《第156話》今日は貸切! 2
熱々の唐揚げを頬張り、莉子はおいしい顔を作る。
「自分で作ってなんだけど、今日のも衣さっくさくで美味しい!」
連藤はポン酢と大根おろしで唐揚げを食べるが、美味しそうに頬張る莉子の音を聞き、小さく首を振った。
「あれだけ揚げ物をしていて、食べられるってよっぽどだな……」
「連藤さん、そんな顔しないでくださいよ。実は私、揚げ物が好きなんです」
意外そうな顔をしたのは巧と瑞樹だ。
「莉子さんって野菜しか食べないイメージ」
巧の言葉に連藤が大きく首を振った。
「違うぞ。莉子さんは肉食だ。野菜より、肉を食べるぞ。それほど健康に気を使わないから、いつも注意しなきゃいけない」
4個目の唐揚げに手を伸ばした莉子だが、パチリと連藤に叩かれる。
「今日ぐらい、いいじゃないですか」
「もう少しサラダを食べてから」
「……やだ」
「やだじゃない」
「口のなかいっぱい唐揚げにしたい……」
「野菜食べてから!」
しぶしぶと野菜を食みだした莉子だが、不服そうだ。
新しいビールを開けながら、三井は笑う。
「連藤は、母ちゃんポジだよな」
それに巧と瑞樹は納得だ。
「うん。こうるさいもんね」
「わかるわー。ほんと、そうだよな」
連藤はふたりを睨むが何処吹く風だ。
「そうだ、莉子、明後日の祝日、そこの河原でバーベキューやんだわ。お前も来るだろ?」
さも当たり前のように三井はいうが、明後日とは急な話だ。
「いきなりですね、それ」
不審がる莉子に、三井は「やっぱダメか」とつぶやいた。
連藤が莉子に向かい合うと、
「莉子さん、大変申し訳ないんだが、そのバーベキューにはどうしても出て欲しい」
連藤が頭を小さく下げる。
「……どういうことですか……?」
4人はお互いに肩をすくませながら、ため息をつく。
「実は、連藤、とある令嬢に見初められてさ……」
三井はビールをあおぎ。
連藤はじっと膝を。
巧は明後日の方を。
瑞樹は笑顔で唐揚げを頬張っている。
どうも、連藤と巧に問題がありそうだ───
莉子はそう読み取ると、改めて唐揚げを頬張り直した。





