテチーズでワイン飲んでましょうか」

「そうしようか」


 食卓テーブルにふたりならんで座る。

 夕飯となれば対面で座ることが多いが、今日は晩酌ご飯。


 今日は綺麗な横顔を眺められる……!


 莉子は、連藤の横顔が好きだ。

 もちろん、正面も申し分ないのだが、どうも恥ずかしくてずっと見ていられない。


 だが横顔はガン見できる……!!!!


 サラダをとりわけ、チーズを並べる。

 グラスにはマスカットベリーAが注がれる。

 色味は明るいガーネット色。香りは華やか。渋みは少ないが、酸味もおだやかで、後味がいい。

 甘みも控えめのため、食事に合いやすい。

 時刻は16時。

 いつもよりずっと早い時間だ。


「では、いただこうか」

「はい。今日もお疲れさまでした」


 莉子がかちりとグラスを当てると、連藤はにこやかにグラスを持ちあげ、鼻先に近づける。


「おお……想像していたより、ずっといい香りだ」

「たいしたことないって思いがちだけど、そんなことないんですよ、このワイン」

「みたいだな」


 チーズを食みながらワインを飲みこんだ連藤は、莉子の方に顔を向ける。


「俺がこの時間に来るとしたら、今日はどんな予定だったんだ?」

「今日は午前中ベッドでゴロゴロして、それから掃除とかして、お昼寝をして、連藤さんを待つ予定でした」

「結構予定があったんだな」

「私、お昼寝好きなので」

「それは知ってるが」


 トマトを頬張り、ワインを飲み込んでから、莉子がキッチンを漁り出す。


「やっぱ、パンあったぁ。連藤さん、パンも食べよー」


 オリーブオイルに浸しながら食べるだけで、パンも立派なおつまみになる。

 莉子は上機嫌で食べていると、連藤が笑う。


「いつも美味しそうに食べるな、莉子さんは」

「よく、()()()()()

「咀嚼の音が楽しそうだからな」

「それはいつだって連藤さんと食べる食事はおいしいから」

「たしかに」


 話しているうちにオーブンが音を鳴らす。


「鶏が焼けましたね。今、盛り付けてきます」


 一度鶏肉を出し、鉄鍋にあふれた余分な脂をふきとると、一口大に切った肉を戻す。

 そしてしっかり火がとおったフライドポテトを添えればできあがりだ。


「ケチャップと塩も用意しました」

「ありがとう」


 取り皿にチキングリルをのせ、改めて塩をふる。

 連藤は満足そうに頷いた。


「すごく柔らかくて、うまいな」

「上手に焼けましたね! でも鉄鍋で焼くと、本当にふんわり焼ける気がします」

「それは俺も思うな。あ、粒マスタードはあるだろうか」

「ありますよ。ちょっと待っててくださいね」


 新たにワインを注ぎ、他愛のない話が繰り返される。


「今日の、その、ゾンビ映画はどんな映画だったんだ?」

「あー……まだラストまで見てないんですよ」

「そうか」

「このゾンビ映画って、女子高生が主人公で、二重の秘密があるんです」

「ほう。秘密」

「そうなの。主人公の秘密と、登場人物の秘密があるの」

「よく知ってるな」

「アニメは見てたんだ。やっぱりさ、一度は想像しない? ゾンビがあふれる世界になったら、どう生活しようかなぁって」

「ないな」

「なんで?」

「まず、ゾンビはいない」

「そこから?!」

「そこから」

「うわー連藤さん、夢がないなぁ」

「そこで夢を語られてもだな」

「プレッパーとか調べたら、めっちゃ面白いじゃないですか」

「……ぜんぜん思わない」

「えー!!!」


 いつの間にかボトルが空いてしまう。

 追加のワインはどうしようかと話しているが、まだ時刻は19時だ。

 夜はまだまだこれからだ。

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