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café「R」〜料理とワインと、ちょっぴり恋愛!?〜  作者: 木村色吹 @yolu
第3章 café「R」〜カフェから巡る四季 2巡目〜

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《第157話》バーベキューの経緯

 ことの発端は1ヶ月前になる───


「──わたくし、巧さまを婿として迎えたいの」


 そういってやってきたのは、財閥令嬢の南彩華という女性だ。

 年齢は29歳。

 巧より年上となる。


 巧としては、寝耳に激流ぐらいの話だ。

 奈々美との結納など準備を整えているところで、婿()()()()()など、意味不明すぎる。

 だいたい、いきなり会社に訪れたかと思うと、父親の名前で無理やりアポをねじ込んできた、ちょっと常識が外れた令嬢だ。


 巧に会うなり言い放ったことで、すぐに自分の父を召喚!

 さらに彩華の父に連絡!

 で、済むかと思っていたら……


 彩華の母、参戦!!!!


「……いえね、巧さん、ちょっと調べたんですけど、巧さんがお迎えになる予定の方、片親じゃあありませんか。それほど格のある家柄ではないようですし。釣り合わないんじゃありません?」


 いい加減、怒鳴って反論したいが、調べられているということから迂闊なこともいえず、ただ反論しても納得はしないタイプだ。

 どう執着を切ろうかと思考をめぐらすが、口喧嘩をしても勝ち目はない。

 口は達者、独自にカードを持っているのもある。

 ただ、状況を明白にするのは大切なこと。

 巧は大きく深呼吸をし、状況を確認していく。


「……お聞きしますが、私が彩華さんとお付き合いしなければならない理由は……?」


 彩華は自信満々に言い放つ。


「わたくしのほうが巧さまをよく知っておりますし、お慕いしております」


「……なるほど。私と奈々美との付き合いよりも、よりご存知だということですね」


「ええ。そのとおりですわ。すべて調べ尽くしております」


 ストーカーで訴えれるかと思いながらも、薄く笑ってうなずきかえすと、母が口を開いた。


「巧さん、うちの娘はどこに出しても恥ずかしくない娘です。外国語も堪能ですし、もちろん、見た目も素晴らしい子です。巧さんが婿にきてくれれば、間違いなく巧さんの会社も大きく発展されるでしょう」


「で、巧さま、わたくしの誕生日があと少しで来ますの。それまでに入籍だけでも済ませたいので、こちらにお名前を書いていただけるかしら」


 秘書が持ってきたお茶に首を振り、もてなす意味がないと表情で伝える。


「たしかにそちらと提携することは、弊社にとって大きな利益となり得るかと思いますが、そういった戦略的結婚を私は望んでおりません。第一に、私はあなたのことを微塵も存じていない。私にとっての生涯の相手は奈々美以外にいないんです。ご理解いただけますか? この話は受けられませんので、どうかお引き取りください」


 巧なりにオブラートに包んで話したつもりだ。

 本当なら、


『ふざけんじゃねぇーよ! 俺は奈々美だけなの! お前なんか知らねーよ、ブース!!!!!』


 と叫びたかった。

 これでも我慢したのだ。

 自分も大人になったと褒めたいと思う。


 彩華のほうは、下唇を噛んで握りこぶしをつくっている。

 どっしりと座ったまま動こうとしない根性は認めるが、いい加減帰らないかと巧が立ち上がったとき、部屋の扉が開いた。


「失礼します……っ」


 慌てて飛び込んできたのは、三井と連藤だ。

 巧の父が来れないとなり、緊急招集がかけられたのだ。

 彼らであればうまくとりなせると踏んでのことだ。


「南さま、あまりに急なお越しで、私どもの不手際、大変申し訳ありません。ですが、巧はすでに相手がいる身ですので……」


 連藤が彩華の横に膝をつき、手を取り立たせる。

 その彩華の顔がパアと明るくなった。


「お母様、わたくし、一目惚れいたしました。わたくし、この方がいいです」


 そう言って連藤の手をしっかりと握る。

 手を引くが、抜けてくれない。


「……ちょ…申し訳ございません……なんのことでしょう……」


「あらあなた目が不自由なの? それならわたくしのメイドたちがすべてお世話をしてくれるわ。頭も切れそうだし。婿に来てください。では、準備をしに、一度戻ります。御機嫌よう」


 浮き足立って帰っていったが、標的がすり替わっただけで、難は去っていない。


「どうするよ、おい……」


 三井の声が部屋に響く。

 言葉にならないまま、巧と連藤からため息が落とされた。

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